おしっこが近い、尿漏れでズボンが…中高年男性が直面する排尿障害

日刊SPA! / 2019年3月22日 15時54分

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 おしっこが近い、夜中にトイレで起きる、尿漏れでズボンを汚す。加齢が原因と軽く考えていたらそれは「万病のもと」だった。膀胱と排尿の関係が中年男のライフスタイルを左右する。

◆1200万人の日本人が下半身の異常に苦悩する

 多くの中高年男性にとって、ムスコとの付き合い方は悩みのタネだが、昨今、ED以上に注目されるべき異常は「排尿障害」だろう。今年1月に刊行された『本当はこわい排尿障害』(集英社新書)によれば、日本人の10人に1人、つまり1200万人に何らかの排尿障害の疑いがあるというのだ。

 かくいう40代の記者も、頻尿の気があるのか、1時間おきにトイレに通う日々。そのうえ、これだけ出しているにもかかわらず、必ず残尿感があるのだからたまらない。十分にムスコをしごいて尿道をカラにしたはずなのに、トイレから戻る途中で“ちょい漏れ汁”がパンツを汚しているのだから、始末が悪い。

 しかも、ただの「尿漏れ」と侮るなかれ。前掲書によれば、排尿障害は多数の病気や体調不良の原因になっている場合があるという。その例として列挙された数十項目のうち、ドライアイ、下痢症、逆流性食道炎、多汗症、口内炎ができやすい、おならの多発は、記者にドンピシャで当てはまる。果たして排尿障害は万病のもとなのか。

 こうした肉体の不具合に直面したとき、多くの同輩は、中年に差しかかって年相応に体のあちこちにガタがきたものと諦めがちだ。だが、排尿障害を自覚し、その症状に真剣に向き合えば、若々しく生活できるかもしれない。

◆一日8回以上は「頻尿」。“飛び散り尿”は要注意!

 小便の海に溺れかけている記者は、藁にもすがる気持ちで、前掲書の著者を訪ねた。排尿障害に詳しい高橋知宏医師である。泌尿器科の医師は日本に7000人程度いるが、高橋医師は独自の治療方針で知られており、その知見を求めて日本全国どころか海外からも、年間1000人に上る新規の患者が訪ねてくる存在なのだ。

「排尿障害の代表的な症状としては、一日8回以上トイレに行く頻尿、安眠を妨げる夜間頻尿、陰嚢の痒み、排尿後に尿が漏れる遺尿、咳やくしゃみなどでつい濡らしてしまう尿失禁、排尿後の残尿感、尿が2筋になったり散ったりする尿線分裂などが該当します」

 この他にも排尿障害が疑われる症状はいくつもあり、そのごく一部をまとめたので、参考にしてほしい。

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こんな症状があったら「排尿障害」かも!?

□ 一日8回以上の小便

□ 尿意を催すと動悸を感じる

□ 残尿感

□ 会陰部(陰嚢と肛門の間)の疼痛

□ 尿線が分裂・小便が飛び散る

□ 尿道の痒み・痺れ・痛み

□ 尿漏れの感覚

□ 睾丸が引っ張られる・お腹にくっつく

□ 陰嚢がベタベタする

□ 射精時、射精後に痛みを感じる

□ 精液がゼリー状になっている

□ 自分の尿の臭いを常に感じる

□ 水の音を聞くと尿意を催す

□ 原因不明の坐骨神経痛

□ 足の裏の痺れ・痛み

※高橋医師が過去に診察した患者の症例から排尿障害が原因とされる症状15をピックアップした。心当たりがある向きは勇気を持って相談を。

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「年間8000人もの患者を診察してきた経験上、中高年の約半数が排尿に関する問題を抱えていると、推測しています」

 ただ、高橋医師が言うには、人間が排尿障害になるのはある意味仕方がなく、いわば生物としての宿命的なものなのだとか。

「もともと長い間、生物は四足歩行の動物だったわけで、当然排尿や排便も四つ足で行われていました。そのなかで類人猿が生まれ二足歩行を獲得するわけですが、歴史を鑑みてもそれほどたっていないのです。つまり、生物が長い年月の間に確立した排泄の方法と比べて、人間のそれは不完全なものと言えます。それゆえ、膀胱に溜まった尿を排出する際、膀胱の出口が十分に開かない体質の人が、非常に多いのです」

 しかも、平均寿命が50歳程度の戦前であればいざ知らず、80歳を過ぎた老人が元気に闊歩している現代では膀胱にかかる負荷の影響が顕在化しており、それが排尿障害に繋がっているというのだ。

「膀胱に溜まっているおしっこを尿道へ押し出そうとするとき、膀胱の出口が狭いままだと何が起きるか。膀胱の筋肉に余計な負担がかかり、出口は激しく振動します。これをトイレに行くたびに繰り返すうち、膀胱の出口の筋肉は変形して柔軟性を失い、硬くなっていくのです」

