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貸倒損失があった場合、債権者としての事情はどこまで考慮されるか

相談LINE / 2017年7月21日 19時0分

貸倒損失があった場合、債権者としての事情はどこまで考慮されるか

不良債権など実質的に全額の回収が見込めない債権については、事実上の貸倒れが認められます。この回収が見込めないかどうかの判断については、債務者に債務超過の状況が長期間継続し、今後も好転する見込みがないことなどから、客観的に回収できないことが明らかである場合をいうこととされています。

■債務超過の判断

ここで問題になるのは、債務超過の判断です。債務超過と言えば、一般的には会社の財産債務を記載する貸借対照表において、財産よりも債務が大きい場合を意味します。しかし、回収不能を判断する場合の債務超過の判断については、貸借対照表の金額だけではなく、その他の状況も総合勘案することとされています。

このため、債務者の決算書だけでは貸倒損失の証拠にはなりませんから、債務者の協力を得て財産状況を正確に確認するなどする必要があります。

■債権回収の努力も必要になる

その他、回収が困難になる場合、一般的には法的措置などを使って回収する努力を行うことが通例です。債権の金額にもよりますが、支払がないのにそのまま放置して置き、回収ができないことになったとなると、十分な努力をしていないとして、債務者に利益供与をしたとみられる可能性があります。

このため、債権回収について所定の努力をすることはもちろん、債務者との接触状況などについても、まとめておく必要があります。

■債権者の事情は考慮されるか

先の債権回収の努力とも関係することですが、債権回収するにしてもコストがかかりますので、債権者側の合理的な判断として、コストが大きいことから債権回収を断念することも実務では見られます。このように債権者側の事情によって生じた貸倒れとした場合、税務上も認められるかが問題になりますが、過去の最高裁判決において、債権者側の事情も当然に考慮するべきとされた事例があります。

しかし、税金を取りたい国税の解釈は、最高裁判決に関係なく、債権者側の事情は参考程度にしかならず、あくまでも債務者の事情で回収できないか否かを判断するべきとしています。結果として、最高裁判決はあるにしても、債権者側の事情で貸倒れとせざるを得なかった、という主張は税務調査で否認される可能性が大きいです。

回収コストが膨大になるため回収を断念する場合にも、貸倒損失を経費とする場合には、必ず債務者の事情は確認しなければなりません。

■専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。実質完全無料の相談サービスを提供する。

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