上司がそろっていなくなる? 突然はしごを外される組織――「外資系はつらいよ」

日刊SPA! / 2019年7月8日 15時54分

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「外資系」――この三文字がつくだけで、なんとなくエリートっぽいイメージを感じさせてしまう魔法の言葉。だが、それは大いなる誤解なのかもしれない……。カラオケボックスの店員からIT業界へと飛び込み、外資系企業を渡り歩く――そんなサクセスストーリーを体現したかにみえる筆者が、イメージは華やかでも本当は泥臭い「外資系」のトホホな実情を綴る連載「外資系はつらいよ」。

 第2回は、ドライに語られることが多い「外資系の転職事情」だ。

◆転職エージェントのひと言で老舗メーカーへ

 外資系企業に長いこと身を置き、それなりに転職を重ねている人は、大体何人かの転職エージェントと仲良くなっています。筆者も何人かの転職エージェントと仲良くしており、よその会社にいいポジションの空きが出てくると、すぐに連絡をしてくれます。

「よっ、久しぶり。最近どうしてる? 実はいいポジションがあって、お前みたいなヤツを探してるんだけど――」

 大抵こんな調子で始まるのですが、大半は仕事内容や条件が自分に合わないものばかりです。しかし、時々「これはいいんじゃないか?」と思わせるポジションを紹介されることがあります。

 ある時、彼が紹介してくれたのは、とある老舗メーカーのマーケティング部門のマネージャー職。最近組織を刷新し、マーケティング機能をすべてアメリカ本社で担当するように変更したらしく、今回は、その一環として日本のマーケティングに関する全責任を持つマネージャーを探しているとのこと。簡単に言えば、アメリカ本社の人間として日本のマーケティングを仕切る立場で、とにかく英語とマーケティングに強い人間を探しているのだとか。

 二つ返事で転職エージェントの誘いにO.K.を出した筆者は、早速アメリカ本社のマーケティング部門のトップ(副社長)と電話で面接をすることになりました。どうやら彼は、半年ほど前に某グローバルIT企業からヘッドハントされてこの老舗メーカーに入社したらしく、今、組織づくりの真っ最中だといいます。すでに(日本を含む)アジア太平洋地域を広くカバーする本部長として前職の元部下を引っ張ってきており、その下で日本市場を任せられる人材を探していたのです。

 採用にあたって彼が重視していたポイントは、「変化の激しい業界を経験している人材である」ということ。彼自身が変化の激しいIT企業出身であり、しかも今回は老舗メーカーのビジネスを大きく変えるプロジェクトなので、その変化についていけることが最優先事項。ちょうどIT企業で新規事業を担当する部門にいた筆者は、お眼鏡にかなったらしく、すぐ入社が決定しました。

◆入社一カ月で副社長から衝撃の告白が……

 こうしてアメリカ本社の副社長、そしてアジア太平洋地域を任されている本部長の肝いりで、日本のマーケティングを仕切る立場として順風満帆なスタートを切ったかに見えた筆者ですが、1ヵ月後、それは早々と覆されました。

 真夜中に突然携帯にかかってくる副社長からのコール。半分寝ぼけた状態で電話に出ると、衝撃的な話が飛び込んできました。

「まだ入社してもらったばかりで申し訳ないが、実は、俺は今日付けで会社をやめることになった。自分の後任はまだ決まってはいないが、当面はアジア太平洋地域の本部長と協力してビジネスを進めていってほしい。短い間だったが、君の仕事には本当に感謝している。ありがとう」

 その後、彼とはまったく連絡がつかなくなりました。そして数ヵ月後、IT企業に戻ったことが判明。どうやらマーケティング方針の違いで社長と意見が対立したらしく、「これはダメだ」と愛想を尽かして前職に出戻ったようです。

 一方、転職早々に取り残された筆者は「残念だけれど、しょうがない。次のボスが来るまで頑張ろう」という程度にしか考えていなかったのですが、実はこの後、追い打ちをかけるような出来事が起こりました。

◆外資系企業で頻発する「民族大移動」

 彼が老舗メーカーをやめ、前職のIT企業に戻って1ヵ月ほど経ったある日のこと。アジア太平洋地域を任されている本部長から電話がかかってきました。おそらく察しのいい方はこの時点で想像がつくでしょうが、彼もまた会社をやめるとのこと。

「お前はこれまで本当によくやってきてくれた。おかげで日本の数字も上向いてきたし、俺が担当しているアジア太平洋地域全体の数字も良くなっている。ありがとう。そんな中、非常に残念な話をしなくてはならないのだが、俺は今日付けで会社をやめることになった」

「え、やめるって、まさか副社長と同じく前職に戻るんですか?」

「あぁ、そうだ。またボスが呼んでくれることになったので、ここをやめて、ボスの元に戻ることにした。思ったよりも早く戻れて嬉しいよ」

 そう言うと、本部長もあっさり会社をやめてしまったのです。外資系企業、特にアメリカ企業のマーケティング部門のトップの任期は、平均して2年未満だと言われています。それだけ移り変わりが激しいのですが、その分、早く結果を出さなくてはならないため、転職の際に前職の部下を引き連れていく、いわば民族大移動のような状況がしばしば起こります。思えば副社長も同様で、老舗メーカーに転職してきた時も、そして再びIT企業に出戻った時も、頼れる部下として常に本部長を一緒に転職させてきたのです。

 結局その後、その老舗メーカーでは副社長も本部長も社長のお気に入りの保守的な人間に戻ってしまい、マーケティングの方針がガラリと変わってしまいました。上司が一気に変わり、方針も激変したことで、筆者も「合わないな」と感じ、その後すぐ別な会社へと転職することになりました。

 このように、トップの転職で部門全体があっという間にひっくり返るのが外資系企業の特徴です。

 筆者もこの体験を機に、社内における上司の立場や転職の可能性といった情報にアンテナを張り巡らせるようになりました。そうやって常に準備をしておかないと、自分がとばっちりを食らうことになる。それが生き馬の目を抜く外資系でのサバイバル術なのです。

【遠藤大輔】
カラオケボックスの店員からIT業界に転身し、外資系企業を渡り歩いてはや四半世紀のアラフィフビジネスマン。特技は新しい転職先と安くて美味い呑み屋を見つけること。最近、薄毛と痛風の発作に悩まされている

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