ドラッグストア業界の裏側。マツキヨ合併、生き残れるのは3~4社か

日刊SPA! / 2019年9月18日 8時52分

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 マツモトキヨシとココカラファインの経営統合を巡って、ドラッグストア業界は激動の時代を迎えようとしている。仮に実現すれば、業界全体にどのような影響が生じるのだろうか。

◆マツキヨとココカラファインが合併して再編が加速中

 先月22日、ドラッグストア大手のマツモトキヨシHDとココカラファインの両首脳が都内で記者会見を開き、経営統合に向けて交渉入りしたことを発表した。’20年1月末を目処に統合交渉の結論を出す予定となっており、業界4位のマツキヨHDと同7位のココカラファインの統合がもし実現すれば、業界トップに躍り出ることになる。

 ドラッグストアや調剤薬局のM&Aに詳しいMACアドバイザリー代表の花木聡氏は、両社の今回の動きをこう解説する。

「ドラッグストア業界は、市場のほぼ9割が上位20社で占められる寡占状態にあります。ここ数年、業界大手同士のM&Aがなかったため、今回マツキヨとココカラが手を組もうとしているのは業界内でも大ニュース。この統合がきっかけで、さらなる業界再編が起こり、将来的には3~4社に絞られる可能性も秘めています」

 ’19年3月期のマツキヨHDの売上高は5759億円、店舗数は1654店舗。一方、ココカラファインの’19年3月期の売上高は4005億円、店舗数は1354店舗。この2社がタッグを組めば約1兆円規模の企業が誕生することになり、全国に約3000店舗を抱えるメガドラッグストアチェーンが出現するインパクトは、業界的に極めて大きいのだ。

 ただし、ここに至るまでには、紆余曲折があった。4月26日、マツキヨHDとココカラファインは、資本業務提携に向けて検討および協議を開始すると発表。しかし、約1か月後の6月1日には、業界6位のスギHDがこの両社の間に割って入った。マツキヨHDよりさらに踏み込む形で、ココカラファインとの経営統合に向けた協議に入っていることを公表したのだ。

 もちろん、スギHDの動きを受けたマツキヨHDも黙ってはいない。6月5日、ココカラファインと経営統合に関する話し合いを進めると発表し、“ココカラ争奪戦”に不退転の決意を表明。そしてようやく今月、冒頭の会見にこぎ着けたというわけだ。

 両社から求愛された形のココカラファインはスギHDではなく、マツキヨHDと手を組んだ。その決め手を、花木氏はこう分析する。

「マツキヨの強さは、医薬品、化粧品、食品など多岐にわたるプライベートブランド(PB)商品。全体売り上げの10%を占めている強い武器がココカラでも出せるとなると、かなりのシナジーが期待できると踏んだのでしょう。また、関東・中部・関西のみに出店しているスギと違い、ココカラとマツキヨはお互い数々のM&Aを繰り返して全国展開してきた経緯もあり、出店戦略が似ていることで物流の効率化や統廃合などによる相乗効果もかなり大きかったと考えられます」

 だがここで疑問が浮かぶ。ドラッグストア業界4位と7位の会社が、再編に向けて躍起になったのはなぜなのか。彼らの背中を押したのは特殊な利益構造と薬価の引き下げにあった。

◆コンビニ業界をしのぐ経済規模が誕生

 ここ数年、ドラッグストア業界は着実に市場規模を拡大し続けている。今年3月、日本チェーンドラッグストア協会が発表した’18年度版「日本のドラッグストア実態調査」によると、全国総売上高は前年比6.2%増の7兆2744億円となり、’17年度の5.5%増を上回る高い伸びを見せている。好調の要因を、経済評論家の加谷珪一氏に聞いた。

「近年、ドラッグストア業界の売上高が着実に伸びている背景には、その特殊な利益構造があります。大手ドラッグストアの多くは、調剤薬局をベースに成長してきたので、利益率の高い医薬品を扱えます。その医薬品から得た利益を飲食料品の安値販売に回すことで規模の拡大を図っているわけです」

