「NHKから国民を守る党」の国政進出でNHKバッシングが始まるか

日刊SPA! / 2019年7月30日 9時50分

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「NHKをぶっ壊す!」

 7月21日投開票の参院選で、元NHK職員の立花孝志氏が代表を務める「NHKから国民を守る党」(以降、N国)が、悲願の比例1議席をもぎ取った。N国は37人の候補者を立てた選挙区でも、総得票数の3.02%を獲得。公職選挙法に規定されている「2%以上」という政党要件もクリアしたため、今後、5900万円の政党交付金を受け取る見通しだ。

 選挙後、立花代表は改めて自身が“最終目標”として掲げる「(受信料契約した者だけがNHKを視聴できる)放送のスクランブル化」の実現を訴えたが、N国は4月に行われた統一地方選でも、首都圏や関西のベッドタウンを中心に47人の候補者を擁立。うち26人を当選させるなど、ワンフレーズ・ポリティクスの手法を最大限に駆使して、党勢を急拡大させることに成功している。

「なぜNHKをぶっ壊さないといけないのか? NHKの男女のアナウンサーが、不倫路上カーセックスしたのに、その事実を隠蔽しているからです。不倫ですよ。路上ですよ。カーセックスですよ。許せますか?」

 選挙期間中、立花代表がNHKの政見放送でこう繰り返し連呼していたように、N国の過激でエキセントリックな活動には今も批判の声は多いが、なぜ、何の後ろ盾もなかった一介のポピュリズム政党が、ここまで支持を広げることができたのか? 『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で開高健ノンフィクション賞を受賞したフリーランスライターの畠山理仁氏が話す。

「2013年に立花代表がたった一人でN国を結党した当初から、彼は『2019年の参院選で1議席を取ることが目標』と公言しており、6年前から周到に準備してきた結果、今回の議席獲得に繋がった。現行の選挙制度では、既存の巨大政党の後ろ盾もなく、選挙の“3ばん”といわれる『地盤(後援組織)・看板(知名度)・鞄(資金)』を持たない候補が当選するのは至難の業です。

 だから、彼は長いスパンで選挙日程を逆算し、初めて打って出た摂津市議選で落選したのを皮切りに、町田市議選(落選)、船橋市議選(当選)、東京都知事選(落選)、葛飾区議選(当選)に出て、NHKに異を唱える政治団体が存在することを少しずつ世に知らしめてきた。

『不倫、路上、カーセックス』のような過激な発言も、『悪名は無名に勝る』という考えの下、確信犯的に行っており、これまでの選挙の常識を超えた緻密な選挙戦略を立て今の躍進に至ったと言っていい」

◆「イラネッチケー」裁判、ワンセグ裁判など司法の戦いでは連戦連敗

 立花氏は、国政を通じた活動で「スクランブル化」が実現した暁には、同党を「解党」し、自身も議員辞職すると明言している。だが、ここに至るまで、彼が長く険しいイバラの道を歩んできたのも事実と言えよう。

 立花代表はこれまで、NHKを向こうに回し受信料を巡る訴訟をいくつも起こし、そのすべてで敗訴しているからだ。2015年に、立花氏が受信料の支払い義務がないことを確認するために起こした裁判で争点となったNHK帯域除去フィルター「イラネッチケー」の開発者である筑波大学准教授の掛谷英紀氏が話す。

「そもそもイラネッチケーをつくったのも、当時、自分の研究室にいた日本語の不自由な留学生が不利な契約を結ばされたり、『取れるところから取れ』という指示の下、高齢者など弱い者を狙い撃ちにするなど、NHKの悪質な営業は看過できないと思ったからです。

 2013年には『従軍慰安婦問題』を巡ってリベラルと保守の議員が正反対の立場から質問をした動画がユーチューブに違法アップロードされたが、その際、NHKは保守系議員の発言だけ削除要請しています。

 これは政治的公平性を定めた放送法第4条に背くもので、公共放送として明らかに逸脱した行為。1100万円超と高額な平均給与や年600万円にもなる手当や福利厚生、傘下に多数のグループ企業を抱える拡大路線などNHKには問題が山ほどあるが、公共放送にもかかわらず公共性を担保する仕組みがないことがすべての元凶です」

 NHKの予算は国会の承認が必要なため、ハンドリングは効くという見方もある。だが、掛谷氏は「権力や政治家が報道内容に注文をつければ、報道圧力と批判されかねないので、実質、手を出すことはできない。経営委員や理事を公選制にするような仕組みがなければ変わらないでしょう」とも話す。

◆「東横イン」への受信料支払い命令判決が確定

 N国が参院選で1議席獲得した勢いに加え、24日には奇しくも、長らくNHKと争っていた東横インに対して受信料19億3500万円の支払いを命じる最高裁判決が出された。空室で稼働していない客室のすべてに受信料を課すことができるというNHKの主張が全面的に認められたことで、ネットを中心に“反NHK”の機運が一気に盛り上がってきたのだ。掛谷氏が続ける。

「5月に放送法が改正され、NHKは放送だけでなく通信も可能になり、早晩、番組がネット配信されることになります。これに合わせて現在、総務省がパブリックコメントを募集しているが、すでにネット上ではこれを阻止しようとする動きが大きくなっている。

 というのも、NHKが、テレビを持っていない若者層をターゲットにして、スマホはもちろん、ネットに接続できるすべての人から受信料を徴収しようとしているのが透けて見えるからです。ネットに接続できる人とは、ほぼ全国民が対象ということにほかなりません」

◆丸山穂高衆院議員の入党、渡辺喜美参院議員との共闘

 立花代表も早々に動き始めた。25日には、北方領土を巡る「戦争発言」で日本維新の党を除名された無所属の丸山穂高衆院議員に入党を要請。これに対し、丸山議員は自身のツイッターに「NHKに不満よな。丸山、動きます」と投稿。29日になって、N国入りを了承した。

 立花代表は丸山衆院議員のほかにも、先ごろ、秘書に対する暴力やパワハラ発言で所属する自民党から重い処分を受ける見通しの石崎徹衆院議員ら11人の国会議員にも声をかけている。30日には、「みんなの党」を旗揚げしたものの、いわゆる「8億円借入問題」で代表を辞任し、現在は無所属となっている渡辺喜美参議院議員とも会談を予定しており、新たな会派の結成も含めて共闘する見通しだ。畠山氏が話す。

「すでにN国は2%以上の支持を得たことで国政政党としての要件を満たしてるが、テレビに出演するには、慣例的に5人以上の国会議員を獲得する必要があり、立花代表が丸山議員に秋波を送っていたのはそのためです。立花代表が当選した直後、私がNHKの『日曜討論』で『NHKをぶっ壊す!』と叫ぶつもりか? と問うと、そのときは『場の空気を呼んで判断する』と話していました。

 本人曰く『今後はスクランブル化実現のために真面目にやっていく』そうだが、N国が1議席を獲得したことをきっかけに“反NHK”という世論が異様な盛り上がりを見せていることからもわかるように、与野党問わずほかの既存政党もN国人気にあやかろうと同調する可能性は十分ある。いずれの政党も、スクランブル化を政策に採り入れるハードルはそう高くないですから……」

 バッシングの声が今以上に高まったら、NHKはどう対抗していくのか。

取材・文/週刊SPA!編集部
※週刊SPA!7月30日発売号「今週の顔」より

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