CoCo壱番屋がインド進出、カレーの本場で成功できるか? アジアでの意外なブランド力

日刊SPA! / 2019年7月9日 15時50分

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海外では、日本のチェーン店に富裕層が高級車で乗り付けることも…

 CoCo壱番屋(通称ココイチ)。腹を空かせた労働者にとっては、気軽に足を運べて非常にありがたい飲食店である。1kgのカレーを胃袋に流し込む。もちろん、量を少なくする代わりに多種多様なトッピングを楽しむという方向性でも十分に楽しめる。価格も手頃で、ココイチはいろいろと融通の利く店でもある。そんなココイチが、カレーの“本場”インドに進出することが発表された。

◆日本の「亜流」が「本場」インドで受け入れられるのか?

 CoCo壱番屋を展開する壱番屋は、三井物産のグループ企業とインドで合同出資会社を設立した。これを足掛かりにし、2020年をめどにニューデリー周辺に1号店を設け、5年間で10店出店を目指すという。また、担当者は「日本式のカレーは本場でも必ず受け入れられる。商機は十分にある」と語っているそうだ。

 それにしても、インドである。インドは言わずと知れた「カレーの故郷」であり、本場の国。そのような地域に、あくまでも亜流に過ぎない日本のカレーが受け入れられるのか? その点を懸念する声が、ネット上でも相次いでいる。

 だが実は、日本のカレーは国際的には「和食」と見なされ、インドの「Curry」とはまた別のものだ。「日本のカレーは亜流に過ぎない」と先述したが、それでも料理は地域毎の独自進化を遂げる。日本式カレー特有の粘性に富んだルーは、インドではまず見かけることはない。「カレー」と「Curry」はまったく異なる料理なのだ。

◆海外でココイチは大衆店ではなく、ブランドレストラン

 また、日本発の飲食チェーン店は国外では「ブランドレストラン」と見なされている事情も説明しなければならない。

 こんな話がある。ある旅客機内で、キャビンアテンダントがミスをして日本人乗客の服をジュースで汚してしまった。平謝りのキャビンアテンダントに対して乗客が「いえ、気にしないでください。どうせこの服はユニクロですから」と答えた。するとキャビンアテンダントは、ますます恐縮してしまったという。なぜか?

 ユニクロも立派な服飾ブランドだからだ。それと同じ現象が、飲食業界にもある。

 ここでは、インドネシアに既に進出したCoCo壱番屋について説明しよう。筆者はインドネシアに住んでいた時期がある。首都ジャカルタの中心部にある高級ショッピングモール『グランド・インドネシア』の3A階は様々な外資系飲食店が集合しているフロアだが、その一角にCoCo壱番屋の店舗もある。

 この店舗が最も繁盛するのは、やはり土日祝日である。大きな買い物を済ませたファミリー客が、腹ごしらえのためにココイチを利用する。ここで注目すべきは、彼らの殆どはミドルクラス以上の経済階層に属する市民であるという点だ。

 日本では庶民的なイメージのココイチだが、東南アジア各国では決してそうではない。現地の庶民はショッピングモールではなく、その外にある屋台で食事を済ませる。メイドを連れた富裕層の家族がココイチでカレーを食べる、という光景にも頻繁に出くわす。

◆吉野家は「ミドルクラス」の飲食店

 「日本の常識、世界の非常識」という言葉があるが、それは往々にして両国間市民の「意識の違い」に由来するものだ。

 たとえば、日本では「大衆的な牛丼屋」として知られている吉野家もインドに進出しているが、現地の店舗は宗教上の禁忌の問題で牛肉を出すことができない。だから「吉野家」ではなく「IPPON」という店名で営業している。

 しかしそれ以上に重要なのは、外資系飲食店は「大衆的」どころか、ある程度豊かな人々が利用する店であるという事実だ。ASEAN諸国でも、それは変わらない。経済階層を単純にアッパー、アッパーミドル、ミドル、ロウアーミドル、ワーキングと分けるのは簡単だが、新興国ではロウアーミドルとワーキングの間に絶大な差がある。もちろん、数が多いのはワーキングクラスだ。

 日本の飲食チェーン店が想定する客層は、もちろんミドルクラス以上の人々である。国民平均よりも豊かな彼らにリーチさえできれば、採算は確保できる。巷の屋台や食堂で出される「本場のCurry」と競争する必要は一切ない。以上の理由で、CoCo壱番屋がインドで成功を収める可能性は十分にあると分析できる。<取材・文/澤田真一>

【澤田真一】
ノンフィクション作家、Webライター。1984年10月11日生。東南アジア経済情報、最新テクノロジー、ガジェット関連記事を各メディアで執筆。ブログ『たまには澤田もエンターテイナー』

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