安倍応援団の自称保守が何を喚こうが、予想通り河井夫妻は逮捕された/倉山満

日刊SPA! / 2020年6月29日 8時30分

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17日、参院本会議場を出るあんり参院議員。説明責任を果たさないまま逮捕された二人。黙認してきた首相の責任は厳しく問われるべきだろう 写真/時事通信社

―[言論ストロングスタイル]―

◆安倍応援団の自称保守が何を喚こうが、予想通り河井夫妻は逮捕された

 世の中には大嘘付きがいる。無知蒙昧なネトウヨどもを相手に「朝日新聞は検察人事に介入するな!」などと絶叫して商売をしていた言論人たちだ。そういう人が保守を名乗るから大迷惑だ。

 こんな大法螺、少し法務・検察の世界を知っていれば、ありえないとわかる。歴代、検事総長を目指すような検察官は、各社に“子分”を“飼って”いる。朝日も産経も、どこも関係ない。ついこの間も、産経新聞社の記者が朝日新聞の記者と一緒になって検察大幹部を麻雀賭博で接待していた。そうやって“飼”われているのだ。力関係は、検察の方が上であって、逆ではない。常に法務検察担当記者は、検察の人事抗争に使われる立場だった。

 さらに言うと自称保守言論人たちは、「河井あんりは捕まるけれども、ダンナの克行前法相にまでは捜査は及ばない」などと、訳の分からないことを言いふらしていた。要するに、公職選挙法違反は嫁のあんり参議院議員がやったことであって、安倍首相側近の克行は関係ないから、安倍内閣は安泰だと言いたいらしいのである。夫婦で選挙活動をやっていて、一方だけが捕まりもう一方が助かるなど、ありえない。

 では、保守を名乗る法螺吹き言論人は、なぜ非常識な嘘をつくのか。ただ一心、安倍晋三を応援するポジションを守りたいからである。彼ら彼女らにとって保守とは「安倍晋三を応援すること」である。だから「安倍さんに敵対する奴は敵」であり、事実を捻じ曲げてでも安倍信者に向けて扇動を始める。一定数の顧客がいるので、ポジショントークだけで商売としては成り立つのである。人として、言論人としてのプライドさえ捨ててしまえば。

 しかし、安倍応援団の自称保守が何を喚こうが、真実は曲げられない。言論人の真価とは、誰が一貫して本当のことを言っていたかによって評価されるからだ。

 国会が閉じた翌日の18日、少し社会のことを勉強した人間なら誰もが予想した通り、河井克行・あんり夫妻が逮捕された。

 安倍首相は「任命責任を痛感する」と神妙に答えた。閣僚の不祥事が飛び出た時の常套句だが、この7年間、本当に責任をとったことは一度も無い。だが、昨年の消費増税と今年に入ってのコロナ騒動で、政界の様子が変わってきた。

 これまで「安倍一強」だったのはなぜか? 財務省の走狗である麻生太郎副総理・財務大臣と創価学会の代理人である二階俊博幹事長が支えてきたからである。安倍・麻生・二階の三派が組めば、自民党の過半数である。だから、他の自民党の誰もかなわなかった。

 ところが、最近は二階幹事長と公明党が、安倍首相と距離を置き始めている。安倍首相が、岸田文雄政調会長を後継に据えようとしているのが気に入らないらしい。二階幹事長は、無能な岸田政調会長を小馬鹿にしきっている。一方で安倍首相は、何としても自分の地位を脅かさない人物に後継を譲りたい。二階氏が嫌う要素こそ、安倍首相が岸田氏を推す理由なのだ。仮に、安倍・麻生・岸田の三派が組んでも、自民党の過半数だ。二階氏も攻め手を欠く。

 つまり、現在の政界でキャスティングボートを握っているのは麻生財務大臣だ。では、その背後にいる財務省にとって、安倍首相はどのような存在か。

◆財務省にとって首相は大恩人だ。そして、大恩人とは、「扱いやすい傀儡」のことである

 恩人である。2度も消費税を増税してくれた、大恩人である。財務省の隠語で「恩人」とは、「扱いやすい傀儡」のことである。かつて2度も増税を延期して盾突いたが、もはや今の安倍首相に怖いところなど何もない。財務省には、政官界の他全員を敵に回してねじ伏せ、己の権勢を誇示する性癖がある。国民の大半に呆れられ、政官界の人心が離反して、満身創痍の安倍内閣を支える。そうしておいて、本当に潰れるまでに取れるものをとっておこうと考えるのが、財務省の思考回路だ。

 コロナ税、炭素税、交通税、そして消費税のさらなる引き上げ……。次々と御用学者から観測気球が上がっている。安倍内閣が生存しているうちに、次の増税への道筋をつけておきたいのだ。

 ポスト安倍に向けて自民党内の動きがきな臭いが、国民不在の暗闘にすぎない。もはや安倍首相には1日でも早く辞めてもらわねばその分だけ国益を損ねるが、では代わりに誰がいるかと言うと、自民党の実力者など大同小異だ。

 なぜ、こうなるのか? 自民党に代わる選択肢が無いからだ。

 安倍長期政権を支える人材は、綺羅星の如く存在した。海江田万里、岡田克也、蓮舫、そして枝野幸男。多くの国民は「民主党の悪夢に戻してよいのか?」と脅されると、安倍批判を躊躇したくなる。このコロナ騒動の間も、安倍政権は数多の失策を犯したが、枝野立憲民主党代表は一歩も攻め込まなかった。なんと頼もしい味方ではないか、安倍自民党にとって。

 ちなみに、立憲民主党では「減税だけは絶対に言ってはならない」と議員を締め付けているとか。増税を進める与党と、減税を言わせない野党なら、国民に選択肢が無くなるのは当たり前ではないか。しかも、これまでは旧民主党が野党第一党に居座るので、マトモな野党が伸びられなかった。

 ただ、コロナ騒動で、日本維新の会の吉村洋文大阪府知事は名を上げた。そして支持率でも維新が立民を抜き始めた。大阪限定地域政党にすぎなかった維新が、都市部を中心に支持を広げ始めている。これまでの維新は与党の補完勢力のような態度が多すぎたが、吉村氏を押し立て、自民党と対決姿勢を鮮明にするなら、安倍自民党に代わる選択肢になりえるのではないか。

 その試金石が東京都知事選だ。非常に極めて残念ながら、小池百合子東京都知事の再選は固いと見られている。だが、2位争いはどうか。立民が推す共産党の宇都宮健児氏、枝野氏が蛇蝎の如く嫌う山本太郎氏、そして維新が推す小野泰輔氏。

 常識で考えれば、固い組織票を持つ宇都宮氏が2位だろう。だが、リベラル票は山本氏と割れる。維新が2位になるのは常識では難しいが、宇都宮氏が3位に転落したら、立民の凋落は決定的だ。

 当選結果が決まりきった選挙でも、適切に影響力を行使する方法はある。

 都民は知恵の使いどころだ。

【倉山 満】
憲政史研究家 ’73年、香川県生まれ。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中より国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務め、’15年まで日本国憲法を教える。現在、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰し、大日本帝国憲法や日本近現代史、政治外交について積極的に言論活動を行っている。ベストセラーになった『嘘だらけシリーズ』など著書多数。最新著書に『13歳からの「くにまもり」』

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