【税務調査】少額なら問題にしないという「少額不徴収」が実は信用できない
相談LINE / 2016年11月21日 19時0分
「この問題は金額の小さいミスなので、指導事項に留めます」
税務調査において、調査官からこのように言われた経験がある方は多いと思います。本来、税務調査で発見したミスはすべからく是正する必要がありますが、金額が小さいミスまで是正するとなると、調査官も税務調査を受ける会社も手間がかかる割に実益に乏しいため、敢えて是正しないという処理が認められています。
この処理を少額不徴収といい、税務調査では広く使われています。
■少額不徴収は拡大解釈されている
本来、実益と手間を考えて認められているのが少額不徴収ですが、一歩進んで国税内部では、調査官の仕事を削減する方便としても取り扱われることがあります。
例えば…
「(苦手な法律を読む作業が発生する困難な問題なので、敢えて見なかったこととして)指導事項に留めます」
「(クロに近いグレーであっても、納税者を説得することが困難なので)指導事項に留めます」
少額とは言えない問題についても、こんな形で少額不徴収を使うことが多くあります。困ったことに、本来指導事項に留めるのであれば、上司の決裁が必要ですが、上司に報告すると、指導事項に留めてはいけないとされる可能性が大きいため、報告をせずに納税者と調査官だけで取り決めるというやり方が実務ではほとんどです。
■後日の撤回は問題なし?
指導事項に留めると言われてラッキーと思うのは、実はリスクがあります。後日、「やはり税金がかかります」などと、指導事項に留めたはずの問題に、課税される可能性があるからです。
指導事項はあくまでも調査官が独断でやったものであり、権威ある税務署長などの公的な見解ではないという暴挙的な見解から、税金をかけていいというのが国税の見解であり、このような見解を裁判所も認めています。
すなわち、後日指導事項に留めたことを撤回するのは、法律上問題がないとされる確率が極めて大きいのです。
■録音などでリスクヘッジを
調査官を信頼していたのに裏切られることがあるのが指導事項に留めるという言葉ですので、安易に信頼してはいけません。このため、調査官の発言を録音しておくなど、別途リスクヘッジを取っておく必要があります。
●執筆:元国税調査官・税理士 松嶋洋 WEBサイト
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事。
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