所得税と個人住民税で異なる配当課税が可能となった令和3年度改正
相談LINE / 2021年5月6日 19時30分
一定の上場株式の配当等については、所得税において申告不要制度が取られています。申告不要制度とは文字通り申告しないことをいい、配当は源泉徴収されていますので敢えて申告する必要もない、という制度になっています。
一方で、このような配当を申告することも可能です。一例として、上場株式の配当は上場株式の譲渡損と通算することもできますから、申告して通算することで所得税の還付を受ける、といったこともできます。
■平成29年度改正では
ところで、この配当の取扱いについて、平成29年度改正において大きな改正がなされました。従来、所得税で申告不要を選択すれば個人住民税も当然申告不要となり、所得税で申告すれば個人住民税も当然申告不要にならない、といった取扱いだったのですが、所得税と個人住民税で申告方法を変えることができるようになったのです。
その結果、以下のような有利選択が可能になりました。
1 所得税は株式の譲渡損と通算するために申告をし、源泉の還付を受ける
2 個人住民税は申告不要を選択し、配当の所得分個人住民税を減らす。個人住民税の所得を減らした結果、それを基に課される国民健康保険も減る
■利用件数は多くない
このような有利選択ができるため、平成29年度改正当時はたくさん利用しようと言われたものですが、現状の実務では利用件数は多くありません。その理由は、この制度を利用する場合、所得税の申告のみならず、個人住民税の申告も必要だったからです。
現状、所得税の確定申告をすれば個人住民税の申告は不要とされますが、それは所得税の確定申告を市役所などの担当者が確認し、それに基づいて個人住民税を課税していたからです。結果として、所得税の確定申告だけで手続きが終わっているのですが、この制度を使うためには、わざわざ自治体にも申告しなければなりません。申告しないと、自治体の担当者は所得税と同じような課税方式で個人住民税を課税することになるからです。
■令和3年度改正で要件緩和
このことを踏まえ、令和3年度改正においては、所得税の確定申告書に個人住民税は異なる配当課税を行う旨を記載することで、この有利選択を適用することができることとされます。記載漏れがないよう、注意したいところです。
なお、この改正は、令和3年分以後の確定申告書を令和4年1月1日以後に提出する場合について適用されます。
■専門家プロフィール
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。
※注意事項:記載については、著者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。本コラムのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、著者は賠償責任を負いません。加えて、今後の税制改正等により、内容の全部または一部の見直しがありうる点にご注意ください。
この記事に関連するニュース
-
税務調査の追徴税額、平均351万円…「払えないから払わない」「自己破産すればいいのでは?」の末路【税理士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月4日 8時0分
-
「税金対策」以外にもメリットあり…〈年収800万円超〉なら“ひとり社長”がおすすめなワケ【税理士・公認会計士の助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月3日 9時15分
-
【税務調査】「自営業に税務調査は来ない」⇒油断すれば“痛い目”に。個人の追徴課税額「平均100万円超え」という事実【税理士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月3日 8時0分
-
医療費控除は確定申告の期限を過ぎても申告できると聞きました。申告をしたら還付金はいつ振り込まれるのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年4月30日 8時0分
-
亡くなった方の準確定申告・これだけは知っておきたい注意点
トウシル / 2024年4月26日 11時0分
ランキング
-
1円上昇、一時151円台 3週間ぶり円高水準、介入警戒も
共同通信 / 2024年5月3日 22時28分
-
2過度な動き「ならす必要も」=円安、介入コメントせず―鈴木財務相
時事通信 / 2024年5月3日 23時51分
-
3日銀がこれほどまで円安を「無視」する3つの理由 「為替は管轄外」では、結局うまくいかない?
東洋経済オンライン / 2024年5月4日 8時30分
-
4いなば食品、大炎上も「ほぼ沈黙」の戦略的な是非 「沈黙は金」黙って耐える…のはもう通用しない
東洋経済オンライン / 2024年5月3日 19時30分
-
5黒田東彦・日銀前総裁「円安は一時的」…NYの講演で見解、マイナス金利解除・利上げは「当然のこと」
読売新聞 / 2024年5月3日 17時45分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください