孤独死の犠牲になった悲しきペットたち。飢えて共喰いした形跡も…

日刊SPA! / 2019年4月21日 8時54分

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 年間約3万人といわれる孤独死――。少子高齢化で、単身世帯が急増する中、孤独死は、もはや誰の身にも起こってもおかしくない。

 拙著、『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』の取材に当たっては、数々の孤独死現場を取材したが、その過程で驚かされたのが、飼い主と共に犠牲になるペットたちの存在だ。熱帯魚や、亀、ハムスターなど、孤独死現場では数多くのペットたちの亡骸を目にする。あまり知られていないが、孤独死現場では、犬や猫などのペットが遺されて、悲惨な結末を迎える例が少なくない。

 そこには飼い主の亡き後、飢えや喉の渇きなどとともに、壮絶な苦しみの中で命が尽きた動物たちの姿がある。

 原状回復工事(特殊清掃)に携わって10年以上になる武蔵シンクタンクの塩田卓也氏は、ペットと孤独死の現状についてこう語る。

「孤独死した人と共に、犬や猫などのペットが犠牲になるケースは決して少なくありません。孤独死した人は、生前に疎遠だったケースがほとんどなので、例え運よく生き残ったとしても、親族が引き取ってくれるのは稀です。慌てて止めましたが、残された猫をその場で絞殺そうとした心のない大家さんもいます」

◆猫屋敷で共食いの果てに

 そのいくつかの例をご紹介したい。

 東京都内の築50年ほどのアパートは、猫屋敷だった。10畳ほどの二階部分のガラスは、所々ヒビが入っていて、布テープで補修しているのが外からもわかった。塩田氏は、その隙間から漂う強烈なアンモニア臭と腐敗臭に、驚きを隠せなかった。塩田氏は通常、目をゴーグルで覆い口と鼻は防毒マスクで防御しながら突入していく。しかし、そのゴーグルの隙間からも、強烈な臭いが侵入してくる。

 塩田氏が部屋の中に入ると、そこはあまりの惨状だった。20匹は下らないほどの猫の屍がいたるところに無残にも転がっていたのだ。

「猫たちの死体は、ただ息絶えているものや、頭以外はしかばねのものなど、壮絶でした。完全に骨と化している猫もいて、凄まじい異臭だったんです。僕は数々の特殊清掃に携わっていますが、その臭いは人間の死体をはるかに超えるものでした。猫は飼い主が亡くなると、最後には飢えて共食いをしていたようです。猫たちの悲しみが伝わってくる、本当に可哀そうな現場でした」

 塩田氏が猫たちの亡骸を片づけて、飼い主の遺品を整理していると、この部屋の主の男性のものと思われる遺品が出てきた。写真を見ると、男性はリーゼントヘアで、肩には入れ墨があった。若い頃には、威勢が良いタイプだったが、年齢を重ねてからこのアパートに引きこもるようになったらしい。そのうち、寂しさを覚えたのか、避妊手術を受けていない猫たちを引き取るようになり、そのまま繁殖を野放しにして、鼠算式に増えていったのだろう。

 飼育能力を超えた数の動物を飼う行為は、アニマルホーダーと呼ばれ、近年大きな社会問題とになっている。飼い主が生前から孤立していたケースも多く、孤独死した末に何日も発見されず、ペットが悲惨な結末を迎えることが多くなるのだ。孤独死の8割を占めると言われるごみ屋敷などのセルフネグレクト(自己放任)は、様々な理由で離職や離婚など、誰でもふとしたきっかけで陥るが、このようなアニマルホーダーもセルフネグレクトの一種である。

◆悲しき小型犬の死

 塩田氏によると、猫と違って犬の場合は、ひっそりとその生涯を閉じることが多い。そこは神奈川県の高級分譲マンションの一室だった。住民の50代の女性は一人暮らしで、孤独死して死後二週間が経過していた。

 玄関からゴミの山が溢れていて、掻き分けるようにして、匍匐(ほふく)前進で前に進まなければいけなかった。

 机には、大量のサプリが無造作に置かれていて、部屋の中心は大量のペットボトルがあった。ごみの頂点は、腰辺りまでの高さになっていた。

 一メートル四方の毛布が掛けられた箱の辺りに、臭いが充満していたため、毛布を取ると、ケージの中で、白と茶色の小型犬二匹が、寄り添うように亡くなっていた。

「孤独死現場ではペットの死骸が見つかることが多いのですが、この二匹はお互い頭と頭をくっつけて、お互いに寄り添うように亡くなっていたんです。きっと二匹は仲が良かったのでしょう。2匹の遺体を見た瞬間、思わず涙が込み上げてきました」

 塩田氏は、女性がセルフネグレクトに陥り、無気力となり、毛布をケージにかけて放置したのだろうと推測する。そして、二匹は生きたまま、ゴミの山に埋もれて、亡くなっていった。塩田氏は、その二匹の苦しみを思うと、胸が締めつけられたという。

 少子高齢化、単身世帯の増加に伴い、孤独死は近年増え続けているという実感がある。世知辛い世の中でペットは私達の心を癒してくれる大切な存在だが、その命を道連れにすることは決して飼い主も望んではいないはずだ。<取材・文/菅野久美子 画像提供・武蔵シンクタンク>

【菅野久美子】

(かんの・くみこ)ノンフィクションライター。最新刊は『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』(毎日新聞出版)『孤独死大国 予備軍1000万人のリアル』(双葉社)等。東洋経済オンライン等で孤独死、性に関する記事を執筆中

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