打ち上げ45周年の惑星探査機「ボイジャー1号」地球へ届いたデータの一部に問題が見つかる
sorae.jp / 2022年5月20日 21時25分
1977年9月5日に打ち上げられた「ボイジャー1号(Voyager 1)」は、木星と土星のフライバイ探査を行ったアメリカ航空宇宙局(NASA)の惑星探査機です。太陽系の外へと向かって飛行を続けたボイジャー1号は、太陽風の影響が及ぶ領域である「太陽圏(ヘリオスフィア)」を今から10年前の2012年8月に離脱し、星間空間に到達したことが確認されています。
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打ち上げから45年近くが経った2022年5月現在もボイジャー1号は稼働し続けており、地球から約233億km(約155天文単位)離れた星間空間を時速約6万1000km(秒速約16.9km、太陽に対する相対速度)で飛行しつつ、貴重なデータを地球へ送り続けています。そんなボイジャー1号から送られてきたデータの一部に問題が見つかったことを、NASAのジェット推進研究所(JPL)が5月18日付で明らかにしています。
JPLによると、ボイジャー1号の状態を示すデータのうち、「AACS」(Attitude Articulation and Control Subsystem)と呼ばれるサブシステムのデータに問題が生じているようです。AACSはボイジャー1号の姿勢を制御するためのシステムで、遠く離れた地球と通信するのに欠かせない高利得(ハイゲイン)アンテナを地球の方向へ正確に合わせる役割を担っています。
このAACSの読み取り値が無効なデータになっていて、時にはランダムに生成されたように見える場合もあるといいます。ボイジャー1号の信号は弱まっておらず、システムもセーフモードに切り替えられてはいないため、状況は高利得アンテナが正しい向きに合わせられていることを示唆するといいます。つまりAACSは機能し続けているはずなのですが、AACSのデータには異常が生じていて、実際に探査機上で起きていることが反映されなくなっているようなのです。
無効なデータがAACSから直接出力されているのか、それともデータの生成と送信に関連する別のシステムが関わっているのかを見定めるために、ボイジャーの運用チームは引き続き信号を注意深く監視し、問題を調査することにしています。現在のボイジャー1号までは光の速さでも片道20時間33分かかることから、原因を探るだけでも長い時間を要する作業となります。
(And remember: This is interstellar exploration. Solving mysteries takes time when messages to my team take nearly 20 hours to arrive!)
— NASA Voyager (@NASAVoyager) May 19, 2022【▲ データの問題に言及したボイジャーのTwitter公式アカウントによるツイート】
データ異常の原因が突き止められた場合、ソフトウェアをアップデートするか、あるいはハードウェアをバックアップに切り替えることで問題を解決できる可能性があるといいます。ボイジャー1号と同型機「ボイジャー2号」のプロジェクトマネージャーを務めるJPLのSuzanne Doddさんは、ボイジャーが飛行している星間空間は今まで探査機が到達したことのない高放射線環境であり、技術的に大きな課題があるものの、もしも解決策が存在するのであればチームは必ずそれを見つけるだろうとコメントしています。
しかしいずれにしても、ボイジャーのミッションはそう遠くないうちに終わりの時を迎えることになります。ボイジャー1号と2号は電源として搭載されている放射性同位体熱電気転換器(RTG、放射性物質が崩壊するときの熱から電気を得るための装置)の出力が年々低下し続けていて、2025年頃には探査活動を終えることになると予想されています。なお、今回の問題がミッションの残り時間に対してどのような影響を及ぼし得るのかは、問題の本質を理解するまでは予測できないといいます。
ボイジャーの運用チームは、これまでにも幾つかのサブシステムやヒーターを停止することで、科学機器が必要とする電力を確保してきました。2025年以降も観測を続けられるように、チームはボイジャー1号・2号の運用を維持するための取り組みを今後も続けていくとのことです。
Source
Image Credit: NASA/JPL-Caltech NASA/JPL - Engineers Investigating NASA’s Voyager 1 Telemetry Data文/松村武宏
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