「復興の力へ!」ラグビーの聖地・釜石でW杯が開催。食品の持ち込み解禁の影響は…

日刊SPA! / 2019年9月26日 15時51分

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ラグビーW杯のフィジーvsウルグアイ戦が行われた、釜石鵜住居復興スタジアム

 ラグビーワールドカップ2019日本大会は25日、岩手県釜石市の鵜住居(うのすまい)復興スタジアムで、1次リーグのフィジー(世界ランク10位)vsウルグアイ(同19位)が行われた。

 釜石市は東北で唯一の開催地に選ばれ、今大会12会場で唯一新設されたスタジアムだ。このスタジアムは’11年3月の東日本大震災の津波で全壊した釜石東中、鵜住居小の跡地に建設され、’18年7月に完成した。’11年3月の津波ではこの地区は死者・行方不明者583人という被害を出したという。

 記者も同地を訪れた。東京から盛岡まで東北新幹線で約2時間半。盛岡からローカル線のJR釜石線と三陸鉄道リアス線を乗り継いで3時間、計6時間弱という“長旅”であった。

 釜石駅に降り立つとまず目に入ったのは駅前にそびえ立つ「日本製鉄釜石製鉄所」。日本最古の製鉄所で70年代の新日鉄時代、ラグビー部は日本選手権7連覇を成し遂げた。まさにここは「ラグビーの聖地」といえる迫力だ。

 釜石駅から朝の連続テレビ小説『あまちゃん』で有名となった三陸鉄道リアス線に乗り、2駅。トンネルを抜け、鵜住居駅につくと様相が一変する。ガランとした空き地にポツポツと建物が立っており、数百メートル向こうにスタジアムが見える。かつては住宅があった場所は多くの空き地と、真新しい建物や建設中の住居があちこちにある。

 仮設スタンドを増設したスタジアムは16,334人の収容人数を誇るというが、それよりも小さく見える。本来はメインスタンドとバックスタンドしかなく、W杯のためにサイドスタンドを仮設で増設しているのだ。

 選手控室などの施設は、地元の木材を素材としたつくりになっており、スタンドの座席も木で作られている部分があり、コンクリートづくりにの巨大スタジアムと違って、温かみのあるつくりとなっている。

 スタジアムのまわりは東北6県から集ったキッチンカーが集結。華やかな屋台村を形成していた。
開幕戦などで飲食物が不足するという事態を受けて、大会の主催者は「食品の持ち込み」を解禁したが、果たして影響はあるのだろうか。

  隣町の大槌町からは「焼き牡蠣」や「マンボウの唐揚げ」(500円)、盛岡からは名物の「じゃじゃ麺」(600円)などの屋台が出店。ポテトやからあげが多い、首都圏の飲食ブースとは大違い。マンボウの唐揚げはコリコリとした食感が焼き肉のミノのよう。ビールが飲みたくなったが、取材があるので我慢。

 開幕戦の東京スタジアムで起こった顛末などを念頭に、屋台の人に飲食物持ち込みの影響を聞くと「あんまり気にしていないですね。それより、そんなに食べ物なくて大変だったんですか!?」と逆に心配されるほど。観客を見ても、持ち込みの食品を食べているのは子連れの観客で、おにぎりや、この日は暑かったこともあって、熱中症対策のゼリーなどを子供に摂らせる人が目立ったが、多くの人々は多彩な東北のグルメを楽しんでいた。

◆震災の祈念碑、釜石校の女子高生が「語り部」

 スタジアムの一角には「あなたも逃げて」と書かれた震災の祈念碑があり、この前では当時、この場所にあった学校に通っていたという釜石校の女子高生が「語り部」となり観戦者に、「ここで何があったかを知り、防災意識の向上を」と訴える活動をしていた。

 スタンドでは三陸の漁師の間では”福が来る”という大漁旗、通称「フライキ」が打ち振られ、鎌倉時代から釜石地方に伝わる「虎舞演舞」、1300年の歴史があるという北上地方に伝わる「鬼剣舞」の演舞が行われ、華やかかつ荘厳な雰囲気を演出した。

 ゴール裏には2000人ほどの地元の小中学生が集まり、試合前には大震災への復興支援への感謝を伝えるオリジナルソング「#Thank You From KAMAISHI」を合唱、観客からは大きな拍手が送られた。その後、上空にブルーインパルスが現れ、開催を祝福するように五筋の煙を吐く。そして犠牲者に向け全員で黙祷。戦いの場はしばし「祈りの場」となった。

 両国国歌斉唱ではウルグアイが昨年の甲子園の「金足農」を彷彿とさせる「全力歌唱」。しかも、先導役を努めた、マスコットキッズが同国国歌を一緒に「全力歌唱」し、スタンドからは歓声と大きな拍手が贈られた。

 キックオフ直前、フィジーはウォークライの「シンビ」を披露。鬼気迫る表情がスクリーンに映し出されると、子どもたちから大きな歓声があがった。

 試合は前評判では圧倒的不利だった南米のウルグアイが強豪国フィジーを30-27の僅差で下し今大会初の「大番狂わせ」を演じた。両チームあわせて8トライが生まれる”大接戦”。とって取られての展開。フィジーよりひとまわり小さい水色のウルグアイの選手が果敢なタックルを繰り出し、走り回る姿に、どよめきと歓声が繰り返しあがった。

 フィジーから来た応援団の女性は「日本の人はみんな親切で優しくて大好きになったわ。もちろん津波のことも知っています。たった8年でこのような大会が開かれるなんて素晴らしい。人々の一生懸命な思いを感じ感動しています」と語っていた。

 試合後の選手取材後、記者の控室に戻ると記者の座席にお菓子が置いてあった。「かまいしからありがとう」というメッセージシールが貼ってあるラグビーボール型クッキーだった。さまざまな場面で、さまざまな形で訪れた人々に感謝を述べていた地元の人たち。ラグビーの街が、ラグビーを通して、復興への力を発信し、それを感じた取材であった。

取材・文・撮影/遠藤修哉(本誌)

―[ラグビーワールドカップ2019日本大会]―

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