吉野家が勝ち、鳥貴族は転落。2019外食チェーン戦争の勝者と敗者とは

日刊SPA! / 2019年12月9日 8時50分

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―[あの企業の意外なミライ]―

 サイゼリヤ、和民、マクドナルド、吉野家、鳥貴族…。チェーン飲食店は浮き沈みが激しい業界と言われます。たとえば、つい数年前まで絶好調だった「いきなりステーキ」を運営するペッパーフードサービス。同社は今年10月の月次動向発表で、既存店売上高は前年同期比41.4%減、客数同期比40.5%減と大幅なマイナスとなったことを公表しました。

 一方、吉野家ホールディングスは2019年2月期に60億円の赤字に転落してから一転、黒字転換に成功しています。外食産業は、なぜここまで好不調が分かれるのでしょうか? 今回は、吉野家の業績をチェックしながら、外食産業の景気動向を予測する方法を5分ほどで解説してきます。

◆外食業界を知るなら、まずは「既存売上高」

 外食業界の好不調を知るための重要な指標として毎月公表されている「既存店売上高」という指標があります。既存売上高は、開店から1年以上経った既存店の売上高のことで、開店したばかりの新店を含まない傾向があります。なぜオープンしたばかりのお店を指標から外すのでしょうか。

 それは、新規出店した店舗は、物件費用や新しい従業員の採用などの初期費用がかかるからです。この新規店舗の費用は、既存店の稼ぎでまかないます。そのため、既存店売上高が重視されるのです。簡単に言えば、「新しく事業を始めるのはいいけど、ちゃんと貯金があるの?」ということです。

◆吉野家は201%の成長率!

 では、好調が続く吉野家の既存売上高はどうでしょうか。2018年3月~9月までは、既存店売上高が100%を超えていますが、10月~2月は100%を割り込む状態となっていました。

 その時期、吉野家ホールディングスは2019年2月期連結決算で、通期で6年ぶりに赤字に転落していました。

 その額、なんと約60億円!一方、直近の既存店売上高を見てみると、2019年3月~10月は100%を上回る数値に回復しています。

 業績の方も、前年同期比9.1倍の30.2億円に急拡大しています(2020年2月期第2四半期累計3~8月の連結経常利益。10月8日の決算発表による)。通期計画が15億円ですので、進捗率は、なんと201.5%。いま、吉野家は絶好調なのです。

◆絶好調の理由は、結果にコミットしたあのメニューと…

 絶好調の理由はなんでしょうか。ずばり、それは2つの新メニューの投入でした。

 一つは、単価の高い牛丼の「超特盛」。牛丼並盛が360円なのに対し、超特盛はその倍以上の780円。しかし、とにかく牛肉をたくさん食べたい人は、超特盛を選ぶのです。

 一方、これと真逆のコンセプトで絶好調だった新メニューが、鶏肉や野菜を使った「ライザップ牛サラダ」。こちらは並盛500円で414カロリーととてもヘルシーです。

 吉野家は、迷走せずに、とにかくたくさん牛肉を食べたい顧客と、健康志向の顧客の両方を取り入れ、売上を拡大することに成功したのです。また、2019年前期に比べ、牛肉の仕入れ価格が低下したことも大きな利益拡大の理由です。

 さらに、日米貿易協定による牛肉価格の低下も今後期待されています。強いて懸念点をあげるとすれば、人手不足問題があげられます。アルバイトの賃金が今後も上昇する可能性があり、アルバイトをする若年層を取り込み続けられるかどうかが、同社の最終黒字を今後継続できるかどうかのポイントになります。

◆鳥貴族はあんなに混んでたのに。なぜ…?

 一方、鳥貴族はどうでしょうか。

 2018年の前半は全店売上高は前年同月比110%と推移していますが、既存店売上高は前年を下回る状態が続いています。鳥貴族は2018年に1年間で店舗数を547から665へと急拡大しました。しかし、その拡大戦略に呼応するほど新規顧客の開拓ができず、既存店の顧客を奪ってしまうという結果になりました。

 事実、2019年7月期の営業利益は前期比マイナス29.2%の大幅減益となっています。

 そこで鳥貴族は経営戦略の見直しに入りました。

 現在、鳥貴族は新規出店を凍結し、「2021年までに1000店舗」を掲げていた中期経営計画も取り下げています。不採算店舗を閉店し、既存店の回復に力を入れるのです。これは、冒頭に示したいきなりステーキや、以前取り上げたマクドナルドも同様です。

 チェーン飲食店は、不調の場合、不採算店舗を閉鎖して赤字を食い止める方向に動くのが通例となっています。その結果、現在は既存店売上高は回復傾向にあります。当然、新規出店はしていないので、全体の売り上げ高は伸びていません。まずは、既存店売上高の足元を固めることが業績回復のポイントになります。

◆あの現金主義だった吉野家が…

 前述したように、業績が回復した吉野家HDの目指す先は、人手不足の解消と若年層顧客の取り込みです。その中で、売上高を伸ばしたのが「すき家」の親会社であるゼンショーHDです。

 ゼンショーHDは、牛丼事業の売上高だけで、4年間で約20%売上高を伸ばしています(2014年1799億円→2018年2143億円)。その間、吉野家HDの牛丼事業の売上高は、4年間でわずか8%しか上がっていません(2014年929億円→2018年1010億円)。

 ゼンショーHDは、お客の多様なニーズに対応し「すき家de健康」をテーマとして、「シーザーレタス牛丼」(500円)、「辛口トマレタ牛丼」(500円)などを導入し、商品力の強化に取り組んでいます。吉野家HDよりも先に若年層の取り込みに成功しました。果たして、吉野家はこれに追随するのでしょうか。

 いま吉野家HDは若年層を取り込むため、キャッシュレスに力を入れ始めています。

 今年8月に発表されたメルカリのスマートフォン決済「メルペイ」を使ったキャンペーンのほか、オリガミペイの牛丼並盛半額キャンペーンやオリジナル電子マネーの「吉野家プリカ」を発行など、かつての現金主義から脱しようとしています。

 また、牛肉以外のメニューを増やし、客単価の上昇につなげる施策を打ち出しています。ベジ定食(498円)や、炙り鯖定食(648円)はその最たる例でしょう。はたして、吉野家はモーッと好調が続くのか(牛だけに)、そして鳥貴族は低迷から飛躍できるのか(鳥だけに)。

 今後も注目していきたいと思います。

【馬渕磨理子】
日本テクニカルアナリスト、(株)フィスコ企業リサーチレポーター。日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでマーケティングを行う。Twitter@marikomabuchi

―[あの企業の意外なミライ]―

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