元国税の税理士が解説するソフトバンクの租税回避スキームと税制改正予定について
相談LINE / 2020年1月9日 19時0分
先日、ソフトバンクが行っている租税回避スキームが、2020年度の税制改正で封じ込められる可能性が大きい、といったニュースが報道されました。ソフトバンクについては、巨額の節税スキームを行っており、先日の税務調査で国税が問題にしたというニュースもありましたが、そのスキームを封じ込めようとしているようです。
■スキームの全体像
このスキームの詳細ですが、報道を前提とすると以下のような流れになります。
1 海外子会社から、その子会社が保有している孫会社の株式の現物分配を受ける
2 現物分配を受けた後、親会社が持っているその海外子会社の株式を売却する
このスキームの税務メリットを解説しますが、まず1について。税法上、海外子会社(原則として、持株割合が25%以上)から受ける配当については、その配当金額の95%が非課税とされています。現物分配とは、金銭以外の資産を配当することを意味し、これも配当であることは間違いありませんので、この95%非課税規定の対象になります。言い換えれば、海外孫会社の株式をもらっても、ソフトバンクは5%部分しか課税されないのです。
次に、2ですが、株式の時価は、その会社が持っている純資産の金額の多寡に影響されます。海外子会社は孫会社の株式を分配していますから、その分純資産の金額が小さくなり、時価が下がります。株式は時価で譲渡するのが原則ですから、このように時価が下がったものを譲渡すれば、譲渡損が生じることよくあります。ソフトバンクの場合、現物分配した孫会社の価値が非常に大きかったため、海外子会社の時価は大きく下がり、結果として多額の譲渡損が生じたようです。
この譲渡損ですが、他の所得と相殺することができますし、場合によっては損失を繰り越すこともできますので、大きな節税となったようです。
■法律上は問題ないが…
このスキームですが、上記の1のスキーム、そして2のスキーム共に法律で認められています。しかしながら、1と2を合わせて考えると、膨大な節税になるため、行き過ぎた節税として租税回避ととらえるのが妥当と考えられます。国税としても、これ以上は見過ごせないといったところで、税制改正を予定していると思われます。
なお、このような租税回避が可能になる最も大きな原因は、法律を作る側の能力が欠如していることにあることも、押さえておくべきでしょう。
■専門家プロフィール
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。
※注意事項:記載については、著者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。本コラムのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、著者は賠償責任を負いません。加えて、今後の税制改正等により、内容の全部または一部の見直しがありうる点にご注意ください。
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