「売掛金の回収は諦めざるを得ない…」となった時に、経営者としてどうすべきかプロが解説!
相談LINE / 2015年5月31日 12時0分
売掛金等の債務者の資産状況や支払能力から見て、債権の全額を回収することができないことが明らかである場合に、所定の要件を満たすことで事実上の貸倒れが認められますが、この「債権の全額を回収することができないことが明らか」かどうか、というポイントについて、税務署とトラブルになることが通例です。
通説としては、「客観的に」債権の回収不能が明らかである必要があるとされており、単に債務者の決算書上債務超過であるようなケースでは足りず、誰の目にも明らかなくらいに債務者の状況が悪化していることが必要になる、と言われています。
■税務署と納税者の激しい温度差
税務調査は税金を取るために行われますので、調査官は事実上の貸倒れを認めたくありません。このため、非常に厳しくこの要件をチェックし、場合によっては納税者に対して強行的な処分を行うこともあります。
一方で、納税者としては、回収の見込みが小さくなれば、損失が大きくなるためできるだけ早く貸倒処理をしたいと考えますので、私たち税理士にも多くの相談が寄せられるところです。この点、どうしても税務署が厳しいものですから、できるだけ先延ばしにすることを薦める税理士も多いところです。
税理士としても、確実な基準がないため、万一のリスクを考えてこのような提案を行うわけですが、注意したいポイントがあります。
■時期を逸すると経費として見てもらえない?
事実上の貸倒れは、債権の全額を回収できないことが明らかになった事業年度において、その債権の全額を貸倒損失として法人税の経費とすることができるものであるところ、全額が回収できないことが客観的に分かった事業年度において、処理する必要があります。
このため、前期以前において全部回収不能が明らかであった、のであれば、当期以降において貸倒損失を法人税の経費とすることはできません。言い換えれば、貸倒損失とするタイミングを逸してしまうと、更正の請求等の手続きによらない限り、事実上の貸倒れは認められないことになるのです。
更正の請求の期限は、申告期限から5年ですので、後回しにしすぎると永久に事実上の貸倒れは認められない、といった可能性があります。
■経営者は税務調査のリスクを覚悟する必要がある
事実上の貸倒れは、このようなリスクがあるところ、税務署はおいそれとは認めないものの、後回しにすることもできないものです。
税務調査リスクを覚悟してでも、落とすべきものは落とす。その覚悟を持つ必要がある、と言えます。
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