有馬記念のオグリ、ディープ三冠じゃない!競馬予想の達人が選んだ平成の名勝負

日刊SPA! / 2019年7月3日 8時29分

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平成23年、悪天候のダービーを制したオルフェーブル。泥まみれの勇姿が競馬ファンの心をグッと摑んだ(写真/産経新聞)

<平成ギャンブル名勝負第4回・競馬編>

 令和になって2か月ほどが過ぎたところで、ありがたいことに、勝SPA! より原稿の依頼を頂いた。いわく「平成の名勝負シリーズ・競馬編」である。

 この手のテーマはとても悩ましい。平成の名勝負でベタなところに行くならば、オグリキャップがラストランを制した有馬記念や、平成17年(’05年)のディープインパクトの三冠、あるいはウオッカvsダイワスカーレットのハナ差の激戦となった平成20年(’08年)の天皇賞(秋)あたりが思い浮かぶ。

 しかし、これらのレースはやや語り尽くされてしまっている感もある。一方で、やたらとマニアックなレースを提示しても自己満足に陥ってしまいかねない。そこで今回は、平成の名勝負の中でも、

『令和の時代になっても何度でも見返したくなるビッグレース』

 という括りの中で、独断と偏見でレースを選んでみた。不思議なもので本当に素晴らしい勝負は、馬券の当たりハズレを抜きに、ふとした時に見返したくなるものだ。もはや振り返ったところで1円にもならないのだが、いつ見てもゾクゾクと背筋に緊張が走り、当時の熱い思い出が鮮やかに蘇る。それは学生時代に繰り返し聴いた音楽をたまに聴きたくなるような、そんな気持ちなのだ。

 さて、前置きもそこそこに、早速行ってみよう。私、TAROが選ぶ、平成の名勝負ベスト3! まずは第3位は……

◆当時も凄いが振り返るともっとすごい
第3位 平成13年(’01年) エリザベス女王杯 勝ち馬:トゥザヴィクトリー

 忘れもしない、筆者が高校3年の秋である。個人的なゾクゾク来るポイントはいくつかあるのだが、まずシンプルに直線の大接戦の叩き合いが凄い。

 本来は逃げ先行が得意ながら、この日は外から伸びて来た武豊騎乗のトゥザヴィクトリー、そして内からじわじわ伸びて来る武幸四郎騎乗のティコティコタック、ほぼ最後方から矢のように伸びて来る横山典弘騎乗のローズバド、さらにはオークス馬・レディパステルに、2冠馬テイエムオーシャンも加わる。結果、上位5頭の着差は、ハナ・ハナ・クビ・クビ…。内外広がっての叩き合い、ゴール前の大接戦は今思い出しても胸が熱くなる。

 しかし、このレースの凄さはその叩き合いだけに留まらない。出走馬の“母としてのその後”が凄いのだ。勝ったトゥザヴィクトリーも重賞ウィナーを多数輩出する名牝だが、それが霞むほど、敗れた馬たちがもっと凄い。2着ローズバドは、今や種牡馬にもなったローズキングダムの母。さらに下の着順を見ると、なんとポイントフラッグの名前が! ご存じの通りポイントフラッグは、あのゴールドシップの母である。

 他にも菊花賞馬・スリーロールスの母であるスリーローマン、名スプリンター・カレンチャンの母であるスプリングチケット、地味なところではダートで活躍したカゼノコの母として知られるタフネススターの名前もある。

 21世紀最初の牝馬限定G1は、のちの名繁殖の競演でもあったのだ。ちなみに当レースは関西テレビの馬場アナウンサーの実況が素晴らしい。それも含めて、是非ご覧いただきたい。

◆「もう終わった……」を鮮やかに覆した
第2位 平成10年(’98年) 有馬記念 勝ち馬:グラスワンダー

 これもまた、ビデオテープが擦り切れるほど何度も観たレースだ。

 グラスワンダーは、デビューした3歳時(当時の馬齢表記/以下同)、異次元の強さで連戦連勝、それも圧勝続きだった。しかしその後は故障に悩まされ、復帰したのは4歳の秋の毎日王冠。この毎日王冠も平成の名勝負として有名なレースだが、サイレンススズカやエルコンドルパサーを相手にまったく及ばず5着に敗れてしまう。さらに復活を期した次走のアルゼンチン共和国杯でも1番人気に支持されたが、格下相手に見せ場なく6着。

