新卒で上場企業に入社したのに…自己啓発セミナーにハマり、借金まで背負った男

日刊SPA! / 2019年6月12日 15時52分

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 新卒で大企業に入社できるのはごく僅かな人間たち。せっかく得たエリートコースだが、中にはそれを棒に振ってしまう人もいるようだ。

「自分に自信がないことが騙された原因ですね」と後悔するのは、元通信機器会社の安本久司さん(仮名・35歳)だ。安本さんは新卒で上場企業に入社。ところが、自信のなさがアダとなって転職、そして転落したという。何があったのだろうか。

◆自分に自信がなく、悪徳自己啓発セミナーにハマってしまう

「両親が厳格だったせいか、かなり厳しく怒られていました。そのため小さい頃から何かあれば『自分が悪い』と思い込むようになりました。自信がなくて、試験で100点をとっても『先生が採点を間違えたんじゃないの?』と疑うような生徒でしたね」

 偏差値が高い大学に進学しても、新卒で上場企業に就職しても、いつもどこか不安だった。そのため女性とも付き合ったことがない。

「そんなときに、大学の友人に誘われて自己開発セミナーに参加しました。そこで講師から自分の自信のなさをズバリと言い当てられて。生まれて初めて、自分を理解してくれる人に会ったと感激しました」

 その後もセミナーに出席し、教材費など合わせてトータル30万円支払った。「あなたはもっと自分を磨くべき」と洗脳された安本さんは、セミナー主催者から、インターネット代理店を紹介され、28歳で転職した。

「ところがその会社は、NHKの受信料の回収や、インターネット回線の訪問販売が主な仕事。一番キツかったのは、個人宅へのインターネット回線の訪問営業でした。ノルマが厳しく、1日10件の契約を取ってこい!と迫られて」

 会社の先輩から、「何が何でも契約を取るためには、迷っている余裕を与えないために、メリットを並べて、相手がその気になったらすぐにサインさせろ」とアドバイスされた。だがそれが原因でクレームが増加したのは言うまでもない。

「クレームによって契約が無効になると、マイナス評価にされ、年収は前職の半分以下になってしまいました」

◆別のセミナーでは借金を背負わされ…

 そんなどん底の中、彼はさらに別の自己開発セミナーに出向いてしまう。ネットワークビジネスや恋愛セミナーでローンを組まされ、貯金がゼロになった。

「恋愛セミナーは1回につき10万円。10回のローンを組まされて、100万円に。内容は、スゴレンやモテハナなど男性版の恋愛アプリとほぼ同じで、恋愛試験問題もありましたが、全く役に立ちませんでした」

 ネットワークビジネスにも騙された。会場で20万円のクレジット払いのサインをさせられて、半月後には山のような健康食品が届いた。

「恋愛セミナーの継続を断ろうとしたら、やくざ風の男に脅されて、危うく消費者金融に連れていかれそうになりました。我ながらバカでしたが、その段階になってようやく『人に頼らないで自分の力で変わるしかない』と気が付いたんです」

 このままではまずい。安本さんは危機を感じて、ハローワークに向かった。30歳になっていた。

◆騙された経験を活かそうと前を向いた結果

「50代のハローワークの男性職員がとても親切で、そんなブラックな会社に行かなくてもいいからバックレろ!と言ってくれました。悪徳商法の専門家にネットで相談することも教えてくれて」

 さらに、安本さんに合いそうな企業の候補まで丁寧に探してくれたという。

「とあるイベント会社の募集を見せてくれました。各種セミナーやイベントを企画、運営する会社でした」

 規模は中堅どころで、実績も多くある会社だった。だが安本さんは転職できる自信がなかった。

「ハローワークの職員が『職歴だけだと難しいかもしれないけど、インチキセミナーで騙されてしまった経験を活かすとアピールすればいいんじゃないかな?』とアドバイスしてくれたんです。これまで自信がなかった僕に『ネガティブな経験を全部バネにしなさい』と何度も言ってくれて」

 面接では職員の助言通り、セミナーに騙された経験から、まともなイベントを企画し運営したい旨を伝えた。結果は見事に合格。だがセミナー運営の部署ではなく、広告営業に配属された。

「とにかく忙しい部署で、先輩たちから『走りながら考えろ』と言われて。帰宅するとくたくたですぐ眠くなる。余計なことを考えずに、とにかく人生をやり直そうと必死でした」

 頑張った甲斐があってか、新卒入社の上場企業には劣るが、30代で世代の平均年収を得た。借金も返済し、今では貯金もできるようになった。

「今はセミナー運営部に異動願いを出しています。自分の経験を早く活かしたいです」

 20代で地獄を見たおかげで、30代でようやく自分に自信を持ち、頑張れるようになったそうだ。<取材・文/夏目かをる>

― シリーズ・辞めなきゃよかった ―

【夏目かをる】
コラムニスト、作家。2万人のワーキングウーマン取材をもとに恋愛&婚活&結婚をテーマに執筆。難病克服後に医療ライターとしても活動。ブログ「恋するブログ☆~恋、のような気分で♪」

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