 たしかに、ドラッグストアの店頭を覗けば一目瞭然。看板の医薬品に加えて化粧品や日用雑貨、酒、ジュース、菓子、おにぎり、パン、冷凍食品など、豊富な品揃えだ。しかも加谷氏によると、ドラッグストアの商品原価率(※医薬品と食品などを含む全体の数値)は、大型スーパーに匹敵する水準なのだとか。

「アクセスや営業時間などの点で多少不便でも、商品の値段を安くしてお客を呼ぶのがスーパーのスタイル。コンビニは、立地もいいしサービスもいいが、値段はほぼ定価。その両者の戦いは、これまではコンビニ優勢で進んできましたが、価格を気にする消費者が今後増えるにつれ、ドラッグストアに安値競争を仕掛けられるとコンビニは苦しい」

 スーパーの市場規模は13兆円、コンビニは10兆円だ。ここからマーケットを奪うことで、ドラッグストア業界には成長余力が十分にあると加谷氏は指摘する。ただし、それも業界各社が戦う土俵に上がれれば……の話だ。

「現状、ドラッグストア業界は、売上高トップのツルハHDでさえ、7716億円。その他の競合他社も4000億~7000億円ぐらいの規模の企業ばかりなので、このままだとコンビニやスーパーなどの巨大企業と戦うには限界があります。売上高が数千億円の企業と1兆円の企業とでは、仕入れ交渉の際のメーカーの態度が百八十度変わりますからね」

 また、こうした競合との関係性に加えて、毎年の医療費が40兆円を超える日本の危機的な医療保険財政も、ドラッグストア業界の再編を促しているという。

「今後、薬価や調剤報酬の引き下げは不可避の状況となっています。今は医薬品の収益を使って飲食料品を安く販売できていますが、それも向こう4~5年で正念場を迎えるでしょう。つまり、ドラッグストア各社は、なるべく早いうちにM&Aで規模を拡大して商品調達力を高め、安値販売を維持できる態勢を築いておく必要があるのです」

 銀行や自動車業界のように、いずれドラッグストア業界も3~4社に収斂していくだろうというのが、加谷氏の見立てだ。

「日本の消費者はポイントカードをとても好みますが、今後のドラッグストア業界では、激しいポイント還元競争が起きるはず。メーカーとの関係強化を通じて、新しいプライベートブランド(PB)商品の投入も盛んになるでしょう。懸念される点としては、仮に生鮮食品を扱い始めた場合の品質管理や、処方箋の不正防止への対策が大切です」

 ドラッグストア戦国時代に、消費者も賢く立ち回ろうではないか。

◆巨大チェーン誕生を製薬会社は危惧!?

 これからさらに成長が見込まれるドラッグストア業界。しかし、経営統合を進めて規模の拡大を追い求めるあまり、ずさんな商品管理が露呈する可能性もあるという。製薬会社の営業マンは、その裏側をこう語る。

「大手のドラッグストアは、安く調達するために、一般の食料品や市販薬と同じく、調剤薬品も本部が一括仕入れして各店舗に配送しています。しかしそうなると、メーカーとしては、どの店舗に、どの薬が、どれだけ納品されているのかわからないんですよ」

 市販薬と比較して効き目の強い調剤薬品には、副作用があるものや、服用方法が複雑なものが多い。トラブルが起こるリスクは常につきまとうため、製薬会社としては各店舗の在庫状況を細かく把握して、いざというときに備えたいのだという。

「極端な話、例えばかつて乱用が問題になったリタリン。特定の店舗で異常な量が売れていることを把握できれば、メーカーとしては乱用目的での不正販売を疑って対策を打てます。しかし、大規模ドラッグストアでは、問題の発覚が遅れて、そのまま販売し続けることが十分あり得るわけですよ」

 製薬会社の懸念が、杞憂に終わればいいのだが……。

取材・文/福田晃広 野中ツトム(清談社)

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