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取引先との守秘義務を理由に税務調査の質問に無回答は問題なし?(松嶋洋)

相談LINE / 2016年3月11日 21時0分

取引先との守秘義務を理由に税務調査の質問に無回答は問題なし?(松嶋洋)

先日、電子メールも税務調査の対象になりうる、と申しましたが、この点に関連して、取引先と秘密保持契約を結んでいるような場合には、メールの開示を拒否できる、といった趣旨の記述も見られます。税務調査で調査官が配慮してくれることもありますが、この点建前としては守秘義務を目的に、調査官のチェックを断ることは、法律上は無理とされていますので、注意しなければなりません。
実際のところ、国税庁が公表しているFAQによれば、「業務上の秘密に関する帳簿書類等であっても~法令上認められた質問検査等の範囲に含まれるものです。調査担当者には調査を通じて知った秘密を漏らしてはならない義務が課されていますので、調査へのご協力をお願いします。」と説明されています。

■「取引先との守秘義務を理由に、税務調査官の質問に回答しない」は認められない!

この点、過去の裁判例などを見ますと、司法書士や弁護士、歯科医師などが業務上知り得た秘密について、正当な理由がない限り漏えいすることは許されないと法律には書かれてあるものの、税務調査において必要がある場合には、国税職員がチェックすることは問題がないとした事例が多数あります。

このため、守秘義務があるからといって税務調査で調査官の質問に回答しないなどすることは原則許されない、と言わざるを得ません。

■「調査官には二重の守秘義務」が存在する

ところで、このような守秘義務を上回る税務調査が許される理由として、税務職員には二重の守秘義務が設けられていると説明されています。税務職員は、公務員としての守秘義務と、税務調査で知り得た情報に対する守秘義務という、二重の守秘義務があるため、仮に調査官が機密情報を入手しても、それが流出することは絶対にない、と説明されることが多くあります。

近年、OB税理士との癒着などによる国税の情報の漏えいが多くあることを踏まえると、果たしてこの建前が正しいか疑問もありますが、裁判例を見る限り、この二重の守秘義務で問題がないと納得せざるを得ないというのが正直なところです。

■国税の対応は逆なでしないことになっている

守秘義務に当たる情報も税務調査ではチェックされるとは言っても、「納税者の方の理解と協力の下、その承諾を得て」チェックすることを国税庁は明言しています。国税としても、できる限りトラブルにならないよう、慎重な対応をすることが通例のようです。

となれば、この点から穏便な対応を求めることも不可能ではなく、どうしても難しいのであれば、チェックをせずに調査を終わる調査官も珍しくはないと耳にしています。

●執筆:元国税調査官・税理士 松嶋洋 WEBサイト
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後、経団連関連の税制研究所において、法人税制を中心とするあるべき税制の立案と解釈研究に従事。現在は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事するとともに、税理士向けに税務調査・法令解釈のノウハウにつき講演執筆活動を行う。

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