持株会社を設立して自社株の株価を極端に下げる「持株会社スキーム」とは?
相談LINE / 2016年12月19日 19時0分
オーナー企業では、オーナーの持つ自社の株式の株価が大きくなりすぎたため、後継者に贈与や相続で承継してしまうと、恐ろしい税金がかかるため、株式の承継ができないという問題が生じる可能性があります。この問題の解決のため、銀行がよく提案し、かつ実例も最も多い手法が持株会社スキームです。
■持株会社スキームとは
持株会社スキームとは、文字通り、オーナーが保有する株式を買い取る会社を設立した上で、オーナーから株式を買い取るスキームを言います。具体的には、以下のような流れをとります。
(1) 後継者が、持株会社となる会社を設立する。
(2) (1)の持株会社に、銀行が株式の買い取り資金を融資する。
(3) 持株会社が、オーナーから2の資金で株式を買い取る。結果、自社と持株会社が100%の資本関係になる
(4) 自社から持株会社に配当を行うなどして、持株会社にキャッシュを集め、2の資金の返済を行う
こうすることで、オーナーの株式が零になり、後継者が持株会社を通じて自社を支配することができ、株式を後継者に承継することが可能になります。
この場合の税務メリットとして、以下が挙げられます。
(1) 法人に対する株式の譲渡であるため、時価で譲渡すれば、20%の譲渡所得税で済む(贈与や相続であれば、50%超の税金がかかる可能性がある)
2
(2) 100%支配関係がある法人間であれば、配当には税金が原則かからないため、無税で返済資金を持株会社に集約できる
なお、このスキームを実行する場合においても、譲渡金額となる株式の時価は低ければ低い方が望ましいため、譲渡前に高額の役員退職金を支給するなどして株価を下げてから持株会社に譲渡することになります。
■否認事例がある
この持株会社スキームは、融資によって銀行にも大きなメリットがあるため、広く提案されており、多くの件数があります。このため、株価の計算が適正である限りは、国税もうるさく言わない、という理解が一般的でしたが、国税がこの持株会社スキームに対し、かなり強引な課税をしたというニュースが報道されています。
このため、多くの人がやっているから、信頼できる銀行が提案しているから、と安心することなく、持株会社スキームも大きなリスクがあることを前提に考える必要があります。少なくとも、実行に当たっては、専門知識がある税理士にしっかりと相談するようにして下さい。
●執筆:元国税調査官・税理士 松嶋洋 WEBサイト
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事。
この記事に関連するニュース
-
一般的な税務調査は「任意調査」だが…“任意”と言いつつ「拒否すれば罰則」となる驚愕の根拠【税理士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月7日 11時15分
-
「不動産売買」よりも手残りが数千万円増えるケースも…「不動産M&A」のスキームと税金の仕組み【不動産鑑定士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月5日 7時45分
-
事例をもとに解説「本から学ぶ 中小企業のための事業承継対策」書籍付きWebセミナー開催
PR TIMES / 2024年7月2日 11時30分
-
調査対象の8割以上が追徴課税!実施時期や時効、よく聞かれる質問…「相続税の税務調査」を税理士が全解説
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月26日 9時15分
-
富裕層の「相続税対策」…納税資金準備のために〈なるはや〉で作成・確認すべき「3つの表」とは?【相続専門税理士の助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月25日 11時15分
ランキング
-
1ゆれる兵庫県庁 「解明が務め」と百条委、「自分も処分?」と疑心暗鬼になる職員も
産経ニュース / 2024年7月19日 20時1分
-
2コロナ「第11波」、変異株KP・3が主流 流行期入りで夏に感染拡大か
産経ニュース / 2024年7月19日 21時4分
-
3<独自>事務所資金から香典か 堀井学衆院議員の配布疑い 裏金が原資の可能性も
産経ニュース / 2024年7月19日 18時16分
-
4ユニクロでブラジャーなど大量万引き 1200万円超す被害 ベトナム国籍の女3人を逮捕・送検
ABCニュース / 2024年7月19日 19時2分
-
5愛知・犬山市で死亡した7歳女児の全身に多数のあざ…一時保護時に「パンチされる」と訴え
読売新聞 / 2024年7月20日 5時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください