従業員に自社商品(住宅とそれ以外)を値引販売する場合の税務を解説
相談LINE / 2021年9月22日 19時0分
所得税の計算上、問題になることが多い制度の一つに、現物給与課税があります。これは極めて安い料金の社宅を従業員に課したり、タダで従業員に昼食を支給したりするなど、お金以外の利益(経済的利益)を与えた場合、それはお給料と変わらないとして給与課税する制度をいいます。
所得税の考え方からすれば、実質的な給与はすべて所得税を課税するべきなのですが、そうなると処理が大変になりますし、何でもかんでも課税対象にすると批判も多くなりますので、国税の通達では、一定のものについてのみ、一定の金額以上の経済的利益の供与があったような課税についてすることとしています。
■値引き販売と現物給与
この現物給与課税の一つに、自社製品等の値引き販売があります。ただし、この値引き販売については、以下のすべての要件に該当する場合については課税対象としないとされています。
(1)値引販売した価額が、使用者が取得した価額以上であり、かつ、他社に通常販売する価額に比して、著しく低い価額(他社に対する通常販売価額のおおむね70%未満)でないこと。
(2)値引率が、役員や使用人の全員に対して一律に、又はこれらの者の地位や勤続年数等に応じて。全体として合理的なバランスが保たれる範囲内の格差を設けて定められていること。
(3)値引販売をした商品等の数量については、一般消費者が自己の家事のために通常消費すると認められる程度のものであること。
■値引販売の例外
ただし、これにも例外があり、住宅の値引販売については、上記(1)~(3)の要件を満たしていたとしても、通常の販売価格との差額について、現物給与課税の対象とするとされています。この理由として、住宅については価格が大きく値引販売された時の金額が大きいこと、そして一般の商品とは異なり、一般消費者が通常消費するような商品等ではないことと説明されています。前者は別にして、後者については、そもそも一定の値引販売について現物給与課税しないとした趣旨の一つに、従業員だけでなく一般消費者のお客さんにも値引き販売することがあるから、と説明されています。
このため、住宅販売業者が自社の従業員に住宅を建てるような場合には、現物給与課税されるリスクが大きいですので、注意が必要です。
■専門家プロフィール
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。
※注意事項:記載については、著者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。本コラムのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、著者は賠償責任を負いません。加えて、今後の税制改正等により、内容の全部または一部の見直しがありうる点にご注意ください。
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