健康不安説の安倍総理に「休んでください」と私も思う。本当に体を壊す前に/倉山満

日刊SPA! / 2020年8月28日 6時49分

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8月19日、3日間の夏季休暇を終え、病院での検査について、首相官邸で記者団の質問に答える安倍晋三首相。身を退くか、居座り続けるか、首相の英断を祈るばかりだ 写真/時事通信社

―[言論ストロングスタイル]―

◆安倍応援団諸君と同様、私も休んでくださいと思う。本当に体を壊す前に

 権力闘争は過酷だ。だから、どんな手段を使ってでも権力闘争に勝たねばならない。負けた者が何を言おうが知ったことではない。

 安倍晋三首相と側近たちは、その言葉通り実行して、史上最長の長期政権を築いた。ならば、政敵が何をしても文句は言えまい。少なくとも、「人の病気を権力闘争の道具に使うな」とは、恥ずかしくて言えまい。

 昨年秋の消費増税で景気が悪化しているところに、コロナ禍で世の中に沈滞した空気が漂う。よせばいいのに検察人事に介入して、結果は完敗となったのは記憶に新しい。

 国会閉幕後は、自民党の実力者たちは政策そっちのけで、相次いで会合を繰り返している。秋の人事や、1年以内に行われる解散総選挙に向けての動きである。

 そんな最中、安倍首相の健康不安が囁かれている。「国会に出てこられないのは、病気ではないか?」との噂も広がる。政界とは「風邪を引けば肺炎と噂が流れ、肺炎になれば、癌、本当に癌だったら死亡説が流れる」世界だ。安倍首相の吐血情報も流れ、先日は7時間も病院に籠っていた。

 巷間言われるように政変があるのかどうか知らないが、今後も安倍内閣が続いても何もできないことだけは間違いなさそうだ。今までだって、7年も弱い野党と自民党反主流派を相手にして、何一つ実績が残せなかったのだから、できるはずがない。それどころか、景気回復も疫病対策もできていない。自民党はもちろん、官僚機構に政権担当能力が欠如している現実が明々白々になった。

◆本当に体を壊す前に内閣総辞職をされてはいかがか

 信者諸君は「安倍首相は働き者である」と褒めそやす。私も休んでくださいと思う。未来永劫。本当に体を壊す前に内閣総辞職をされてはいかがか。

 偉大な言論人にして元首相の石橋湛山曰く、「国会に出て国民に説明できない総理大臣は退陣すべきである」と。

 昭和6年の話である。時の浜口雄幸首相は前年に狙撃されたが、一命をとりとめていた。しかし、無理に国会に出てきて容体を悪化させた。代理では済まない話も多く、国会が紛糾した。その時に在野の言論人だった石橋は、浜口に退陣を迫った。ほどなくして浜口は、退陣に至る。

 時は流れて昭和32年。石橋は首相となっていた。ところが、軽い脳梗塞を起こした。長期の治療を覚悟すれば必ず治る病気である。しかし石橋は自分の信念に従い、「国家に迷惑をかけるわけにはいかない」と退陣を選んだ。わずか65日の内閣となった。

 世の中には、身を退くことで国家に貢献する方法もある。

◆このまま居座れば野垂れ死ぬ。しかし、力を無くした首相でも、最後の武器がある。内閣総辞職だ

 決して悪意ではなく、安倍首相自身の為に総辞職を進言する。

 そもそも、安倍首相は自分の進退を自分で決める自由があるのか。主要閣僚を何度も経験している実力者の甘利明自民党税調会長が「安倍首相に何度も休めと言っているのに、秘書官が言うことを聞かない」とテレビで訴えた。

 自民党税調会長のような実力者が、たかが秘書官に逆らえない。異常事態である。この場合の秘書官とは、今井尚哉首席秘書官しかありえない。安倍首相は今井秘書官に頼り切っているが、もはや「今井の奴隷」ではないか。

 現在、安倍政権と与党自民党の利害は一致していない。自民党からすれば、人気の無い安倍首相を引きずりおろし、新総理総裁の人気が高い内に解散すれば負けるにしても、そんなに数は減らさない。自民党のほとんどの議員は安倍内閣下での解散など真っ平御免なのだが、首相官邸に居座りたい側近たちだけは安倍内閣の居座りを策している。

 このような状態で、安倍応援団諸君は何も言わないので私が言う。

 どんなに力を無くした総理大臣でも、最後の武器がある。内閣総辞職だ。総理大臣はやめる時期を選ぶことにより政局をコントロールできる。憲政史を紐解けば、山県有朋、桂太郎、西園寺公望、斎藤実、中曽根康弘、竹下登、小泉純一郎は、内閣総辞職を武器にして、その後も影響力を保った。

 ただし、引きずりおろされるまで居座れば、野垂れ死にだ。

◆3年前から私は安倍首相に総辞職を進言

 3年前から私は安倍首相にこの意味での総辞職を進言してきたが、今がギリギリだろう。

 最後は安倍晋三氏個人が「自分が何をすれば日本の為になるか」で判断してもらうしかない。

 こうした自民党の呆れた惨状は罪深い。ただし、いくら自民党や安倍政権を批判しても構わないが、それ以上に野党第一党とその党首は糾弾されるべきだ。

 もし今の日本に魅力ある野党第一党党首がいれば国民は喜んで選挙で勝たせるだろうし、自民党など二度と政権に返り咲けないような負け方をするだろう。

◆日本国民は絶望するしかない

 ところが現実は、「立憲民主党枝野幸男」である。日本国民は絶望するしかないではないか。

 枝野氏とその徒党は勘違いしている。自分たちが安倍自民党より人気が無いのは、数が少ないからだ。野党を糾合して数合わせをすれば、自分たちに人気が出るに違いないと。最近も数合わせに邁進している。

 この人たちは決して、自分たちの過去の悪行が許されていないとも思わないし、かつての民主党政権は正しいことをしたと信じ切っている。だから、今の自分たちのやっていることが間違っているなどと考えない。

 そもそも、国民は何を求めているのか。第一に自民党に代わる、真っ当な野党である。魅力ある党首でなければならない。枝野氏やその徒党が魅力ある党首足りうるのか。第二に、「せめて景気を回復してくれ」との渇望である。コロナ禍で、特に飲食・サービス・観光といった産業は地獄絵図である。この人たちだけで日本の3割を占める。

 こうした時勢で、枝野氏と取り巻きは「消費減税」を拒否している。受け入れる姿勢を見せる時もイヤイヤだ。今この状況で与党が増税を言い出しているのに、何をためらっているのか?

 その点、国民民主党の玉木雄一郎代表は「減税で一致できるか」と迫り、枝野氏の軍門に下る数合わせを拒否した。少数政党として茨の道を歩むとの決意だ。

 減税派は、国会の中では少数派かもしれないが、国民の中では多数派だ。安倍枝野増税談合体制ではない選択肢が求められている。

【倉山 満】
憲政史研究家 ’73年、香川県生まれ。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中より国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務め、’15年まで日本国憲法を教える。現在、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰し、大日本帝国憲法や日本近現代史、政治外交について積極的に言論活動を行っている。ベストセラーになった『嘘だらけシリーズ』など著書多数。最新著書に『13歳からの「くにまもり」』

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