最初の世代の銀河の“化石”? 非常に暗い矮小銀河が新たに見つかった
sorae.jp / 2022年7月5日 21時7分
サリー大学の天文学者Michelle Collinsさんを筆頭とする研究チームは、地球から約250万光年離れた「アンドロメダ銀河(M31)」の周辺で「超低光度矮小銀河」(Ultra-Faint Dwarf Galaxy)と呼ばれるタイプの銀河が新たに見つかったとする研究成果を発表しました。
この銀河は「ペガスス座」で5番目に見つかった矮小銀河であることから「ペガススV(Pegasus V)」と名付けられました。研究チームによると、地球からペガススVまでの距離は約225万光年で、アンドロメダ銀河からは約80万光年離れているといいます。冒頭の画像にペガススVが写っているのですが、画像のどこにあるのか、見つけることができたでしょうか?(場所が示された注釈付きの画像を記事の後半に掲載しています)
■ペガススVは初代銀河の“化石”のような天体かもしれない矮小銀河は星の数が数十億個以下という小規模な銀河の総称です。矮小銀河は表面輝度が低い(暗い)銀河なのですが、超低光度矮小銀河はその名が示すように、矮小銀河のなかでも特に暗いタイプの銀河です。暗い矮小銀河は古い時代から生き残ってきた銀河だと考えられていて、最初期に形成された星についての手がかりが含まれていると期待されています。
近年、天の川銀河やアンドロメダ銀河が属する局所銀河群では、これまで観測することができなかった暗い矮小銀河が幾つも見つかるようになりました。しかし、画像を公開した米国科学財団(NSF)の国立光学・赤外天文学研究所(NOIRLab)によると、これまでに見つかった暗い矮小銀河の数は理論上予測されている数よりも少ないようです。
暗い矮小銀河の数が理論上の予測よりも本当に少ないのだとすれば、宇宙論と暗黒物質の理解に重大な問題が潜んでいることを意味するといいます。渦巻腕(渦状腕)を広げた雄大な渦巻銀河やジェットを噴出する活発な楕円銀河とは姿がかなり異なるものの、矮小銀河もまた研究者にとって重要な存在なのです。
ペガススVは、チリのセロ・トロロ汎米天文台にあるブランコ4m望遠鏡の観測装置「ダークエネルギーカメラ(DECam)」を使って撮影された画像をチェックしていたアマチュア天文学者Giuseppe Donatielloさんによって発見されました。
研究チームがハワイのマウナケア山にあるジェミニ天文台の「ジェミニ北望遠鏡」を使って改めて観測を行ったところ、ペガススVまでの距離が明らかになったことに加えて、金属(ここでは水素やヘリウムよりも重い元素のこと)が非常に乏しいこともわかったといいます。
金属は恒星内部の核融合反応によって生成され、恒星風や超新星爆発などによって周辺へ放出された後に、新たな星の材料となります。そのため、星の世代交代が進むにつれて、銀河の金属量は徐々に増えていくことになります。金属が少ないということは、その銀河における星形成活動が早い段階で止まったことを意味します。
研究チームによると、ペガススVはアンドロメダ銀河の周辺で見つかっている暗い矮小銀河のなかでも特に金属が乏しく、とても古い星々が集まっていることから、この宇宙における最初の世代の銀河の“化石”のような天体である可能性があるといいます。
Collinsさんは、ペガススVの化学的性質に関する研究を通して宇宙最初期の星形成についての手がかりが得られることを期待するとともに、ペガススVが銀河の形成や暗黒物質を理解する上で役立つかもしれないと語っています。初期の銀河は「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡の観測対象のひとつでもありますが、“初期の銀河の化石”は今後も意外と近いところで見つかるかもしれません。
関連:4つの“ご近所”銀河の新たな画像が公開
■この記事は、【Spotifyで独占配信中(無料)の「佐々木亮の宇宙ばなし」】で音声解説を視聴することができます。
Source
Image Credit: International Gemini Observatory/NOIRLab/NSF/AURA; Image processing: T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF’s NOIRLab), M. Zamani (NSF’s NOIRLab) & D. de Martin (NSF’s NOIRLab) NOIRLab - Gemini North Spies Ultra-Faint Fossil Galaxy Discovered on Outskirts of Andromeda文/松村武宏
この記事に関連するニュース
-
限界の40倍以上で成長? 初期宇宙の巨大なブラックホールをウェッブ宇宙望遠鏡が観測
sorae.jp / 2024年11月8日 21時53分
-
どこかに写っている超新星 ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した棒渦巻銀河「NGC 1672」
sorae.jp / 2024年11月6日 21時47分
-
幻の銀河とも呼ばれる渦巻銀河「M74」 ウェッブ宇宙望遠鏡が再び撮影
sorae.jp / 2024年11月5日 21時23分
-
ハッブル宇宙望遠鏡が撮影 2021年と2023年に超新星が見つかった渦巻銀河「NGC 4414」
sorae.jp / 2024年11月2日 18時41分
-
ウェッブ宇宙望遠鏡が観測した小マゼラン雲の散開星団「NGC 602」
sorae.jp / 2024年10月28日 20時57分
ランキング
-
1全国で販売「カシューナッツ」に“鎮痛剤”混入…… 「深くお詫び」 3万5000袋回収、企業が謝罪
ねとらぼ / 2024年11月27日 8時0分
-
2とんでもない通帳残高に妻、絶句。家族のために生きてきた65歳元会社員が老後破産まっしぐら…遅くに授かった「ひとり娘」溺愛の果て
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月21日 8時45分
-
3男女9000人超が答えた「好きな四字熟語」ランキング発表! 3位「明鏡止水」2位「初志貫徹」…圧倒的1位は?
オトナンサー / 2024年11月26日 21時10分
-
4ひざ痛の元凶「軟骨のすり減り」は50歳から始まる 「関節の衰え」を補うために有効な筋トレ法
東洋経済オンライン / 2024年11月27日 7時0分
-
5物忘れが目立つ…認知症を疑ったら「てんかん」のチェックも
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月27日 9時26分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください