スマホ料金「4割値下げ」のウソ。iPhoneなど機種代は値上げ、得するのは政府だけ…

日刊SPA! / 2019年4月23日 8時30分

写真

◆au、ソフトバンク、そして、楽天参入で価格競争は加速する

◆ドコモ値下げでわかった、政府主導の携帯料金「4割値下げ」の嘘

「これまでは料金の組み合わせが多岐にわたり、理解していただくのが難しかった。新プランはシンプルでお得になる――」

 4月15日、NTTドコモの吉澤和弘社長が、6月からスタートさせる携帯電話の新料金プランを発表した。目玉は、何といっても「最大4割」と胸を張る通信料の大幅値下げ。ユーザーは、1か月最大30GBまでのデータ使い放題と従量制の2つのプランから選ぶことができ、3回線以上契約している家族でもっともデータ量の少ない1GBのプランを組むと、通信料が4割安くなる仕組みだという。

 ただその一方で、これまで通信料に組み込まれていた端末料金の「補助」はなくなる。電気通信事業法改正案が今国会で成立する見通しで、今秋から通信料と端末代金は「分離」させることが義務づけられるため、従来の通信料+端末代金の“セット割”ができなくなるからだ。

 昨年8月、菅義偉官房長官が「今よりも4割程度下げる余地がある」と発言したことをきっかけに始まった携帯料金の値下げ論争。ドコモが“前倒し”で値下げに踏み切ったことで、auやソフトバンクの動向も注視されているが、今後、政府主導で推し進める値下げの流れは加速するのか? 携帯電話の料金システムに詳しいITジャーナリストの三上洋(よう)氏が話す。

「そもそも、今回ドコモが打ち出した新料金プランは2つの問題を先送りにしている。1つは、端末代金の問題。吉澤社長も『ユーザーの負担になるので、新機種が出たときに別の方法を考えたい』と言葉を濁しているが、新料金プランでは端末が“定価”で売られる可能性が高く、『4割値下げ』どころか、実質的には大幅な値上げとなる。

 現行のプランでは、最新機種のiPhoneXsや同Мaxを2年ローンで購入すると、ドコモから約5万9000円の補助が出るが、新たなプランではそれが丸々なくなる……。通信料金を値下げしてくれても、端末代の値上げ分をペイするには4年ほどかかり、同じスマホを4年以上使い続ける人は少数派でしょうから、多くの人は損をすることになります。

 問題の2つ目は『2年縛り』と言われる契約期限についてで、ドコモは契約の自動継続をやめる仕組みを『(いずれ)提供したい』と説明するにとどめており、場合によっては、契約2年後に料金が高くなる可能性も残っているのです」

◆総務省がドコモに無理やり値下げ

 ドコモが改正電気通信事業法の成立前に“前倒し”で値下げを発表したのは、2020年から実用化が予定されている5G(第5世代移動通信システム)の影響もありそうだ。長年にわたって、国内外でモバイル業界の取材を続けるスマホ/ケータイジャーナリストの石川温氏が話す。

「現在、総務省が5Gの周波数の割り当てをする直前ということもあり、キャリア各社は許認可事業ゆえに、菅官房長官の『電波は国民の財産』という言葉に歩み寄らざるを得ないのです。

 先に『4割』という数値目標を提示されたために、その数字を達成しようとドコモも4割値下げプランをひねり出したが、データ容量1GM未満しか使わないユーザーは限られ、多くのユーザーは安さを実感できないと思います。

 しかも今回、総務省がドコモに無理やり値下げさせたことで、新規参入組の楽天モバイルは出鼻をくじかれ、格安スマホも苦戦を強いられることになる……。本来なら、3大キャリアの料金が高いままの状態で、楽天などが安さを売りに参入し乗り換えが進むはずだった。

 そうなれば、自然と大手3社も値下げに追随することになり、公正な競争が実現しますから。それが、ドコモが“前倒し”で値下げを発表したことで、乗り換えの動きが鈍くなるのは間違いない」

◆注目の中古スマホ市場もいずれ縮小することに

 キャリア3社による寡占状態を解消し値下げの動きを加速させるために、総務省が新規参入組の楽天モバイルを優遇しそうな節もある。先ごろ、通信料金と端末代金の「分離」に関して、楽天に限り「適用除外」とすることを検討しているとの報道もあったからだ。だが、石川氏は「その見通しは暗い」と否定的だ。

「楽天の三木谷浩史社長も『我々のテーマは携帯電話の民主化活動であり、(分離プランの適用除外という)選択肢を取るつもりはない』と否定しているように、正々堂々と戦うつもりのようです。

 ただ、楽天には頑張ってもらいたいが、携帯電話のビジネスはネットワークがもっとも重要で、これを一から築いていくのは至難の業。莫大な投資も必要ですし、アンテナを建てる場所を確保するにも、目ぼしい場所にはすでに大手3キャリアが設置している。

 日本よりも遥かに大きい米国市場でさえキャリアは4社から3社になりつつあり、楽天が苦戦を強いられるのは必至。

 定価販売となる端末が高くて売れなくなれば、スマホメーカーも苦しくなるし、新製品が売れなければいずれ中古市場も縮小する。スマホが売れなければキャリアの実店舗も減るので、ユーザーは今より不便になる……。

 ドコモを始めとする大手キャリアも犠牲者であり、結局、得をするのは料金値下げで手柄を挙げたかのように見える政府だけなのです」(石川氏)

◆いつ買い替えればいい?

 気になるのは、我々ユーザーは、いつ買い替えればいいのかという点だ。前出の三上氏が説明する。

「とりあえず、新プランを発表したドコモのユーザーやドコモに移行しようとしている人で、機種変更を考えている人は、料金改定前の5月中に契約しておいたほうがいいでしょうね。

 現行の料金プランの下なら、補助が出るので端末を安く手に入れることができますから。ドコモは新機種の販売について明言を避けており、夏の新モデルがリリースされるときにどうなるかも注意深く見守る必要があります。

 ただ、大手キャリアの新料金プランで悩んでいるくらいなら、いっそのこと、今のタイミングで格安スマホに乗り換えるのも一つの手。

 通信速度が落ちるのは昼間と夕方くらいなので、そこまで不便はないですし、いくらドコモが4割値下げと銘打って新しい『分離プラン』を出しても、平均でも3大キャリアの半額以下と通信料が圧倒的に安いですから」

 ドコモの新料金プランは、旧プランに比べて約900~1400円ほど安くなったが、国際比較で見ても、海外のシェア1位のトップキャリアと比べると高いといった意見も少なくない。ただ、5G時代の到来を前に、ダンジョン(迷宮)のごとき複雑怪奇な料金プランによるストレスから解放されるのは歓迎したい。

◆旗振り役の菅官房長官はご満悦だったのでは……

 ドコモが発表した新料金プランの仕組みは、すでにauやソフトバンクが導入済みの分離プランとほぼ同じ体系。見直しが期待されていた「2年縛り」の契約期間や途中解約の違約金9500円はそのままだった。値下げの旗振り役となった菅官房長官は、ドコモの発表を受けて「(納得できる料金かは)最終的には消費者が判断」と感想を述べた。

取材・文/週刊SPA!編集部 写真/時事通信社

※4/23発売の週刊SPA!「今週の顔」より

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング