国税内部通達「プロ野球親会社の球団に対する広告宣伝費の取扱」は意味不明
相談LINE / 2019年7月16日 19時0分
私たちを楽しませてくれるプロ野球ですが、球団の財務を見ると、選手の年俸などのコストが大きいことがあって、球団の経営だけでは財務を安定させることが難しいと聞きます。このため、球団を保有する親会社が、自社の広告効果も期待して財務的な支援をすることも多いようですが、このような支援は、法人税の取扱いとして寄附金になることが通例です。
寄附金は法人税において、経費になる金額が制限されます。寄附とは見返りのない費用ですから、必ずしも必要な費用とは言えないとして、経費を制限しているのです。
■寄附金だけど寄附金にならない?
このように、子会社を支援すると寄附金の問題がついて回るのですが、こと子会社であるプロ野球の球団に対する支援は、国税庁の内部文書である通達において、以下のような特例が認められています。
1 親会社が、各事業年度において球団に対して支出した金銭のうち、広告宣伝費の性質を有すると認められる部分の金額は、寄附金ではなく広告宣伝費として、その全額を経費とする
2 親会社が、球団の各事業年度において生じた野球事業から生じた一定の赤字金額を補てんするため支出した金銭は、その赤字金額を限度として、原則として「広告宣伝費の性質を有するもの」として取り扱うものとする
親会社がプロ野球の球団を保有するのは、広告宣伝の効果を見込んでいることは間違いないため、上記の1は納得できます。しかしながら、野球事業から生じた一定の赤字金額を補填しても、それは寄附金にならないという理屈は全く意味不明です。実際のところ、プロ野球の球団である子会社以外の子会社の赤字を親会社が補填した場合、まず間違いなく寄附金とされます。
■法律には適合していないが
このため、法律に照らして考えれば、この通達の取扱いは間違っているということになりますが、こんなことを言い出すとプロ野球の球団を保有する会社がなくなり、引いてはプロ野球そのものの危機になりますので、特例中の特例として、このような取扱いが認められたということでしょう。
とは言え、租税法律主義という言葉が示す通り、税の取扱いはすべて法律で決めなければなりません。このため、現状の取扱いについても、通達ではなく法律で決めるべきと考えます。
■専門家プロフィール
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。
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