コロナで寺社の4割は消滅する。法要・拝観中止で収入激減

日刊SPA! / 2020年6月27日 6時52分

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兵庫県の廣田神社では、疫病封じの妖怪・アマビエを描いた護符を、参拝客に無料で配布した(現在は終了)

 全国の寺社が窮乏に喘いでいる。コロナ禍で収入源を絶たれ、持続化給付金も対象外。20年後に4割が消滅する――など厳しい試算もあるが、果たして打開策はないのか? 今回その最前線に迫る。

◆4割が年収300万円以下。神社はさらに過酷な状況

「浄土真宗はお説教が主な活動ですが、人が集まれないのでほとんどできず、凄まじい勢いで収入が減っていった。寺の収入の半分がお説教なので大打撃です」

 玄照寺(滋賀県・真宗大谷派)の瓜生崇住職は、コロナ禍による寺のダメージをこう明かした……。

 コロナが日本の伝統宗教を直撃している。感染拡大を防ぐため、京都や鎌倉など観光地の名刹が次々と拝観中止を決定。神社も「江戸三大祭り」をはじめ、季節の風物詩とも言える歴史ある祭事が軒並み取りやめとなるなど、全国の名だたる神社仏閣が収入源を絶たれ、経済苦に喘いでいるのだ。ジャーナリストで浄土宗の僧侶でもある鵜飼秀徳氏が説明する。

「タイミングが最悪だった。まず、3月のお彼岸の法要や、花祭りなどの行事が中止になり、例年ならGWに集中する年忌法要が、移動制限で帰省する人が少ないために、キャンセルが相次いだ。大多数の寺の主な収入である布施が、ほぼ消えたのです。一方、拝観料が収入源の観光地の寺は、渡航制限のため外国人観光客がほぼゼロのうえ、修学旅行も中止で“ドル箱”を一挙に失った」

 だが、宗教法人は「お布施」などの宗教にかかわる事業は原則非課税だ。よくいわれるように「坊主丸儲け」なら、困窮は一時的ではないのか。鵜飼氏が続ける。

「全国に1万の寺を擁する浄土真宗本願寺派は、43%の寺が年収300万円以下です。日本最大の仏教宗派・曹洞宗でも、年間の法人(寺院)収入が300万円以下の寺が42%。地方の過疎地はもっと厳しく、ほとんどが年収300万円以下なのが実情です。もともと経営基盤が脆弱だから、コロナ禍による収入減が、寺の経営を揺るがしかねないのです」

 この指摘を裏づけるように、前出の瓜生住職も青息吐息の懐事情をこう吐露する……。

「もともと、ウチは寺の活動だけでは経営が成り立っていません。地方では、葬儀や法要のお布施だけでは寺の運営ができず、兼業僧侶のほうが一般的。僕は元システムエンジニアなので、システム開発との兼業で何とか凌いでいる」

◆“マンション僧侶”は収入激減で退去の危機!?

 では、都会の僧侶のダメージは軽微なのか。東京には寺を持たず、マンションを宗教施設、兼住居にする“マンション僧侶”も多いが、その一人である軽部光一さん(仮名)は、内情をこう語る。

「檀家を持たない“マンション僧侶”は、葬儀や法要の仕事を紹介してもらう派遣僧侶が主な収入源。ところが、コロナで派遣仕事がほぼなくなり、月に40万円ほどあった収入が10分の1に激減した。緊急事態宣言が解除されても仕事の数は戻っていないし、高い上納金を取り立てている本山は何の支援もしてくれない。ウチはマンションを“寺”にしているので、このままではローンが滞り、退去しなくてはならないかもしれない……」

 もう一つの伝統宗教である神道は、さらに深刻な状況のようだ……。宗教学者の島田裕巳氏が話す。

「寺院のように檀家の布施という固定収入がないので、神社のダメージはもっと甚大です。神社の収入の柱は、初詣の賽銭や物販、祭事での寄進だが、お祭りはできず、収入の大部分を占める初詣の時期に、感染が収束していなければ大打撃でしょう。神社の大多数が傘下に入る神社本庁が、困窮する神社を支援することもまずない。もともと減少傾向にあった日本の寺社は、さらに消滅のスピードを加速させるでしょうね」

 寺社は収入源を失い、上部組織の支援もないばかりか、政教分離の原則から、政治団体や風俗業と並んで国の持続化給付金の「対象外」となっており、事態は深刻だ。日本には寺が7万7000、神社が8万1000あるが、國學院大学の石井研士教授の試算によれば、20年後までに全国の4割に当たる、3万余りの寺と3万1000の神社が消滅する……。前出の鵜飼氏が警鐘を鳴らす。

