ヤマザキショップ、自由すぎるコンビニの謎。GWに9連休、店内でDJイベントや結婚式も…

日刊SPA! / 2019年9月26日 8時51分

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ヤマザキショップ(通称Yショップ)は自由すぎる!?

 コンビニの労働問題が叫ばれるなか、注目したいのがヤマザキショップだ。マイナーコンビニながら業界の常識を覆す自由なスタイルがそこにはあった。

◆過重労働とは無縁のコンビニ業界のユートピア

 利便性を追求してきたコンビニ業界がいま岐路に立たされている。現場の疲弊は限界に達し、24時間営業や食品の廃棄ロス、本部に納める高額なロイヤリティ(利用料)などの条件に疑問を呈する声が続出。そんな中、例外的なコンビニがあった。流通アナリストの渡辺広明氏は語る。

「コンビニ業界の労働問題を既にクリアできているのが、ヤマザキショップです」

 ヤマザキショップ(通称Yショップ)とは、山崎製パンとの契約によるコンビニ機能を持った小売店。母体は同じだがデイリーヤマザキとは別物で、自由な経営ができることが特徴だ。

 営業時間は24時間でなくてもOK。原則14時間以上が条件だが、立地や営業形態によってオーナーの裁量で設定できる。

 また、定休日の設定や臨時休業も可能。労働時間だけでなく運営費の負担も軽く、月3万円のみでロイヤリティはゼロ。買い取りでヤマザキの商品を売れば独自の商品の仕入れも行える。

 なぜこれほど自由なのか。渡辺氏はその理由として「ヤマザキショップの母体はメーカー(山崎製パン)なので、商品を店が買い取ってくれればその時点で収益になります。それにヤマザキの商品と一緒に問屋の商品も同じトラックで配送できるので効率的です」と解説する。

 また「ヤマザキショップが実質ボランタリーチェーンであること」も指摘。

「フランチャイズは本部が一括して経営していますが、ボランタリーチェーンは共同の仕入れを目的として独立した小売店が組織化した形をいいます。仕入れのシステムを利用するという関係性なので、条件がゆるやかで店舗の自主性を保つことができるのです」

<ヤマザキショップの契約>
・ロイヤリティゼロ
・運営費月3万円のみ
・24時間営業でなくてもOK
・定休日臨時休業あり
・独自の商売が可能
――粗利分配方式のロイヤリティ制度ではなく固定運営費を採用。店主が頑張った分だけ利益に繫がる ※固定費は店舗によって異なる場合あり

◆結婚式にDJイベント…自由すぎる経営が魅力

 全国の中でものびのびと経営しているのが長野県大町市にあるYショップニシだ。

 25年前に田んぼの土地を利用して開業。店主の舘友希江さんは「大手も考えたけど24時間営業はキツいから」と当時を振り返る。

 やりたいことはなんでもやってみようと、コンビニ商品のほかに長野県名物のおやきを販売。オープンして1年後には立ち食いそばも始めた。店内にギャラリースペースを設けたり、イベントも多数開催したり、アルバイトの希望で結婚式まで行った。ヤマザキショップ愛が高じてオリジナルグッズも販売している。

「本部の人が毎月お店に来るけど、何か言われたことはないです。お客さんには『コンビニなのに』というギャップで面白がってもらっています。大手に比べれば儲かっているわけではないけど、とにかく楽しいです」(舘さん)

 自由なスタイルは商売の幅も広げる。東京都中央区のYショップ上総屋は、もともとは3代続く酒屋だが、別名「レコードコンビニ」と名づけられている。

 店主の趣味で中古レコードを店内に飾っていたことから販売を始め、現在店の売り上げの3割を占める。GWには9連休してロンドンへ買い付けに行くなど、専門店顔負けの品揃えを実現。定期開催している店内でのDJイベントは150人も集客し、商品の売り上げにも繫がっている。