 この状態は“膀胱頸部硬化症”と呼ばれ、ますます出口が開きづらくなる悪循環に陥ってしまう。そしてその先は、男子の最大の鬼門である、前立腺のトラブルへ一直線となる。なにしろ80歳以上の日本人男性のうち、8割が前立腺肥大症を患っているという調査結果もあるのだ。

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「排尿障害」があると……

1. 急性前立腺炎:頻尿、残尿感、血尿などの症状。細菌感染が原因でも発症する

2. 慢性前立腺炎:一般には原因不明とされる。症状は頻尿、残尿感、尿道の痺れ

3. 膀胱頸部硬化症:膀胱出口が十分に開かず、硬くなることで排尿困難に繋がる

4. 前立腺肥大症:症状は前立腺炎と同じ。悪化すると、尿が出なくなる尿閉に!

5. 男性不妊症:前立腺液が質、量ともに十分に分泌されず、精子の活動を弱らせる

6. 前立腺がん:初期症状として、頻尿、残尿感、排尿時の痛みがあるので要注意

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「多くの泌尿器科医の間では、前立腺肥大の結果として尿道が圧迫され、排尿障害が起きると考えられていますが、順序が逆です。膀胱の出口が窮屈な状態での排尿は、ホースの先を指で押さえると水が勢いよく飛ぶのと同様に、ジェット水流の状態になります。前立腺は尿道を取り囲むように接している器官ですから、尿が前立腺の中を何度も渦巻くことで粘膜を傷つけ、石灰が沈着していくのです」

 現在のところ排尿障害の結果として前立腺が肥大する、という見立ては、泌尿器科医の中では異端の主張である。だが高橋医師は、

「そのような患者を何人も診て、治癒させてきた」と自信満々だ。◆原因不明の体の痛みは排尿障害が原因!?

 そしてここからが最重要ポイントだ。なぜ排尿障害は、多くの病気や体調不良と繋がりがあるのか。それにはまず、“関連痛”という概念についての説明が必要だろう。よく知られている関連痛の例として、心筋梗塞がある。最初は胸の痛みから始まり、次に左手の小指の痛み、五十肩、歯痛など、神経が繋がっている部位に症状が広がっていく。患部である臓器や器官から発信された病的刺激は、神経を通って脳に伝達されるが、このとき刺激が多すぎると、別のルートの神経にまで信号が流れ込むことがあるという。

 これと同じように、膀胱や前立腺の関連痛が、全身の思いもよらない場所で発生するというのだ。

「過去に排尿障害の関連痛として、慢性の胃痛を発症した47歳の男性がいました。私も当時はにわかには信じられなかったのですが、この患者さんもおしっこが出にくいという症状を訴えていたんです。そこで膀胱出口の石灰化した部分を削り取る手術をした結果、胃の痛みがすっかり改善し、関連痛が証明されました。さらに患者さんは、慢性的な肩こりと首が滑らかに回らないという悩みも抱えていたのですが、これも解消。肩と首も関連痛だったのでしょう」

 さらに、排尿障害の治療によって、原因不明の顔面の痒みが治癒したという例もある。

「当時29歳の男性患者ですが、当初は陰嚢とペニスの痒みを訴えての来院でした。私の調査では、陰嚢に痒みを持つ患者の9割弱は排尿障害を抱えていますから、この患者さんにも排尿障害を改善するための薬を処方するアプローチを取りました。その結果、陰嚢とペニスの痒みは激減したのですが、両こめかみと両頬の痒みも消えたと言うのです。おそらく顔の痒みも関連痛だったのでしょう」

 高橋医師によると、排尿障害によって死に至るような病気を発症するケースは考えられないそうだが、一方で、精神面で重大な影響を及ぼすこともある。

「男性の慢性前立腺患者の8割がうつ状態になり、自殺に走る人も少なくありません。『陰嚢が痒くてしょうがない』、『陰部が痛くて我慢できない』などと訴える患者さんに対して、大抵の病院はそれが排尿障害によるものだと認識できず、『気のせい』と突き返してしまう。その結果、患者はうつ状態を悪化させてしまうのです。男性ホルモンにはネガティブな感情を消し去る作用があるのですが、更年期が進むと分泌されないので、高齢者は要注意なのです」

 ムスコの異変が全身の不調を呼ぶ……。中高年はご用心!

【高橋知宏氏】

’52年生まれ。東京慈恵会医科大学卒業後、大学病院、救急病院を経て、’90年、東京・大田区に高橋クリニックを開業。独自の治療法を求め、国内外から年間8000人の患者が訪れる

<取材・文/野中ツトム・福田晃広(清談社) 写真/PIXTA>

― 排尿障害クライシス ―

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