取引先倒産で売掛回収の可能性が限りなく低い場合に用いる債務免除の注意事項
相談LINE / 2017年4月28日 19時0分
売掛先の倒産などにより、会社の債権の回収が困難になり、場合によっては貸倒損失を検討することがありますが、この貸倒損失について、法人税は非常に厳しいです。わずかでも回収可能性があると判断できる場合には原則としてそれを経費として認めないとされているわけで、ほとんど回収できないのに経費にならない、というジレンマがあります。
このため、実務上貸倒損失を計上する場合には、債務免除を行うことがほとんどです。回収可能性がある場合に債務免除をすれば問題になる可能性はあるものの、債務免除により債権は法的に消滅していますので、認められる可能性は通常の場合よりも大きいと言われています。
■債務免除の要件
この債務免除について、法人税の通達は、以下の金額について貸倒損失を計上できるとしています。
『債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合において、その債務者に対し書面により明らかにされた債務免除額』
ご覧いただくと分かる通り、(1)債務超過の状態が相当期間継続し、(2)書面により債務免除を行うことが要件となっています。(1)についてですが、相当期間と言われてもどの程度か分かりませんが、一般的には3~5年程度と言われています。ただし、それより短い期間であっても、認められる場合もあることが示されていますので、結局はケースバイケースの判断になります。
次の(2)についてですが、貸倒損失として認められるためには、内容証明郵便などの書面によって、債務免除すること及びその金額を明らかにする必要があります。書面については、内容証明郵便でなくとも問題ないとされていますが、何らかの書面で債務者に明らかにする必要があります。
■民法上は認められるが無理
ところで、民法上債務免除については、書面でなくとも口頭でその旨を債務者に伝えれば問題ないとされています。しかし、税においては、口頭では足りず、何らかの書面を交付しなければ貸倒損失としては認められません。
このような話をすると、民商法に詳しい弁護士などから債務免除は口頭でも成立するので問題ないはず、と主張されるわけですが、税には税のルールがありますので、民商法だけで決まる話ではありません。このような取扱いは、貸倒損失に限った話だけではありませんので、税理士にも弁護士にも意見を聞いて、慎重に取り扱う必要があります。
専門家プロフィール:元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。実質完全無料の相談サービスを提供する。
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