メガドライブは、なぜ北米で天下を取れた?なぜ『テトリス』を任天堂に奪われた?

日刊SPA! / 2019年9月22日 8時30分

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『セガ vs. 任天堂――ゲームの未来を変えた覇権戦争(上)』

―[絶対夢中★ゲーム&アプリ週報]―

 9月19日にミニ化復刻ハード「メガドライブミニ」が発売されました。40本+2本(当時未発売だった幻のタイトル)収録で、価格は6980円(税別)。懐かしさで即予約して、すでに入手したという人も多いでしょう。

 もともとメガドライブは1988年に発売された16ビット機。日本ではスーパーファミコンの後塵を拝しましたが、北米市場ではシェアトップを取ったこともある名ハードです。今回は読書の秋ということで、メガドライブに関連した2冊のノンフィクションを紹介します。

 メガドライブ(ジェネシス)がいかにして王者・任天堂のスーファミ(SNES)に北米市場で勝ったのか? 発売予定だった『テトリス』メガドライブ版はなぜ幻となり、任天堂が家庭用版の販売権を獲得できたのか? メガドライブの光と闇がこの2冊から見えてきます。

 ちなみにメガドライブミニには、当時世に出ることがなかったメガドライブ版『テトリス』が幻の1本として収録されています。これにグッと来たメガドライバーもいたのでは?

◆『セガ vs. 任天堂――ゲームの未来を変えた覇権戦争(上・下)』ブレイク・J・ハリス 仲達志・訳 早川書房

 1冊目は、ニューヨーク在住の作家・映像ディレクターによるノンフィクション『セガ vs. 任天堂』。大手玩具会社マテルで若くしてCEOの座についたものの、社内政治に巻き込まれて失脚したトム・カリンスキーを軸に、北米市場でのセガの躍進と失速を描いています。

 1990年、職を失ったショックを癒すためマウイ島に滞在していたカリンスキー。彼の前に、「風に吹かれてぼさぼさになったバーコード頭」をした鋭い眼光の日本人男性、セガ・エンタープライゼスの社長・中山隼雄が突如現れます。「やあ、トム。君の居場所を突き止めるのは大変だったよ」。旧知の中山に推され、セガ・オブ・アメリカの社長兼CEOに就任したカリンスキーは、多くの奇策を繰り出し、任天堂の牙城を崩していく……。

 映画を思わせるドラマチックな展開で進むメガドライブのサクセスストーリー。大盤振る舞いのソフト無料キャンペーン、任天堂を狙い撃ちした過激な比較広告、秘密兵器『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』の投入……。登場人物はいずれも強烈な個性の持ち主で、ゲーム業界に詳しくなくても、企業もの小説として楽しめること請け合いです。

◆『テトリス・エフェクト 世界を惑わせたゲーム』ダン・アッカーマン 小林啓倫・訳 白揚社

 もう1冊は、セガのアーケード版『テトリス』のメガドライブ移植が差し止められ、任天堂のゲームボーイ版『テトリス』が発売されるに至った裏側を、ブルックリン在住のニュースサイト編集者が任天堂側の視点から克明に描いたノンフィクション。

 1989年2月、日本で小さなゲームソフト会社を経営していたアメリカ人のヘンク・ロジャース。彼は任天堂の密命を受けてモスクワの空港に降り立ちます。その目的は、西側諸国から来た2人のライバルを出し抜いてソ連政府の秘密組織と直接交渉し、携帯ゲーム機版『テトリス』の権利を得ること。ロジャースはひとまずモスクワで情報収集を始めます……。

 任天堂と、セガが間接的にライセンスを受けていた海千山千の代理人との駆け引き。鉄のカーテンの向こう側から、ソ連発の至宝『テトリス』が西側にもたらされるまでの経緯はまさにスパイ小説のようにスリリングです。

 結果、1989年6月に発売されたゲームボーイ版『テトリス』は大ヒットし、『テトリス』は社会現象にもなりました。もし順当にメガドライブで『テトリス』が発売されていたら、日本でもメガドライブが天下を取っていたかもしれない……。そんな声が今でもささやかれています。

 1983年にファミコンが発売されてから36年。歴史としては短いですが、それでもゲーム史に多くの分岐点があったことがうかがえる2冊。読書の秋にいかがでしょうか。

【卯月鮎】
ゲーム雑誌・アニメ雑誌の編集を経て独立。ゲームの紹介やコラム、書評を中心にフリーで活動している。著作には『はじめてのファミコン~なつかしゲーム子ども実験室~』(マイクロマガジン社)がある。ウェブサイト「ディファレンス エンジン」

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