概算取得費で申告しても更正の請求ができるケースを税理士が解説

相談LINE / 2019年7月2日 19時0分

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個人が土地や建物を売却した場合、その売却益に対して譲渡所得税の対象になります。譲渡所得の金額は、売却金額から売った資産の取得費などを控除して計算しますが、相続した資産や、長年持っていた資産など、取得したタイミングが古いものについては、取得費がわからないことも多くあります。
このような場合の特例として、売却金額の5%を取得費とすることができるという制度があり、これが概算取得費です。

■市街地価格指数と更正の請求

従来、取得費がわからなければ、すべからくこの概算取得費を使っていましたが、ある裁決事例で、市街地価格指数に基づいて概算で計算した金額を取得費とすることが認められました。概算取得費よりも、この市街地価格指数に基づく金額の方が納税者に有利になることが多いため、近年はこれで申告することが増えています。

この方法ですが、一つデメリットがあり、それは税金の還付を請求する更正の請求では、使えないということです。例えば、市街地価格指数による金額の方が有利なのに、当初の申告では概算取得費を使ってしまったため過大に所得税を納税した場合、更正の請求によりその当初申告を修正して市街地価格指数による金額ベースで再計算して差額を還付してもらう、といったことはできません。

このため、市街地価格指数による金額を採用するなら、最初の申告からこの金額で申告をしなければなりません。

■実額証明がある場合

ところで、更正の請求ができないという点から誤解があるのですが、取得費がわからなかったため、概算取得費で当初申告をしていたものの、後日契約書が発見されるなどして実際の取得費が判明し、その取得費で計算した方が有利になる、という場合には更正の請求ができます。なぜなら、概算取得費は①「実際の取得費がわからない場合」と②「実際の取得費はわかるが、概算取得費の方が納税者に有利な場合」に使える方法で、③「実際に取得費が分かるが、概算取得費が納税者に不利な場合」には使えないからです。

このため、後日③に該当することが判明すれば、概算取得費を使えないのに使ったという誤った申告をしていますから、それを是正するために更正の請求を行うことができ、過大に支払った所得税の還付を受けることが出来ます。

■専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ 税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

※注意事項:記載については、著者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。本コラムのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、著者は賠償責任を負いません。加えて、今後の税制改正等により、内容の全部または一部の見直しがありうる点にご注意ください。

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