鴻上尚史、秋の新作舞台は住民の苦情に悩む地球防衛軍のお話

日刊SPA! / 2019年9月14日 15時50分

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― 連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史> ―

◆秋の新作舞台は住民の苦情に悩む地球防衛軍のお話

 秋に上演する芝居の台本をしこしこと書いております。

『地球防衛軍 苦情処理係』というタイトルです。

 もともと、このタイトルは日本テレビのディレクター久保田充氏から「鴻上さん。こんなタイトルで、こんな粗筋の物語考えたんですけど、シナリオ、書いてくれませんか?」と数年前に言われたのが始まりです。

 タイトルに惹かれて「面白いなあ。書くよ、書くよ。で、どんな粗筋だい?」と、相談は進んだんですが、企画として上層部に通らず、残念なことにポシャリました。

 でも、僕の頭には『地球防衛軍 苦情処理係』というタイトルはしっかりと残りました。

 で、とうとう、久保田氏に「物語は、おいらのオリジナルでまったく粗筋とは違うんだけど、このタイトル、使わせてくれないかなあ」と頼みました。

 久保田氏は「もちろん、好きなように作って下さい。あ、でも、芝居が当たって、小説とかも鴻上さんが書いて、これも当たって、マンガとかも出て、とうとう映像化するって時には、僕がディレクターですからね。それだけが条件」と言われました。

 久保田氏は彼が早稲田の学生時代、僕が作・演出をしていた「第三舞台」のスタッフでした。演出部という部署で、あれやこれやと、いろんな作業をするパートです。

 ある日、「鴻上さん、相談があります」と深刻な顔で来て、「どうしたの?」と聞くと「じつは、就職試験でNHKに受かったんですが、『第三舞台』のスタッフを続けるか、NHKに行くか、迷ってるんです」なんて言うのです。

 僕はすぐに「アホか。NHK、行け! うんと出世して、ドラマ創る時に、『第三舞台』の俳優を使ってくれ」と言いました。

 その後、日本テレビのディレクター募集で中途採用され、僕は二本、彼の演出するドラマのシナリオを書きました。

◆宇宙からヒーローが登場して被害拡大!?

 そんな縁あるディレクターが考えたタイトルです。圧倒的にイマジネーションを刺激されます。あっという間に、僕なりのオリジナル・ストーリーが浮かびました。

 クレーマーの時代になりましたからね。それと、SNSで「正義の言葉」を語る人間が増えました。

「未成年なのに飲酒している」とか「路上ライブは道路交通法違反だ」とか、誰も否定できない「正義の言葉」を語ることで、「俺、偉いだろう」と自己主張する人達ですね。

 アメリカでは、こういう人達のことを「ソーシャル・ジャスティス・ウォーリアー(社会正義戦士)」と呼んでいると知りました。もちろん、バカにしたニュアンスが入ってるんですが。

 で、地球に怪獣が現れて、地球防衛軍が戦う時代になったとしましょうや。

 苦情処理係に電話が入ります。

「怪獣に踏みつぶされたんなら、納得するよ。でも、俺の家は、地球防衛軍のミサイルで壊されたんだぞ。それはおかしいだろ!」とか「怪獣の被害に火災保険がおりないってのはどういうことだ!」なんて言われるのです。

 怪獣は、地震と同じ天災扱いなので、火災保険は免責事項なのです。地震特約のように、怪獣特約を結んでないと、なんともしようがないのですが、抗議する人は納得しないのです。

 で、ある日、ハイパーマンと呼ばれる「一見、ヒーローっぽい」やつが現れて、怪獣と戦い始めます。

 ところが、今までは、地球防衛軍の航空隊が撃つミサイルが二次被害の限界でしたが、ハイパーマンは、怪獣を振り回したり、キックして倒したりするもんだから、被害がどんどん増えてしまうのです。新宿の高層ビルなんか、ガンガン倒れてしまうのです。

 人々は、「ハイパーマンはなにしてんだ!?」と怒ります。M66星から「宇宙平和維持軍」の正義の使者としてやってきたハイパーマンは苦悩するのです。

 これが物語の始まりです。

 公演は、11月2日から新宿・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(長い!)。大阪公演もあります。

 9月7日、チケット発売! ネットでググったら買えます。どうだ、見たくならないか? 面白いぞお!

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