世界に誇れるデザインのマツダ3に足りないものは何か?

日刊SPA! / 2019年10月6日 8時51分

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―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―

 日本車のネーミングは、スープラとかスカイラインとかなにかしら名前っぽい感じですが、欧州ではアウディA4とかBMW320dとか、コードネームっぽい名前が主流です。そんななか我らがマツダが欧州化? アクセラの後継車をMazda3として発売しました。名前だけでなく中身も欧州のクルマに負けない感じになったのでしょうか?

MJブロンディ改め永福ランプ=文 Text by Shimizu Souichi
池之平昌信=写真 Photographs by Ikenohira Masanobu

◆マツダ3はカーマニアのヒーローか?未完の大器か?

 人間、オッサンになると、若きヒーローへの思い入れが強くなる。たとえばかつての石川遼や、現在の大谷翔平だ。彼らが活躍してくれれば我がことのようにうれしく、不振に陥ればガックリする。一種の代償作用ですな。

 カーマニア(≒オッサン)も、国産車のヒーローの出現を常に待ち望んでいる。カーマニア的価値観における“いいクルマ”が登場して、世界的に高い評価を得てもらいたいと願っているのだ。別にヒット車になる必要はない。ヒット車ってのは一般大衆にウケるってことなので、むしろわかる者にしかわからないような、隠れた名車が最も望ましい。

 マツダ3は、まさにそういった存在になりそうで、カーマニアの期待は高まっていた。

 その期待がいま、少しばかり崩れつつある。期待が大きすぎたせいもあって、出てみたらそれほどでもなかったのだ。甲子園のヒーローが鳴り物入りでプロ入りしたけど、意外とイマイチだったみたいに。

 マツダ3は、これまで国内ではアクセラという名前で売られており、すでに隠れた名車だった。カーマニアが乗れば「いいクルマだなあ」と感心するけれど、特に目立った技術があるわけではなく、カタチも普通のハッチバック&セダン。いぶし銀すぎて、あまり一般受けはしない。まさにカーマニアの理想像!

 そのアクセラを、さらにこだわりまくって進化させ、デザインもこだわりまくって美しく仕上げ、ついでに世界を震撼させる新技術も投入して、このクラスの世界的ベンチマークであるVWゴルフをも超える究極のグローバルカーが出現する! それがマツダ3! そう期待されていたのです。

 確かにデザインは美しい。マツダ3と比べれば、ゴルフのデザインなんざカッペ! フランスやイタリアの同クラス車と比べても勝っている。

 なによりすごいのは、小細工ナシの超シンプルな造形で、この美しさを実現していることだ。ボディ面に刻まれたエッジラインはほとんどナシ。キラキラしたメッキや装飾的なLEDも控えて、カタマリの本質で人々のココロをつかむ! 和食同様、素材の良さってヤツですね。

◆VWゴルフよりマツダ3がリードしてるのは…

 でも、それ以外はイマイチでした。

 まず、世界を震撼させるはずの期待の新エンジン「スカイアクティブX」は発売延期! 難解なのでメカの説明は割愛しますが、究極のガソリンエンジンになるはずのエースが、まだ投入されていない。

 エース以外のエンジンは、ほぼ以前のままだ。マツダと言えば、7年前に発表した革新的ディーゼルエンジン「スカイアクティブD」で世界を震撼させたが、7年間ほとんど進化がなく、あらゆる面で欧州のライバルに追い越されつつある。

 今回試乗したのも、その1.8リッターディーゼル搭載モデルだが、旧態依然とした6速ATとの組み合わせで、加速感もフィーリングもあんまり冴えなかった。足回りも思ったほどは良くはなかった。マニア的な説明は割愛しますが、路面の継ぎ目でかなりハネるなど、乗り心地がいまひとつだ。

 7年前に登場して熟成の進んだVWゴルフに比べると(日本導入は6年前)、エンジンも足回りも、明らかに負けてましたあ! マツダ3がリードしてるのはカッコだけ!

 それに追い打ちをかけるのが、意外なほどの値段の高さだ。アクセラから30万円ほど値上げされたのはまだしも、12月に予定されているスカイアクティブX搭載車は、フツーの2リッターガソリン車より、なんと67万円も高くなる! オプション付けたら支払い総額400万円超え! ならBMW買いますわ……。

 これじゃ、甲子園を沸かせた期待の若手が、まだ大した成績も残してないのに、契約更改でゴネまくっているみたいだ。オッサンたちの失望はさらに高まる。

 それでもまあ、このデザインだけは世界に誇れます。いまのところは、それでヨシとしておきましょう。

【結論】
 果たしてマツダ3は今後カーマニアの期待に応えてくれるのか? それとも未完の大器のまま終わるのか? 特にスカイアクティブXは、あまりの値段の高さゆえ、ほとんど売れずに超レア物で終わる危惧を抱いております。

【清水草一】
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中。清水草一.com

―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―

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