「もう終わったのではないか…」

 そんな声も囁かれ始めた中で臨んだのが、この有馬記念だった。さすがに2度の凡走が響いたのか、4番人気まで落ち込んでいた。

 しかし、迎えたレースでは、3歳時を思い出すかのような圧倒的なパフォーマンスを見せる。特にゾクゾクするのは3~4コーナーの手応えだ。暮れの中山芝は今とは比べ物にならないほどの荒れ馬場だったが、その中でただ一頭、まるで別の生き物かのように”スーッ”と上がって行ったのがグラスワンダーだった。

 直線はメジロブライトとの叩き合いを制し、完勝。名馬が復活を遂げた瞬間だった。その後グランプリ3連覇などの偉業を成し遂げた同馬だが、もっとも輝いたのが平成10年(’98年)の有馬記念だったと思う。その強さに似つかわしくない優しい栗毛の馬体は、暮れの中山の西日がよく似合っていた。

◆異例のクラシック戦線を文句なしに駆け抜けた
第1位 平成23年(’11年) 日本ダービー 勝ち馬:オルフェーヴル

 この年、日本は暗く、どんよりと沈んでいた。言うまでもない、3.11が起こった年だ。

 競馬も当然のことながら影響は避けられず、クラシック1冠目の皐月賞は東京競馬場での開催となった。そんな異例尽くしのクラシック戦線の中で現れたのが、後に世界を股にかけて活躍するオルフェーヴルだ。

 オルフェーヴルは激しい気性の持ち主で、当初は力を発揮できないことも多くクラシックの主役ではなかった。しかし、3月のスプリングSを快勝すると、徐々に頭角を現す。続く皐月賞では4番人気ながら3馬身差の圧勝。堂々の主役として臨んだのがこの日本ダービーだった。

 ところが……である。この年のダービー当日の東京競馬場は、稀にみる悪天候だった。激しい雨に叩かれた芝は不良馬場にまで悪化、薄暗い空のもと、迎えた競馬の祭典。果たして大丈夫なのか……。期待と不安が入り混じるその舞台で、オルフェーヴルは圧倒的な強さを見せた。

 スタートはやや出遅れ気味だったが、道中は唸るような手応えで追走。直線の入り口ではまだ馬群の後方で馬体をぶつけ合いながらのもがき苦しむシーンもあったが、視界が開けると一気に伸びて来た。最後はただ一頭追いすがるウインバリアシオンを退け、不良馬場を力強く伸び切っての2冠達成。震災の影響がまだ各地に色濃く残る平成23年(’11年)の5月、競馬界に新たなスターホースが誕生した瞬間は、今思い出しても胸が熱くなる。

◆やっぱり競馬はただのギャンブルじゃない

 というわけで、以上が個人的に選んだ平成の名勝負ベスト3だが、いかがだっただろうか? 正直なところ、3つに絞るなんて無理! というのが素直な感想だったりする。今回は漏れてしまったが、平成24年(’12年)のゴールドシップが勝った皐月賞や、平成21年(’09年)のウオッカの安田記念などなど、挙げていけばキリがない。

 やっぱり競馬はただのギャンブルじゃない、筋書きのないドラマだ、と改めて思うのだ。たぶん、名勝負は競馬ファンの数だけある。予想をするのも楽しいが、たまにはそれぞれの名勝負を語りながらダラダラと飲む夜も悪くない。

【TARO】
競馬予想ブログとしては屈指の人気を誇る『TAROの競馬』を主宰する気鋭の競馬予想家。最新の著書に『万馬券の教科書』(ガイドワークス)、『回収率を上げる競馬脳の作り方』『回収率が飛躍的に上がる3つの馬券メソッド』(扶桑社)が発売中。

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