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本庶佑教授の課税処分の背景を元国税の税理士が解説!

相談LINE / 2020年11月9日 19時0分

本庶佑教授の課税処分の背景を元国税の税理士が解説!

先日、ノーベル賞学者の本庶佑教授について、大阪国税局が22億円の申告もれを指摘したという報道がなされました。この課税処分は、とある会社と本庶教授との間の特許権の使用料に対するものです。本庶教授は支払われるべき金額が少ないとして、受け取りを拒否していたようですが、支払うべき会社はそれを供託したということなのです。


■供託の意義

供託とは、国の機関である供託所に、賃料などのお金を預けることを言います。供託が使われる一例として、不動産賃貸があります。不動産を賃借する場合、その賃料の金額の多寡などを巡って、大家と店子の間で争いが起こる場合があります。

このような場合、最終的な解決は裁判になりますが、それまで店子がその不動産に住んでいたならば当然賃料を支払わなければなりません。しかし、解決するまでは大家が受け取りを拒む、といったような場合があります。こうなると、店子の方は賃料を払えず、後日「賃料を払わずに不動産を借りていたので賃貸借契約を解除する」などと指摘され、不利益を被る恐れがあります。

このような不利益を防止するため、店子は賃料相当額を供託所に供託することができるとされており、この制度が供託です。供託することで、たとえ大家が支払いを拒んでも、店子は賃料を支払ったことになります。

■供託の課税関係

供託の課税関係について、国税の通達においては、不動産所得について以下のような定めが設けられています。

1 不動産賃料の争いのため供託された場合 供託を受けた日にその金額を大家は収入に計上する必要があります。なお、供託をする店子は、そのタイミングで経費にすることが認められます。

2 賃貸借契約の有効性について争っており、供託された場合 判決等があったタイミングで、供託金に加え賠償金や遅延利息なども収入計上する必要があるとされています。

1と異なり、賃貸借契約そのものが有効か否かを争っているため、賃貸借契約を前提とした賃料も計上する必要はないとされています。

本庶教授のケースは、1に近いため、支払会社が供託した使用料は収入計上すべき、という指導を国税から受けた訳です。

このように、供託されると、争いの途中で実際に収入した訳ではないのに課税対象になる場合もありますので、注意が必要です。

■専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在の専門は元国税調査官の税理士として税務調査のピンチヒッターと税務訴訟の補佐。税法に関する著書、講演、取材実績多数。税務調査対策術を無料で公開中。

※注意事項:記載については、著者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。本コラムのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、著者は賠償責任を負いません。加えて、今後の税制改正等により、内容の全部または一部の見直しがありうる点にご注意ください。

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