日本にマトモな野党は無い。都知事選を機に「枝野おろし」の号砲だ!/倉山満

日刊SPA! / 2020年7月7日 6時52分

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―[言論ストロングスタイル]―

◆日本にマトモな野党は無い。都知事選を機に「枝野おろし」の号砲だ!

 言論界には、“オオカミ中年”があふれている。毎年「今年は中国が崩壊する」と予言する本が出版されているが、そのすべてが外れている。

 今も「世界はコロナ騒動を起こした中国を許さない」との言説を撒き散らして商売をしている御仁がいるし、去年あたりは「香港の人権侵害を米英が阻止する」と言いふらした人間もいた。

 ところが事実は異なる。コロナ騒動で中国は焼け太りの様相だし、香港では人権弾圧が相次いでいる。国家安全維持法が施行されてから、2日で300人が逮捕されたとか。

 こうした中国の振る舞いに、与野党問わず日本の国会議員の中からも「何とかしたい」との声を聞く。

 たとえば亡命者の受け入れなどは考えられるだろう。しかし、イギリスのように亡命者の受け入れなど表明したら、その中にスパイを紛れ込ませるのが中国の手口だ。日本がやろうとしても、対策ができるとは思えない。明治の昔は福沢諭吉が朝鮮からの亡命者を自宅で匿ったりしたが、現代日本でできることは、その程度ではないのだろうか。

 そもそも、日本に国家としての覚悟があるのか。

 仮に米英が香港の人権侵害を許すまじと、艦隊を派遣したとしよう。日本はいっしょに自衛隊を派遣するのか。そんな準備はできていない。

 ただ、今の米英に中国と本気で事を構える気はない。そもそも香港問題は、特にイギリスにとって、「終わった話」なのだ。香港の自由と民主主義を守る意思と能力があるなら、’97年に返還などしていないだろう。

 かつて、ソ連はハンガリーやチェコの若者を抹殺した。アメリカやイギリスは口では非難した。ただし、それだけだった。なぜなら、当時のハンガリーやチェコは、形式的には主権国家だったが、実質はソ連の「持ち物」だった。米英とて他人が自分の持ち物に何をしようが、本気で邪魔だてなどしない。そして香港は、形式的にも中国の持ち物なのだ。口先介入してもらえるだけ香港の人たちはありがたいと思え! これが国際政治の冷厳な現実だ。

 確かにアメリカは、「やる時はやる」国である。1980年代、ロナルド・レーガンという大統領が登場した。レーガンは「ソ連を潰す!」と宣言し、本当に実行した。どうやって?

 まず、自国の経済を立て直す。景気を良くして国民の支持率をあげる。そして「打倒ソ連」で結束する。イギリスなど自由主義諸国との同盟を強固にし、ソ連に軍拡競争を挑む。同時並行で諜報(インテリジェンス)を繰り広げる。最後は、ハプスブルク大公の工作が成功し、ベルリンの壁が崩壊し、ハンガリーやチェコも自由を得た。

 さて。「香港を助けたい」と言うなら、これと同じことをやるしかないのではないか。香港を助けるとは「中国を潰す」と同義である。そして、再び大国になる覚悟を持つことである。

 では、どこにそんな意思を持つ政治家がいるか。自分で探すしかない。そこで注目しているのが、実は東京都知事選挙だ。

◆選挙で、枝野氏と取り巻き連中が「2位を死守した」と言える間は、永遠に日本の政治は変わるまい

 この原稿を書いている時点で既に「次の都知事は小池で決まりなのだから」と盛り上がらないが、どこを見ているのかと思う。熾烈な2位争いが、今後の日本の運命に関わるのに。注目は、野党連合が推す、宇都宮健児氏の順位だ。3位になっていれば、枝野幸男立憲民主党代表の責任問題だ。2位であっても、惨敗の責任をとらせるべきだ。

 もはや誰がどう見ても、宇都宮氏は小池氏に惨敗する形勢だ。トリプルスコアどころか、クアドラプルもありうると言われている。2位も3位も関係なく惨敗だ。それを「2位を死守した」などと言わせるなら、未来永劫、日本の政治は変わるまい。

 そもそも、去年の参議院選挙で、与党は増税を掲げながら勝利した。野党第一党の立憲民主党は最後まで減税を掲げるのを拒否し、与党を助けた。

 これは信じられない情報なのだが、枝野幸男氏は側近には、「政権交代を目指す」と吹いているらしい。最初は冗談かと思ったが、本気らしい。どうやら枝野氏は、どうしても「自分のやり方で勝ちたい」と手法にこだわっているらしいのだ。結果、「よりによって、安倍政権の正しいところだけを批判する」になるとか。

 過半数の日本国民には呆れられるが、一定の支持層は得られる。そして、その一定の支持層に支えられて、野党第一党の地位を確保できてしまう。そんな姿を、枝野氏と取り巻き連中は、成功していると勘違いする。だから今回、自らが擁立した宇都宮氏が小池氏にクアドラプルスコアで負けようが、3位や4位に沈もうが、知ったことではない。

 1955年に日本社会党が結成されてから、野党第一党は「事実上の与党の補完勢力」「マトモな野党が台頭するのを邪魔する存在」と化してきた。こうした構造を打破しようとする勢力が、野党の中にも登場した。

 目立つのは国民民主党だ。実はこの党は、衆参両院で自民党、立憲民主党に次ぐ第三党である。公明党よりも議席数が多い。

 都知事選挙で、立憲民主党が自党で候補者を立てられずに共産党の宇都宮氏を推したことを理由に、自主投票を決めた。枝野氏に対する「敵対的中立」である。それどころか、国民民主党の支持母体である連合は、小池支持に回り、はっきり敵対姿勢を示している。

 本欄でも紹介した馬淵澄夫代議士は国民民主党に入党したが、都知事選でも減税を掲げる山本太郎氏を派手に応援している。さらに立憲民主党をも含めて大量の国会議員が山本氏を支援していると公言した。枝野氏の態度次第では、立憲から国民への大量脱党もありうる。

 マトモな野党が無い限り、国民には選択肢が無いのだから、都知事選を機に「枝野おろし」の号砲だ!

 政界は与野党ともに9月政変に向けて動いている。ポスト安倍をめぐる、自民党派閥実力者による会合が毎晩のように開かれている。

 では、安倍首相であれ他の人であれ、コロナ騒動で醜態をさらした自民党政権が継続して何かいいことがあるのか?

 ただし、マトモな野党が無い限り自民党の方がマシとなる。「安倍か枝野か」など、選択肢でもなんでもない。枝野幸男ある限り、選挙に意味が無い。とにもかくにも枝野おろしだ!

【倉山 満】
憲政史研究家 ’73年、香川県生まれ。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中より国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務め、’15年まで日本国憲法を教える。現在、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰し、大日本帝国憲法や日本近現代史、政治外交について積極的に言論活動を行っている。ベストセラーになった『嘘だらけシリーズ』など著書多数。最新著書に『13歳からの「くにまもり」』

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