前澤友作氏の課税漏れは税務調査ではよくある事で問題の本質はそこではない
相談LINE / 2020年6月4日 17時30分
![前澤友作氏の課税漏れは税務調査ではよくある事で問題の本質はそこではない](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/soudanline/soudanline_1026_0-small.jpg)
先日、ZOZOの創業者の前澤友作氏の資産管理会社の税務調査事例が報道されました。この報道では、資産管理会社が保有するプライベートジェットについて、前澤氏から使用料を徴収するべきだったのに徴収していない、という名目で5億円近い課税もれを東京国税局から指摘された、ということです。
これだけ聞くと、かなり多額の申告漏れで悪質性があると判断する方もいらっしゃると思いますが、金額は別にして、このような課税もれは税務調査ではよく目にするものです。
■認定家賃等
このような課税漏れの典型例は、社宅の家賃です。法人で借りて従業員や役員を居住させる社宅ですが、仮に法人が入居している従業員や役員から賃料を取っていなければ、先のような使用料の計上漏れが指摘されます。
加えて、利息を取らずに代表者や役員に貸し付ける、いわゆる無利息貸付もこれに類似しています。無利息貸付があれば、適正な利率の利子の計上漏れとして。税金を課税されることになります。
社宅にしても無利息貸付にしても、税務調査ではよく見る話ですので脱税と判断される可能性はほとんどないですし、ミスとして修正申告すればすぐに終わる話です。
■原則は給与課税だが
ただし、このようなミスがあると、原則としてその使用料や適正な利子の金額は、原則として給与として個人にも課税されることになります。法人がいったん使用料などを収入して、その収入した金額をお給料として個人に支払った、という整理がなされるからです。
冒頭の前澤氏の事例について、このような取扱いがなされたかどうか、報道を見ても分かりませんが、法人が赤字であったことから税金は発生しないため修正申告した、という記述がありましたので、給与としての課税はなかったのかもしれません。
■悪質性ではなく、ネゴを理解する
前澤氏に限らず、富裕層が税務調査で多額の申告漏れを指摘されると、あくどいといった報道がなされることも多いですが、必ずしもそうではありません。それよりも、本件の報道で注目するべきは法人が赤字であったことから税金は発生しないため修正申告した、という記述です。この記述を見る限り、国税が甘い言葉をささやいて、修正申告するように求めたと考えられます。
言い換えれば、国税はネゴで修正申告を出させた、と考えられるわけで、ここからも税務調査はゴネ得であることが読み取れます。私たちも、どんどんゴネるべきです。
■専門家プロフィール
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。
※注意事項:記載については、著者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。本コラムのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、著者は賠償責任を負いません。加えて、今後の税制改正等により、内容の全部または一部の見直しがありうる点にご注意ください。
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