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塵に隠された若い星々を赤外線で捉える。超大型望遠鏡が撮影した天の川銀河の中心付近

sorae.jp / 2022年9月2日 21時40分

【▲ 赤外線で捉えられた天の川銀河中心付近のHII領域「いて座B1」(Credit: ESO/Nogueras-Lara et al.)】

【▲ 赤外線で捉えられた天の川銀河中心付近のHII領域「いて座B1」(Credit: ESO/Nogueras-Lara et al.)】

こちらは「いて座」の方向、天の川銀河の中心付近にあるHII(エイチツー)領域「いて座B1」(Sagittarius B1、略してSgr B1)を赤外線の波長で捉えた画像です。HII領域とは、若い星の紫外線によって電離した水素ガスが赤い光を放っている領域のこと。ガスや塵を材料に新たな星が形成される星形成の現場であることから、HII領域は星形成領域とも呼ばれています。

天の川銀河の中心は渦巻腕(渦状腕)がある銀河円盤の100分の1以下という狭い領域ですが、天の川銀河でも特に星形成活動が盛んな場所であり、過去1億年以内に天の川銀河で形成された星のうち、最大で10パーセントが天の川銀河の中心で誕生したと考えられています。ところが、画像を公開したヨーロッパ南天天文台(ESO)によると、天の川銀河の中心でこれまでに見つかった若い星の数は、予想される数の10パーセントにも満たなかったのだといいます。

実は、天の川銀河の中心がある「いて座」や、その隣の「さそり座」の方向では、ガスや塵が濃く集まった暗黒星雲が帯のように連なっています。塵には星から放射された光(特に波長の短い青色光)を吸収・散乱させやすい性質があるため、天の川銀河の中心方向は可視光線での観測が難しいのです。しかし、可視光線の赤色光や近赤外線といった一部の波長は塵を比較的通過しやすいため、塵の向こう側にある天体を観測するのに役立ちます。

【▲ 暗黒星雲が連なる天の川銀河中心方向の天の川(左)と、へびつかい座ロー分子雲(右)(Credit: ESO/S. Guisard)】

【▲ 暗黒星雲が連なる天の川銀河中心方向の天の川(左)と、へびつかい座ロー分子雲(右)(Credit: ESO/S. Guisard)】

マックス・プランク天文学研究所(MPIA)のFrancisco Nogueras-Laraさんを筆頭とするチームによる最近の研究成果によると、チリのパラナル天文台にあるESOの「超大型望遠鏡(VLT)」に搭載されている赤外線カメラ「HAWK-I」を使って「いて座B1」を観測した結果、約1000万年前に形成された若い星々(合計質量は太陽の10万倍以上)が見つかりました。ESOはこの成果について、天の川銀河の中心付近に存在すると予想されている全ての若い星を発見し、銀河の中心という独特な環境で生まれた星がどのように進化するのかを理解する上での重要な一歩だと紹介しています。

冒頭の画像は、天の川銀河中心付近の高解像度赤外線画像取得を目指す「GALACTICNUCLEUSサーベイ」の一環として取得された、超大型望遠鏡(VLT)のHAWK-Iによる画像(赤外線のフィルター3種類を使用)をもとに作成されたもので、ESOの今週の一枚として2022年8月29日付で公開されています。

 

関連:幼い星を育む真紅のゆりかご。“さそり座”の輝線星雲「RCW 120」

Source

Image Credit: ESO/Nogueras-Lara et al. ESO - Peering through the dust Nogueras-Lara et al. - Detection of an excess of young stars in the Galactic Centre Sagittarius B1 region

文/松村武宏

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