 店主の進藤康隆さんは「コンビニ業界ってあまりいいイメージがないと思いますし、僕自身もそう思っていました。だけどヤマザキショップなら制約もほぼなくて、何でもできることを知ってほしい」と魅力を訴える。

 ヤマザキショップに詳しいおがわしゅう氏は、そんな個性豊かなところに魅了された。

「同じ屋号なのに店舗によって陳列や品揃え、外観すらも違う。個人商店のアットホームさとコンビニの便利さが両立していて、こんなにも店のカラーが出るチェーン店はないです」

◆コンビニ業界で自分らしく生きる選択肢

 さらに、ヤマザキショップは地域密着の店づくりも強みにしている。福島県大熊町で今年6月、原発事故による避難解除後の初の商業施設としてオープンした店がヤマザキショップだ。営業時間は平日8~18時で日曜定休。役場の人を中心に重宝されている。

「条件が緩やかなので大手コンビニが進出しづらいところに出店できるのです」(渡辺氏)

 しかしながら、自由さの裏側で厳しさもある。おがわ氏は「大手コンビニと比べると、ヤマザキショップに入る客はあまりいない」と惜しみながら語る。前出の店主2人も、近所の大手コンビニのほうが客入りはいいのを目の当たりにしている。その理由を渡辺氏は次のように分析する。

「商品力と仕入れ力で大手と大きな差があります。ヤマザキのパンはとてもおいしいですが他店でも買えるし、プライベートブランドも弱いです」

 また、後継者不足などで閉店が相次ぎ、’06年には3975店あった店舗数は、’18年には2852店となり、徐々に減少している。だが、ヤマザキショップがコンビニ経営者にとって今後新しい選択肢になりうるという。

「ヤマザキショップはガツガツ働くんじゃなくて、ゆっくり商売をやるにはいいですよね。本部からの縛りがあまりないので自分らしく生きられる小売りのやり方です。これからの時代に合うスタイルといえます」(渡辺氏)

 マイナーな存在のヤマザキショップだが、意外にも次世代のコンビニの姿を秘めていた。

◆<個性的な全国のヤマザキショップ>

●立ち食いそばを併設 Yショップニシ(長野県大町市)
現店主の父親の提案により立ち食いそばを開始。店の外には「そば・うどん」ののれんがかかり、アニメ作品にも登場

●DJイベントを開催 Yショップ上総屋(東京都中央区)
レコードが飾られた店内で角打ちをするうちに客と交流が生まれ、DJイベントをすることに。現在は定期開催している

●自動車部品を販売 Yショップ埼玉自動車大学校(埼玉県北足立郡)
自動車を整備する学校の校内にあり、学生が欲しい部品をすぐ買えるように取り揃える。オイル、塗料、カーナビまである

●看板犬を飼育 Yショップ白馬ジャジャ店(長野県北安曇郡)
店内に入ると看板犬の2 匹のゴールデンレトリバーがお出迎え。スキー場が近く、外国人観光客を中心に可愛がられている

●中古車を紹介 Yショップ市川酒店(神奈川県伊勢原市)
近所の車販売店に頼まれ、店前に中古車が置いてある。店で販売はしていないが、店主曰く客寄せパンダ的な効果ありとか

●自衛隊グッズを販売 Yショップスマイル北吸係留所店(京都府舞鶴市)
自衛官向けの日用品と護衛艦見学者向けのグッズを販売。帽子などここでしか買えない商品も。一般人は平日利用不可

【渡辺広明氏】
流通アナリスト。コンビニ業界で22年働き、約700商品を開発。「FNN Live News α」「ホンマでっか!? TV」(共にフジテレビ)などに多数出演

【おがわしゅう氏】
ヤマザキショップファン。普段は新潟県の市役所職員。休日はヤマザキショップを求めて日本中を旅し、ブログ「ヤマザキショップの世界」でその記録を綴る

<取材・文・撮影/辰井裕紀 ツマミ具依>
※週刊SPA!9/24発売号より

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