貯金ゼロの46歳独身男性は老後の不安とどう向き合うべき?

日刊SPA! / 2019年12月12日 15時52分

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―[インテリジェンス人生相談]―

“外務省のラスプーチン”と呼ばれた諜報のプロ・佐藤優が、その経験をもとに、読者の悩みに答える!

◆佐藤さんはどう老後に備えていますか?

★相談者★独身貯金ナシ男(ペンネーム) 自営業 男性 46歳

 佐藤さんは老後に備えて何かしていることはあるでしょうか? 私は自営業のため、おそらく年金はスズメの涙ほどしかもらえません。年金問題で老後は年金だけでは暮らせず、2000万円の貯金が必要といわれてますが、私のような人間はもっと必要なのでしょう。

 ほんの少しの年金しかもらえないのなら60歳でポックリ死にたいところです。それか、お金のかからない発展途上国に移住するか。自営業の人間は今後、どうやって生きていったらいいでしょうか?

◆佐藤優の回答

 福祉の形態は、国によって異なります。日本では企業が福祉の大きな部分を担っています。この点については、社会学者の小熊英二氏の分析が興味深いです。

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 福祉においても、(中略)ドイツは「職種のメンバーシップ」が支配的な福祉体制、アメリカは「制度化された自由労働市場」が支配的な福祉体制、日本は「企業のメンバーシップ」が支配的な福祉体制と図式化できる。

 これらの国では、政府の役割が北欧などに比べて小さいため、こうした類型化が可能といえる。日本においては、「企業のメンバーシップ」が全体を規定し、残余部分は国民健康保険や生活保護といった形でカバーする福祉体制が、築かれていったと考えられる。

 教育も同じように類型化するならば、日本は企業志向、アメリカは市場志向、ドイツは資格志向の教育体制であるという図式化も可能だろう。日本においては、企業志向の教育のあり方が、大学院進学率が伸びない学歴抑制効果をはじめ、独特の「学歴」の社会的機能をもたらしてきた。日本における学校の機能は、企業外の訓練機関ではなく、企業内訓練に応えられる潜在能力を持つ者を選抜することに特化したからである

(『日本社会のしくみ』562頁)
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 以前と比べると、企業の従業員に対する福祉の水準は低下しています。20世紀末までは、大企業に定年まで勤めた人は厚生年金に加え、企業年金が出たので、それで安心して生活することができました。現在では、定年後も仕事に就かないと老後の生活に不安を抱えることになります。

 あなたと私は、個人事業主(自営業)です。大企業に勤務している人のように、会社の福利厚生に頼ることはできません。持ち家があれば、国民年金だけでも食費、水道光熱費の分は賄えると思いますが、文化的な生活はできません。

 自分の老後は自力で賄わなければなりません。ですから、まず、持ち家を確保しました。さらに収入を日本円での預金、外貨預金などに分散しました。また、国民年金のほかに国民年金基金にも加入し、民間保険会社の個人年金保険にも加入しています。

 作家は不安定な仕事です。今は売れていても、いつ売れなくなるかわかりません。ただし、専門で強い分野を持っていると、生き残っていくことができます。

 私の場合、外交、インテリジェンス、宗教が強い分野ですので、そこでの勉強は怠らないようにしています。そうすることによって継続的に仕事の依頼があります。幸い、作家には定年がないので健康と意欲が続く限り作家の仕事を続けることができます。

 個人事業主でも中小・零細企業の経営者、従業員にしても、個人の力で老後の不安を全面的に解決できません。個人的には、消費税を大幅に上げて、教育や福祉は、すべて国が保障するような、高負担・高福祉に日本社会の構造を転換したほうがいいと思います。

★今週の教訓……高負担・高福祉社会への構造転換が望ましい

【佐藤優】
’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』など著書多数

―[インテリジェンス人生相談]―

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