従業員への社宅無償貸与等の経済的利益の中で間違えがちな永年勤続者の旅行券
相談LINE / 2018年10月11日 19時0分
会社が従業員に対して、社宅を無償で貸与したり、無償でお金を貸したりする場合、会社は従業員に対して経済的な利益を供与したと言われます。これらの場合、お金はもらっていませんが、お金ではない経済的なメリットをもらっていることは間違いありません。これが経済的利益であり、その経済的利益は給与として従業員に課税されます。ただし、あらゆる経済的利益に給与課税すると実情に合わないこともありますので、経済的利益であっても課税しないとされるものが複数あります。
■永年勤続者への記念品など
その典型例として、永年勤続者への記念品などがあります。以下の要件を満たす永年勤続者に支給する記念品や旅行や観劇への招待費用は、課税されないとされています。
(1) その人の勤続年数や地位などに照らして、社会一般的にみて相当な金額以内であること。
(2) 勤続年数がおおむね10年以上である人を対象としていること。
(3) 同じ人を2回以上表彰する場合には、前に表彰したときからおおむね5年以上の間隔があいていること。
相当な金額とありますので、あまりにも高い金額の支給は給与課税されますので注意してください。
■旅行券も非課税でいい
とりわけ、この永年勤続者に対する経済的利益の供与については、一定の旅行券の支給についても非課税でいいとされています。旅行券などの金券は、現金とほとんど一緒であるため原則として経済的利益ではないというのが所得税の原則的な取扱いですが、これはその例外です。
■旅行券が非課税となる要件
この非課税とされる旅行券の要件は、以下とされています。
(1) 旅行の実施は、旅行券の支給後1年以内であること。
(2) 旅行の範囲は、支給した旅行券の額からみて相当なものであること。
(3) 旅行券の支給を受けた者が当該旅行券を使用して旅行を実施した場合には、所定の報告書に必要事項(旅行実施者の所属・氏名・旅行日・旅行先・旅行社等への支払額等)を記載し、これに旅行先等を確認できる資料を添付して会社に提出すること。
(4) 旅行券の支給を受けた者が当該旅行券の支給後1年以内に旅行券の全部又は一部を使用しなかった場合には、当該使用しなかった旅行券は会社に返還すること。
永年勤続者に対する旅行券は例外的な取扱いですので、国税職員はもちろん税理士も間違える場合がありますので注意してください。
■専門家プロフィール
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。
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