コロナ感染で窮地!トランプ大統領、逆転勝利狙う最後の“秘策”とは?/町山智浩

日刊SPA! / 2020年10月6日 8時30分

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「今夜、妻と私は新型コロナウイルスの陽性と判定された。ただちに隔離と回復のためのプロセスを始める。ともに乗り越えよう」

 10月2日、トランプ大統領はコロナに感染したことをツイッターに投稿。高熱が出るなどの症状が見られたため、首都ワシントン近郊のウォルター・リード陸軍病院に大統領専用ヘリコプターで移送された。その後、抗ウイルス薬「レムデシビル」を投与されたと報じられているが、11月3日に迫った大統領選挙への影響は必至の状況だ。

◆コロナ感染で窮地!トランプ大統領逆転勝利狙う最後の“秘策”とは?

 トランプ大統領の新型コロナに対する発言を振り返れば、「(ウイルスは)暖かくなれば奇跡のように消える」(2月)、「1分でやっつけてしまう消毒剤がある。体内に注射できないだろうか」(4月)と未知のウイルスを軽視し、米国市民と“ともに乗り越える”努力を怠ってきたと言わざるを得ない。

 実際に米国の新型コロナによる死者数は20万人を超え、世界全体の20%を占め、もっとも多い。

 9月29日、大統領選の目玉である1度目のテレビ討論会が開催され、民主党の大統領候補・バイデン前副大統領は「マスクをつけていたら10万人の命が救われた」などと現政権のコロナ対策を厳しく批判するも、大統領は「君の意見を聞いたら、何百万人も死んでいただろう」と逆ギレ。

 そのわずか3日後、皮肉にもメラニア夫人と揃って陽性が判明したのだから、「特大ブーメラン」というほかないだろう……。

 混迷を極める米大統領選の行方はどうなるのか? カリフォルニア州を拠点に精力的に大統領選の取材を続けるジャーナリストで映画評論家の町山智浩氏に話を聞いた。

◆「歴史に倣えば、トランプ再選の可能性は極めて低い」

――トランプ大統領の新型コロナ感染は、選挙戦にどう影響しそうか。

町山:終盤のまさに追い込みの時期に、トランプ大統領がもっとも得意とする選挙活動である集会ができなくなった。大統領選が始まると、トランプ大統領は公務より集会を優先し、専用機で、選挙ごとに勝利政党が変わるスイング・ステート(揺れる激戦州)を回っていたが、当面の予定はすべて白紙に。

9月29日の討論会ではコロナ対策を「グレイト・ジョブ」と自画自賛し、中国が悪いとまくし立てた。マスクもせず、ソーシャルディスタンスも保たないトランプ大統領のコロナ対策には批判も多かったが、大統領のコロナ感染によって、図らずも政策の誤りを自らが証明してしまった格好です。過去に類を見ない“オクトーバー・サプライズ”と言っていいでしょう。

――再選は厳しいということか。

町山:トランプ大統領のコロナ陽性が伝えられると、株価は急落。ダウ平均は一時400ドル以上も値を下げています。そもそも9月に入ってからは、コロナの影響による経済活動の萎縮により株価は下げていた。特にトランプの支持基盤である石油、鉄鋼などの旧産業のダメージは大きい。

過去の大統領選を振り返れば、投開票日の直近3か月で株価が急落し、回復しなかったときの選挙で、再選した大統領は一人もいない……。歴史に倣えば、トランプ再選の可能性は極めて低いと言えるでしょう。

――トランプ大統領は74歳で体重は100Kgのため、重症化のリスクが高い。一方のバイデン候補も当選すれば史上最年長78歳での大統領就任。1期のみで退くことも示唆しており、緊急時に大統領職を引き継ぐ副大統領候補の争いも注目されている。

町山:民主党の副大統領候補はカマラ・ハリス上院議員。これまでの副大統領候補のなかで、もっとも大統領選の得票に影響を及ぼしそうな候補者です。ハリス議員は元地方検事で、政治的には警察寄りの中道派と見られており、BLM運動に対してもこれと言ったメッセージは出していない。

そのため左派からは一定の反発はあるが、数の多い警察関係者たちから嫌われていないのは強みとも言える。

――ロイター通信は10月1日、討論会後の世論調査でバイデン候補の支持率がトランプ大統領より9ポイントリードと報じた。大統領のコロナ感染後の各社調査では差はさらに広がっている。だが前回の大統領選は、事前の世論調査でリードしていたヒラリー・クリントン候補は敗れた。

町山:ヒラリー候補の敗因は、民主党の代表選を争ったサンダース候補に代表される左派を切り捨ててしまった点にある。最後まで民主党内がまとまらず、サンダース候補の支持者たちは投票所に足を運ばなかった。

だから、民主党は同じ轍を踏まないように、今回は打倒トランプを最優先にサンダース候補も途中で大統領選から撤退。経済再生と環境問題の解決を同時に目指す「グリーン・ニューディール政策(GND)」を掲げるオカシオ・コルテス下院議員らとともにバイデン支持に回った。

バイデン候補は中道派のため、BLM運動で問題となった警察の解体・再編成は望んでいないし、GNDにも反対している。それでも反トランプで大同団結した。バイデン自身も言っているように、今回は「トランプにこれ以上米国を任せるかどうかの選挙」。

討論会でトランプ大統領は、イラク戦争に従軍し、5年前に病死したバイデン氏の長男を揶揄したり、白人至上主義団体のプラウドボーイズを容認するような発言をしたりで、軍関係者や共和党内でもトランプ大統領に対して反発する声は大きい。

つまり、今回の戦いは2大政党を超えた親トランプ対反トランプの構図になる。

◆選挙に負けてもトランプは負けない

――トランプ大統領は選挙後の混乱を見据えてか、郵便投票が不正の温床になっていると主張している。仮に敗退しても政権移譲に応じない可能性はあるのか。

町山:トランプは「(私が負けたときは)不正が行われたときだ」と公言。大統領選後の訴訟まで想定して、9月18日に死去したリベラル派のルース・ギンズバーグ連邦最高裁判事の後任に、保守派のエイミー・バレット氏を指名している。

9月30日にはSNSで選挙の不正監視を口実に「Army for Trump(トランプの軍隊)」への参加も呼びかけているが、これらは事実上の選挙妨害の煽動で、トランプを支持する極右団体が銃を携えて、全米各地の投票所でピケを張るような事態も予想される。選挙の結果次第では大混乱に陥るかもしれない。

ただ、こうした事態を招かないオプションもないことはない。コロナ感染後に政策を180度転換した英国のジョンソン首相のように、トランプ大統領も回復したら、自らの政策や方針を変えるかもしれないからです。

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 大統領のコロナ感染は誰も予想しなかったオクトーバー・サプライズとなった。大統領選の本番まで4週間、さらなるサプライズはあるのだろうか?

◆注目の副大統領候補争い

▼共和党 マイク・ペンス副大統領(61歳)
’59年、中西部インディアナ州コロンバス生まれ。インディアナ州知事、下院議員などを経て現職。敬虔なクリスチャン。銃規制や同性婚には反対。

▼民主党 カマラ・ハリス上院議員(55歳)
’64年、西部カリフォルニア州オークランド生まれの移民2世(父はジャマイカ、母はインド出身)。名門黒人大学卒業。サンフランシスコ地方検事やカリフォルニア州司法長官を歴任し、’17年から同州選出の上院議員。外交・安全保障政策、経済分野は未知数。バイデン候補は認知症疑惑が取り沙汰されるなど、健康面での不安は大きい。もしバイデン候補が大統領に指名されたものの、任期半ばでの辞任となれば女性初の大統領となるかもしれない

◆郵便投票の混乱は大統領のせいか?

 トランプ大統領は、非白人の投票率アップは不利になると、郵便投票の広がりを警戒。5月に郵便公社の総裁に共和党の大口献金者を指名し、選挙前にもかかわらず予算・人員・インフラを削減させた。3密を避けるため、郵便投票の増加も混乱に拍車をかけ、郵便投票の結果判明は数か月後とも言われている。

<取材・文/週刊SPA!編集部 写真:AFP/アフロ>
※週刊SPA!10月6日発売号より

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