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日欧の水星探査ミッション「ベピ・コロンボ」探査機が第2回水星スイングバイを実施

sorae.jp / 2022年6月25日 18時35分

【▲ 日欧の水星探査ミッション「ベピ・コロンボ」の探査機が2022年6月23日に撮影した水星(Credit: ESA/BepiColombo/MTM)】

【▲ 日欧の水星探査ミッション「ベピ・コロンボ」の探査機が2022年6月23日に撮影した水星(Credit: ESA/BepiColombo/MTM)】

2022年6月23日、欧州宇宙機関(ESA)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)の水星探査ミッション「BepiColombo(ベピ・コロンボ)」の探査機が水星に接近し、2021年10月以来となる2回目の水星スイングバイを実施しました。冒頭の画像は最接近の5分後、日本時間2022年6月23日18時49分に撮影された水星表面(北緯15度~南緯15度付近)の画像です。ESAから同日付で公開されています。

■最接近直後に明暗境界線付近を撮影、表面の特徴がくっきり 【▲ スイングバイのため水星に接近したベピ・コロンボ探査機の想像図(Credit: ESA/ATG medialab)】

【▲ スイングバイのため水星に接近したベピ・コロンボ探査機の想像図(Credit: ESA/ATG medialab)】

ベピ・コロンボは、日本の水星磁気圏探査機「みお(MMO:Mercury Magnetospheric Orbiter)」と、欧州の水星表面探査機「MPO(Mercury Planetary Orbiter)」の2機による水星探査ミッションです。ここに両探査機の水星周回軌道投入前までの飛行を担当する欧州の電気推進モジュール「MTM(Mercury Transfer Module)」が加わり、現在3機の機体は縦に積み重なった状態で飛行を続けています。

ベピ・コロンボ探査機は水星の周回軌道へ入るために、地球・金星・水星でのスイングバイ(天体の重力を利用して宇宙機の軌道を変更する手法)を合計9回実施して、少しずつ軌道を変更していきます。

冒頭でも触れた通り、今回は全部で6回計画されている水星スイングバイのうち、2021年10月以来2回目のスイングバイが実施されました。ESAによると、探査機は日本時間2022年6月23日18時44分に水星表面から約200kmまで接近。スイングバイ後の太陽に対する探査機の速度は秒速1.3km減速し、探査機の軌道はスイングバイの前と比べて水星の公転軌道により近付きます。

【▲ 打ち上げから9回のスイングバイを経て水星の周回軌道へ入るまでの軌道の変化を示した動画】
(Credit: ESA - European Space Agency)

冒頭に掲載した画像の撮影にはMTMに搭載されている3台のモニタリングカメラの1つが使われており、撮影時の探査機は水星表面から920km以内にありました。なお、画像にはMPOの一部も写り込んでいます(左側の長い棒状の物体は磁力計、右下にあるのはミディアムゲイン(中利得)アンテナの一部)。

ここからは次に掲載した注釈付きの画像もご参照下さい。画像の左下には南北方向に走るチャレンジャー断崖(Challenger Rupes)が写っています。チャレンジャー断崖は長さ約200kmで、高さは約2km。ESAによればこの断崖はつい最近まで無名でしたが、今回のスイングバイで撮影されることを見越した国際天文学連合(IAU)の惑星系命名ワーキンググループによって命名されました。チャレンジャーの名は、1872年~1876年にかけて探検航海を行った英国の軍艦/海洋調査船「チャレンジャー(HMS Challenger)」に由来しています。

【▲ 冒頭の画像に注釈が追加されたバージョン(Credit: ESA/BepiColombo/MTM)】

【▲ 冒頭の画像に注釈が追加されたバージョン(Credit: ESA/BepiColombo/MTM)】

画像右上には中央丘が明るく照らされた直径129kmのエミネスク・クレーター(Eminescu、ルーマニアの詩人ミハイ・エミネスクに由来)が写っています。このクレーターでは水星特有の「hollows(くぼみ)」と呼ばれる直径数十m~数kmの地形が確認されているといいます。“くぼみ”は揮発性物質が昇華した際に形成されたと考えられており、ベピ・コロンボのミッションにとっても興味深い研究対象だとESAは述べています。ちなみに、エミネスクの左下に写っているクニサダ・クレーター(Kunisada、直径241km)の名前は、江戸時代の浮世絵師・歌川国貞に由来しています。

また、エミネスクの右下にある直径24kmのシャオジャオ・クレーター(Xiao Zhao、12世紀中国の画家・蕭照に由来)からは、うっすらと放射状に光条が伸びています。光条は衝突クレーターができた時に放出された噴出物によって形成され、衝突から数億年以内に消えるといいますから、光条がまだ見えているシャオジャオ・クレーターは比較的最近の天体衝突によって形成されたことになります。

2018年10月の打ち上げから2025年12月の水星周回軌道投入まで、ベピ・コロンボの7年に渡る旅路はまだ続きます。次の第3回水星スイングバイは、1年後の2023年6月20日に予定されています。

https://twitter.com/JAXA_MMO/status/1539969400337727488

 

関連:日欧の水星探査ミッション「ベピ・コロンボ」ついに最初の水星スイングバイを実施!

Source

Image Credit: ESA/BepiColombo/MTM ESA - BepiColombo surveys Mercury’s rich geology ESA - BepiColombo lines up for second Mercury flyby

文/松村武宏

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