ムゲンエステート事件の影響を元国税の税理士が個人的な見解を交えて解説
相談LINE / 2020年2月12日 19時0分
先日、ムゲンエステート社の税務訴訟について、東京地裁において同社が敗訴したというニュースが報道されました。この税務訴訟は、マンション転売業者の消費税の取扱いが問題になったもので、国税が従来の見解を180度変えて課税に踏み切った事件であることから、税理士としても大きな注文が集められていました。控訴するかどうか、現時点では情報が入ってきていませんが、仮に控訴せず処分が確定すれば、実務において大きな影響があります。
■国税の見解の変更点とは
この事件で問題になったのは、以下の国税の見解の変更です。
1 従来の見解
マンション転売業者については、転売までに家賃を収入するかどうかに関係なく、転売という「最終目的」がある以上は、仕入れたマンションの消費税の全額を控除できる。
2 変更後の見解
マンション転売業者については、転売までに家賃を収入したのであれば、転売という最終目的に関係なく、家賃を収入したという「客観的な事実」があるため、仕入れたマンションの消費税の控除が制限される。
詳細は割愛しますが、要は「最終目的」と「客観的な事実」のどちらを優先させるか、という話になります。ただし、特に法律の改正もなく、従来は全額控除できたものが控除できないとされた訳で、納税者としてはとんでもないという話になります。
■見解変えても証拠にはならない
東京地裁は、このような見解の変更があっても、ただちに問題はないとして、国税の後出しじゃんけん的な課税を容認しています。この点、大きな批判はありますが、私個人の意見としては、従来の国税の見解が間違っていたものであり、変更後の見解が正しいと思っていますので、課税自体を問題にするのは難しいと考えています。結果として、申告を間違えたペナルティーにあたる加算税を課税しない、くらいの対応が一番自然かと思っています。
■弁護士や国税OB税理士が大々的に宣伝
私の見解とは異なり、税務に特化したとある弁護士や、国税OB税理士が、「国税が見解を変えるなどけしからん!」などといって、同じマンション転売業者に対して、国税の不当性を訴えるような話をよくしています。困ったことに、国税の不当性を訴えるにしても、完全成功報酬ではなく相当のフィーを彼らは請求しているはずですので、慎重な対応をするべきと考えます。
■専門家プロフィール
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。
※注意事項:記載については、著者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。本コラムのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、著者は賠償責任を負いません。加えて、今後の税制改正等により、内容の全部または一部の見直しがありうる点にご注意ください。
この記事に関連するニュース
-
苦労をかけた母に“恩返し”のはずが…離れて暮らす母親に〈月5万円〉の仕送りを30年間続けた53歳女性にまさかの税務調査。「多額の追徴税」を課され、二度涙したワケ【税理士の助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月12日 11時15分
-
「新車を買う」と狙われる?…「税務調査」のターゲットになりやすい人の特徴【税理士の助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月7日 11時15分
-
税務調査? 嘘だろ?…年収400万円の53歳“普通のサラリーマン”にまさかの税務調査。何事もなく終わったはずが…思わず二度見した「驚愕の追徴課税額」【税理士が助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月3日 11時0分
-
孫娘の喜ぶ顔が見たくて…「毎年100万円」の“贈与”を続けた82歳のおじいちゃん、税務調査で〈追徴税400万円〉を課され「何かの間違いでは」【税理士の助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月27日 11時15分
-
税務調査官「こちらにサインを」の真意…回避するための〈3つのポイント〉【税理士の助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月24日 10時30分
ランキング
-
1クシュタールの会長「セブン&アイとの統合で小売業のチャンピオンに」…敵対的買収は「考えていない」
読売新聞 / 2024年11月22日 9時5分
-
2クリスマスケーキに異変…『卵』の価格高騰止まらず 夏の猛暑の影響で今後は鳥インフルエンザによる卵不足の恐れも
東海テレビ / 2024年11月21日 21時22分
-
3ジャパネット2代目に聞く「地方企業の生きる道」 通販に次ぐ柱としてスポーツ・地域創生に注力
東洋経済オンライン / 2024年11月22日 8時0分
-
4一番人気の「かつ重」は300円未満! スーパー・トライアルが物価高時代に「安さ」で勝負できるワケ
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月22日 6時10分
-
5KADOKAWA「サイバー攻撃」が示した経営リスク セキュリティの難題に日本企業はどう向き合うか
東洋経済オンライン / 2024年11月22日 7時20分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください