定価よりも高い「プレミア価格の腕時計」を買うのはバカなのか?

日刊SPA! / 2019年3月3日 15時50分

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デイトナ16520

 腕時計投資家の斉藤由貴生です。最近、知人から腕時計購入の相談をよく受ける私ですが、そんな人の多くが、すでに「プレミア価格の腕時計」を定価で買いたいと考えています(正しくはプレミアムプライスですが、ここでは「プレミア価格」と言われてきた文化を重んじます)。

「プレミア価格の腕時計」とは、定価では入手困難なため、定価より高い価格で取引されているモノを指すのですが、このような現象は腕時計に限らず、焼酎やウイスキーなどでも以前から起きている現象です。

 こういった価格のモノは、本来の定価よりも高い値段でしか手に入らないため、「買うのがバカバカしい」と思われる方が多いかと思います。では、プレミア価格状態のモノを買う人がいないかというと、決してそんなことはありません。

 ということで、今回は「プレミア価格の腕時計」は買ってよいのか、ということを考えてみたいと思います。

 まず、「プレミア価格」について、2つのパターンがあるということを説明します。“定価より高い”という状態でも、「現行型」か「旧型」かということで違いがあります。

 古いモノの価値が上がるということは、腕時計においてはよくある話ですから、旧型が定価よりも高くても、それほど損した気分にはならないでしょう。実際、生産終了となっているわけですから、新品しか取り扱いのない正規店では100%入手できず、中古品をプレミア価格で買うしかありません。

 その一方で、今でも生産されているモノが定価で手に入らないというのは、とても損した気分と言えるかもしれません。本来なら正規店で定価で買えるかもしれないのに、それより高く買うなんてバカバカしいと思う方は多々いるかと思います。

 腕時計において、プレミア価格の代名詞的存在といえば、ロレックスの「デイトナ」。このデイトナの3つの世代を例にしたいと思います。

◆事例1 デイトナ16520の場合

 90年代後半に登場した16520ですが、当時の定価は65万円(税別)でした。それに対して当時の新品実勢価格は100万円以上。実に数十万円程度「プレミアムフィー」を払わないと手に入らなかったのです。2019年現在では、デイトナのSSモデルが定価より高いということは「当たり前」というほど知られているかと思いますが、90年代後半当時、こうした現象は起きたばかりだったため、「いつかは安くなる」と思った方もいることだと思います。

 実際、当時この現象を雑誌で見ていた私も、デイトナを買う人の気が知れないと思っていました。しかし、その当時デイトナをプレミア価格で買うということは、実は間違いではなかったのです。

 なぜなら、現在デイトナ16520の中古相場は200万円以上という水準に達しており、90年代後半の新品プレミア価格を、はるかに上回る状態となっているのです。つまり、当時「割高」で買ったとしても、現在買った値段以上で売却できる可能性があるのです。

 90年代後半当時にデイトナ16520をプレミア価格で買い、現在まで持ち続けている方は、立派な腕時計投資家だと言えるでしょう。

◆事例2 デイトナ116520の場合

 2000年に登場した116520は16520の後継モデル。当時は、ロレックスブームと言える時代で、多くの腕時計雑誌が存在しました。当然、この新型デイトナの情報は大々的に伝えられ多くの人が注目していました。そのようなこともあってか、この116520はデビュー当時から注目度が高く、その新品実勢価格は148万円(黒文字盤・税別)といった水準。2000年当時の定価は80万円程度だったため、ずいぶんなプレミアムとなっていました。

 しかしこの116520は、2000年に新型としてデビューして以降、徐々に値下がりしてしまいます。2002年頃には特に安くなったものの、第1次安倍内閣が誕生した2007年頃には再度上昇しました。ただ、その2007年でも2000年の実勢価格を超えることはなかったのです(黒文字盤)。

 また、2008年のリーマン・ショックでは、デイトナの相場がガクッと下落。116520の中古相場はこの時期70万円台程度となり、2000年の新品実勢価格の半額程度になっていたのです。もしもこのとき、116520を持っていた人がこの値下がり状態に驚き「これ以上安くならないうちに売っておこう」と判断したらおそらく数十万円単位の損となったことだと思います。

 しかし2019年現在、この116520はどのような中古相場となっているかというと、約170万円以上となっているのです。つまり、これまで最も高かったと思われる2000年の新品実勢価格よりも数十万円単位で高くなっており、買った値段よりも高く売れる可能性がある状況となっています。

◆事例3 デイトナ116500LNの場合

 2016年に116520からバトンタッチされた116500LNは、これまでのデイトナ史上もっとも高い新品実勢価格となったモデルです。2016年10月時点での新品実勢価格(安い順の3社平均値)は194万9333円(白文字盤)という水準。定価は127万4400円ですから、約67万円も高い「プレミアム」を支払って買うことになったわけです。

 先ほどの116520の事例を考えると、新作としてデビューしたときが最も高い可能性もありますから、2016年のプレミア価格は「割高」だと言われても仕方がありません。

 

 しかし、そんな116500LNの白文字盤は、現在中古で250万円以上という水準となっているのです。つまり、2016年10月の「割高」な新品実勢価格より、現在の中古品は50万円以上も高くなっているのです。

 16520と116520は、「かつての新品実勢価格より、現在の中古が高い」という状態となっていますが、それは生産終了後に起こった現象だと言えます。それに対して116500LNは、生産されているにもかかわらず、値上がりとなっているのが凄いと言えます。

◆結局プレミア価格で買ってもいいのか?

 3世代のデイトナ事例を見ると、プレミア価格で買ったとしても、その価格より高くなる事例が多いと言えます。ただ、リーマン・ショック時のように安くなる時期もありますから、高い時期に買って安い時期に売ったならば、もちろん損をすることもあるでしょう。

 しかし、売る時期を間違えなければ、これまでの事例では決してそんな損な買い物でなかったということがわかります。つまり、腕時計においてプレミア価格で買うということは、決してバカな買い方ではなく、必ず損をする買い物でもありません。

 定価はモノの価値の指針となりますが、最後に価値を決めるのは市場です。つまり、価値とは人が「欲しい」と思う需要と、その供給で決まるため、買いたい人が「価値がある」と判断したならば、プレミア価格でも決して間違いではないと思うのです。

【斉藤由貴生】

1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、「腕時計投資新聞」で執筆。お金を使わず贅沢する「ドケチ快適」のプロ。腕時計は買った値段より高く売却、ロールスロイスは実質10万円で購入。著書に『腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)と『もう新品は買うな!』がある

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