「少子高齢化に加えて、地方から都市への人口の流出が止まらず、地域から人がいなくなれば、寺社の経営は破綻し、空き寺や無住神社になる。施設の管理が行き届かず、台風で屋根瓦が数枚飛んだだけで、そこから雨漏りし、いずれ朽ち果てる。すでに、全国で1万7000もの寺院が空き寺になっているが、地域住民の心の社会インフラである寺社が消滅すれば、日本文化への影響は計り知れない」

 だが、コロナ禍で新境地を模索する動きもある。Zoom法要やオンライン説法を配信する寺や、疫病退散のお札を無料で配布する神社が現れたのだ。だが、オンライン説教を配信する前出の瓜生住職は「ユーチューブから月に2000円ほど」と、収入的には焼け石に水……。あくまでも人々に寄り添う目的を強調する。

 苦境に立たされているのは伝統宗教だけではない。新宗教を取り巻く現状を島田氏が説明する。

「新宗教は軒並み、活動が止まっている。例えば、創価学会は、会館や会員の家庭に信者が集まって信仰を深める『座談会』を重要な活動の中心に据えているが、停止しています。新宗教は伝統宗教よりも、教団との縦の繋がりも信者同士の横の繋がりも強いので、ダメージも大きい。新宗教が右肩上がりの時期なら、活動を再開すれば回復も望めたが、近年、信者は半数に激減している。こうした下降期では、コロナで活動を一度やめた信者が、再開したときに戻るとは限らない。さらに、コロナという災厄に対して、信仰してきた宗教が何の役にも立たなかった……という不満や疑念を抱かれてしまう可能性すらあるのです」

 コロナ禍が降りかかる今こそ、救世主の登場が待たれるが……。

◆神道は元来、お祭り! 楽しくケガレを祓おう

 伝統宗教や新宗教が生き残る道を模索する中、成功例かもしれない一つのケースが、世界に325の支部、8万8000人の会員を擁する神道系の宗教団体・ワールドメイト(以下、WM)だ。深見東州教祖が語る。

「感染対策を徹底して、コロナ禍でも通常どおり活動していた。クリニックや薬局も持っているので、専門的医学知識で対策を講じたのです」

 実業家の顔を持つ深見氏だから可能なのだろう。ユーモラスな広告で知られる予備校・みすず学苑を首都圏で10校展開し、高級腕時計の輸入と直販売は年商75億円で業界2位。ミスズの年商は105億円、グループ全体では約300億円を超える。教団の強固な経営基盤が窺えそうだ。

「ビジネスに宗教は持ち込んでいないし、だいたい、そんなビジネスじゃ相手にされませんよ(苦笑)。ただ、私が宗教家であり、経済人であることに何の矛盾もない。本物の宗教とは、今を反映する時代性と、時代を超える普遍性を併せ持つ。国民の8割がサラリーマンやOLなのだから、私も社会に身を置き、会社経営を続けている。そうでなければ、現代に働く人々の悩みに答えられない。そもそも神道は、生業と家とコミュニティの繁栄を目指すものです」

 WMの特徴は、ギャグ爆発の歌って踊れる教祖に象徴される。

「コロナ禍で始めた『全国1万人オンライン飲み会決起大会』は、11回を数える。神道はお祭り。全員が決められたテーマのコスプレで、派手に楽しくケガレを祓い、ハレの状態を取り戻しています(笑)」

 寺社の4割が消滅危機に瀕する現状を、異能の教祖はどう見るのか。

「疫病が流行った奈良時代、大仏が建立され、日本は鎮護国家となり仏教が栄えた。その後、神仏習合で神道と融合した。時代、時代の宗祖のあり方に戻り、今の時代に生かせば栄えるはずです」

 教祖さま……マジメか!

【島田裕巳氏】
宗教学者。作家。東京女子大学非常勤講師。30万部のベストセラー『葬式は、要らない』(幻冬舎新書)ほか、著書多数

【鵜飼秀徳氏】
報知新聞社などを経てジャーナリストに。浄土宗正覚寺副住職。全国の寺院を精力的に取材。『寺院消滅』(日経BP)ほか、著書多数

【宗教団体ワールドメイト・深見東州教祖】
’84年、前身のコスモコア設立。’12年、宗教法人格を獲得。英王室や各国首脳、3大テノールのプラシド・ドミンゴやナオミ・キャンベルまで、華麗な人脈を誇る

<取材・文/齊藤武宏 写真/朝日新聞社>
※週刊SPA!6月23日発売号より

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