受け取るときも支払うときもどちらも課税関係が複雑な立ち退き料

相談LINE / 2019年7月12日 19時0分

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テナントを借りている場合、家主の都合で立ち退かざるを得ないことがあります。この場合、家主から立退料をもらう場合が多いですが、法人でもらう場合は別にして、この立退料を個人でもらうと、課税関係が複雑になります。
その理由は、個人の所得に対して課税される所得税は、所得が発生する経緯によって異なる種類の所得として課税されるからです。実際のところ、所得の種類が違えば計算方法も異なることとされています。
この結果、立退料はそれが発生する経緯に応じて、所得の種類が変わるため、きちんと検討しないと誤った結論を導きます。

■具体的な取扱いは

具体的な取扱いとしては、以下になると解説されています。

1 家屋の明渡しによって消滅することになる、借家権の対価の補償としての性格のもの
→ その補償としての金額は、資産の譲渡の対価と見ることができるため、譲渡所得の収入金額とされます。

2 立退きの対象になった家屋で行っていた、事業が立退きにより休業等せざるを得ないことになるため、その事業に係る収入金額又は必要経費を補填する性格のもの
その補填に当たる金額は、事業所得等の金額を補填するものであることから、事業所得等の収入金額とされます。

3 立退きに伴い発生する移転の費用を補填するような、その他の性格のもの
→ 1や2の金額に該当する部分を除き、その金額は偶発的にもらった金額として、一時所得の収入金額とされます。

このように、もらった立退料の性格を検討した上で、課税関係を考慮する必要があります。

■支払う場合も複雑

立退料の取扱いは、それを受け取る側だけではなく、支払う側も複雑です。一例を挙げると、以下のように取扱いが変わるとされています。

1 法人などが建物を賃借するために支払う立退料
⇒ 賃借期間に渡って効果がある費用ですから、繰延資産として計上し、一時の費用にならず数年で償却します。

2 個人が他に貸している物件を取壊し、その敷地を譲渡するために、支払う立退料
⇒ 譲渡を行うために費用不可欠な費用ですので、譲渡費用として譲渡所得の計算上控除することになります。

3 借家権のある建物を取得するような場合に、その借家権を有する賃借人を立ち退かされるために支払う立退料
⇒ 建物を取得するために必要な費用ですから、建物の取得費に含めることになります。

このように、かなり複雑な判断になりますので、注意してください。

■専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ 税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

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