日本の精進料理が、世界のベジタリアンとヴィーガンにぴったり/鴻上尚史

日刊SPA! / 2019年9月7日 15時54分

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― 連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史> ―

◆「クール」でニーズが高い精進料理のこと

 NHK BS1で『cool japan』という番組を始めて、もう14年になります。

 スタートした当初は、「クール・ジャパン」なんて言葉は全然ポピュラーではありませんでした。それが、経済産業省が2010年に「クール・ジャパン室」を設置してから、「官製の日本バンザイ番組」だと、言う人が出てきました。

 そう言う人は、間違いなく、番組をちゃんと見てくれてない人で、僕もスタッフも、番組では「クールな日本」と「ノット・クールな日本」を常に同時に取り上げています。

 日本人であることだけが唯一の自慢である「日本人アイデンティティ主義者」(©橘玲氏)は、とても愚かで恥ずかしいと思っているのです。

 さて、14年もやっていると海外の番組のファンというのも増えてきて、(世界で100以上の国や地域で放送されています)一緒に司会をしているリサ・ステッグマイヤー個人のFacebookに「精進料理を取り上げて欲しい」というメッセージが来ました。

 今、世界では猛烈な勢いで「ベジタリアン」と「ヴィーガン」が増えています。「ベジタリアン」は肉と魚を、「ヴィーガン」は、肉・魚に加えて、乳製品や玉子、蜂蜜など、「動物由来のもの」を食べない人達です。

 健康と地球環境のためという二つの理由が大きいのですが、彼らが日本に来て、「食べるものに困る」という状態になっているのです。

 欧米だと、「ベジタリアン・フード」とか「ヴィーガン・レストラン」がそれなりにあるのです。

 ところが、「精進料理」はヴィーガンもヴィーガン、こんなぴったりのものがあるじゃないか、どうして特集してくれないのか、と海外の視聴者はメッセージを送ってきたのです。

 番組では「精進料理」は、「Buddhist Cuisine」と訳しました。「仏教徒の食べ物」ですね。東京にある「精進料理を出すカフェ」と「高級精進料理のフルコースレストラン」を紹介しました。どちらも、外国人のお客さんで一杯でした。

◆精進料理の「ノット・クール」は?

「大豆を使って、本物の肉のようにしたハンバーガー」なんてのが欧米では定番ですが、精進料理も、いろんな材料を使って「もどき料理」を創る伝統があります。お肉や蒲焼やカツオのたたきに見せる料理です。

 これに外国人が魅了されました。バラエティーに富んでいて、なおかつ「ヴィーガン」用というのは奇跡だと感じるのです。

 話はちょっと変わるのですが、おいら、思い立って、一週間、夕食だけ「炭水化物を抜く」ということをしました。結果、2キロ、するっと痩せました。すごいなあ、じゃあ、続けようかなと思ったのですが、じつは、炭水化物を抜いた食事のバラエティーというのは本当に少なく、すぐに飽きてしまうのです。

 定食屋で「レバニラ炒め」だけ単品で頼んでも、ごはんと一緒に食べる味付けなのでとても濃いとか、コンビニのチキンは毎日は食えないとか、バナナも糖質だから避けた方がいいとか、です。

 なので、「ヴィーガン」の人が日本に来て「食べられるものを探して」苦労する気持ちは想像つくのです。「じゃあ、精進料理は世界ではラーメンや寿司以上の需要があるかも!」とスタジオの外国人達に言うと「そう思うけれど、精進料理を創るのは技術がいる。ラーメン職人や寿司職人ほどそれは一般化してない」と残念な表情で言いました。

 たしかに、ちょっと修行して「なんちゃってラーメン」「なんちゃってお寿司」を売っているお店は海外にありますが、「なんちゃって精進料理」は無理だろうなあと思います。

「ヴィーガン」の人に「これ、じつはかつおダシ入ってます」とか言うのはシャレになりませんからね。

 というわけで、もし、海外で一旗あげたいと思っている人がいたら、これからは「精進料理」の腕をつけることがラーメンより寿司より確実だと思います。その時は、「SHOJIN Cuisine」と名乗るか「Japanese Vegan Cuisine」ですね。

 ちなみに、「精進料理」の「ノット・クール」は、一番は「量が少なすぎる」でした。身近で食べられないことが、二番目の「ノット・クール」。コンゴから来た男性は「肉が入ってないこと」と言ってました。

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