派遣先で給与口外→賃金格差発覚→やる気ダウン&ムード悪化。口外を理由に契約解除は不当解雇?
相談LINE / 2015年6月26日 22時30分
今国会で労働者派遣法改正案が衆院を通過した。賛否両論あるが、正式に施行されることになれば、派遣労働者が増える可能性は高いだろう。そこで今回は派遣労働者の賃金トラブルに触れてみる。
派遣労働者は、派遣元によって給料が異なることはご存知だろう。派遣元が違う者同士がお互いの給料がいくらなのか気になるのは自然なことかもしれないが、派遣元によっては、給料を口外してはいけないという契約を交わしている。
もしもその契約を破り、賃金格差が発覚すれば、給料が低い派遣労働者はやる気を無くす可能性があり、最悪の場合、社内のムードが悪くなり、業務に支障が出るかもしれない。
そこで今回は、口外してはならないという契約を破り、派遣元から契約を解除されたら、不当解雇となるのかどうか、この問題について加塚裕師弁護士に伺った。
■まず派遣先と派遣元の契約解除が行われる。その後派遣労働者と派遣元の間で労働契約解除。
「労働者派遣においては、労働者と派遣先との間には労働契約が存在せず、労働契約は労働者と派遣元との間に存在します。そして、労働者と派遣元との間の労働契約は、そのほとんどが一定の期間を定めた有期労働契約であると考えられるので、これを前提に回答させていただきます」(加塚裕師弁護士)
「このケースは、労働者派遣契約の期間途中に派遣先から派遣元に対し労働者派遣契約の中途解約がなされ、これに伴い派遣元が労働者との有期労働契約を解消(解雇)した場合と考えられます」(加塚裕師弁護士)
まずはこう切り出した加塚裕師弁護士。そもそも労働契約は派遣先ではなく、派遣元とかわされている。そしてこのケースでは、派遣先から派遣元に対して派遣契約の解除がなされたことがまず先にあり、その後、派遣元が派遣労働者と労働契約を解除したというのが正しい順番である。
■派遣契約が解除されても、労働契約解除は認められない!
「まず一般論として、期間の定めのある有期労働契約の中途解約(解雇)を行う場合には、それを行うだけの「やむを得ない事由」の存在が必要になります(労働契約法17条1項)」(加塚裕師弁護士)
派遣契約の解除、これはつまりその派遣先へ継続して派遣することができなくなったという意味であるが、これはやむを得ない事由となりえるのだろうか。
「この『やむを得ない事由』とは、期間の満了を待たずして直ちに雇用関係を終了させざるを得ないような重大な事由であると考えられており、単に派遣元と派遣先との間の派遣契約が解約され、従事させる業務がなくなったというような理由では、『やむを得ない事由』とは認められません」(加塚裕師弁護士)
つまりそれまで派遣されていた会社との派遣契約がなくなったとしても、新しい派遣先に従事させることが必要という意味である。
■派遣=不安定?
労働者派遣法改正案では、それまで一部の業務で制限されていた受け入れ期間が、業務に関わらず、事実上、撤廃されることになる。
安倍政権は、規制を緩和することにより、企業の活性化が図られ、その結果、雇用も増大されると考えている。
一方、労働組合や民主党、共産党は、企業が正社員を派遣労働者に置き換える動きが進み、結果的に不安定な派遣労働者が増えると反対している。
働き方の多様化が進み、正社員であることが無条件に良いとは言えない時代ではあるが、この改正案が正式に施行されれば、派遣労働者が増える可能性は非常に高くなるだろう。
派遣元や派遣先は、派遣労働者=不安定というイメージを払拭してもらうために、ますます雇用の安定に努める必要が有るだろう。
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