これが夢の国の現実? 東京ディズニーリゾートが社員ボーナス70%減の深刻事情

日刊SPA! / 2020年10月5日 8時29分

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馬渕磨理子

―[あの企業の意外なミライ]―

 東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは、コロナ禍においても現金を多く持っているため、“潰れない企業”として評価されている会社でした。しかし、その状況が現在大きく揺らいでいます。

 先日、業績悪化によって賞与が70%減となり、ダンサーなどの配置転換を行うことが発表されました。いったい、オリエンタルランドはどうなってしまうのでしょうか。

◆思い切ったリストラ。夢の国の“現実”

 前述したように、オリエンタルランドは新型コロナウイルスの影響で業績が悪化していることから、およそ4000人いる正社員と嘱託社員を対象に、今年の冬のボーナスを7割削減することを発表しました。さらにコロナ以降、イベントが軒並み中止し、契約社員のダンサーや出演者は業務が激減しています。

 彼らに対して、オリエンタルランドは窓口業務に移るか、手当を受け取り退職するか、または契約期間を満了するか選択するように伝えたといいます。その対象は約1000人。これはオリエンタルランド始まって以来のかなりの打規模なリストラと配置転換と言えます。

◆潤沢なキャッシュに定評があった

 しかし、これまでオリエンタルランドは、お金を払う余裕がかなりある企業として認識されてきました。企業が、1年以内に現金化できる流動資産がどの程度確保されているかを示す指標として、流動比率(流動資産/流動負債×100)というものがあります。同社の流動比率は、2019年3月末時点で285%。一般的に理想とされる200%を大きく上回っています。つまり、オリエンタルランドはコロナ以前の状況では、かなりの支払い能力を持っていたのです。

 中でも注目すべき点は、キャッシュの分厚さです。

 同社の2019年3月末時点の現金及び預金残高は3775億円。コロナの影響前の費用を見てみると、売上原価と販売費および一般管理費の合計から、減価償却費を除いた金額は約3580億円となっています。つまり、オリエンタルランドは一年間に出ていくお金が約3580億円に対して、現金及び預金として3670億円を持っています。これが、オリエンタルランドが1年間売り上げが0円でもお金がなくならないと言われる理由です。この財務状況からおわかりのように、同社は投資家からコロナ以降も安泰と判断され、評価が高かったのです。

◆現金は潤沢なのになぜリストラ?

 それならば、なぜオリエンタルランドは大規模な人件費カットを決断したのでしょうか。具体的に同社の財務状況を見てみます。

 休園が響いた2020年4~6月期の連結最終損益は248億円の赤字でした。7月1日に営業を再開しているものの、入場制限は続いており、2021年3月までに予定していた大規模なイベントはほぼ中止することも公表されています。表を見てください。現金および預金残高が2019年3月に比べて、急激に減少していることがわかります。

19年3月3775億円
20年3月2611億円(1160億円・30%減少)
20年6月1780億円(831億円・32%減少)

 つまり、現金が1年3か月で約47%減少(1995億円減少)しているのです。特に、直近の2020年3~6月の3か月間は閉園も余儀なくされていたため、831億円の減少。現在も50%以下の入場者数での運営を行うなど、通常通りの営業が難しい状況にあります。では、オリエンタルランドの体力はあとどれくらい残っているのでしょうか。

 キャッシュの減少が直近3か月の減少額である831億円の7割掛けで減少したと試算すると…。

831億円+(581億円×3四半期)=2576億円

 つまり、この先何もしなければ年間2576億円のキャッシュが減少していくことになります。(※3~6月と全く同じ金額が減少し続ける場合は3324億円の減少となる)

 このままではキャッシュが底をついてしまうのです。そこで目をつけられたのが人件費だったのです。

オリエンタルランドの人件費は、2020年3月期の有価証券報告書によれば、

142億円(給与・手当)+業務委託費(91億円)=約233億円

 となっています。このうち、仮に約700人の退職・契約期間を満了とした場合、年間約39億円の人件費が削減できる試算になります(※対象1000人のうちの7割が対象・契約期間満了とした場合)。

 この決断をしなければならないオリエンタルランドが差し迫った状況であることが伺えるでしょう。では、同社はこの先も現金が減っていき、やがて資金が底をついてしまうのでしょうか。そんなことはないのです。

◆起死回生の一手、二手、三手があった

 なぜオリエンタルランドに希望が持てるのでしょうか。実は同社は、最悪のシナリオをすでに想定して動いていると見られるからです。その根拠が、社債発行。オリエンタルランドは、9月10日に総額1000億円の社債の発行条件を決めています。同社としては1998年以来、22年ぶりの大型発行です。調達資金は2024年3月期に完成予定のパーク拡張工事などの投資に充てる予定です。

 また、銀行からの融資も確保しています。銀行があらかじめ設定した金額の上限内でいつでもお金を借りられる融資枠(コミットメントライン)の契約を結んでいたのです。本来、オリエンタルランドは投資資金を営業キャッシュフローでまかなう計画でしたが、入園者数の制限で収入が減少しています。さらにコロナの長期化も見据えて、5月には銀行との間で2000億円の融資枠を設けています。

 そう、同社は計画的に資金調達を行っていたのです。

◆GoTo “東京解禁”が舞浜にマネーをもたらす

 まだ、秘策はあります。10月より政府のGoToトラベルに東京発着の旅行が加わります。この東京解禁は大きな意味を持ちます。

 東京ディズニーリゾートは千葉県に位置しますが、GoToトラベルの対象エリアに東京都が加われば、全国的に人の移動が急増するのは間違いありません。東京への流入増加は、千葉を含む近郊都市への波及効果も生み出します。つまり、オリエンタルランドもその恩恵を受ける1つなのです。

◆「美女と野獣」をテーマとした新アトラクション

 そして、3つ目の希望が新しいアトラクションのオープンです。9月28日、新たに「美女と野獣」、「ベイマックス」などのアトラクションがオープンしました。

 もともと4月に開業予定だったこれらのアトラクション。ファンからの待望は大きく、イベントやパレードを引き続き自粛する中で、人気を集めそうなエリアとなっています。

 さらにこの先、2021年度には「トイストーリー」シリーズをテーマとするホテル、2023年度には「アナと雪の女王」を含めた3つのエリアやホテルのオープンを計画しています。つまり、中長期的に見れば、集客力が高まる施策が行われているのです。

 Twitterを中心とするSNSでは、「東京ディズニーリゾートが営業しているってだけで元気をもらえる」といった声も多く見かけます。これは、オリエンタルランドの存在そのものが多くの人に勇気と元気を与えている証拠と言えるのではないでしょうか。

 今回の厳しい決断も、“夢の国”を維持するたに“夢中”で実行した“現実的”な秘策なのだと筆者は考えます。

<文/馬渕磨理子>

【馬渕磨理子】
日本テクニカルアナリスト、(株)フィスコ企業リサーチレポーター。日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでマーケティングを行う。Twitter@marikomabuchi

―[あの企業の意外なミライ]―

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