“DJ住職”を直撃、お寺で婚活パーティーやDJイベントを開催する深いワケ

日刊SPA! / 2020年10月15日 15時50分

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紋鼈寺(北海道伊達市)の住職・奥田正弘さん

 先日、築地本願寺(東京都中央区)が婚活サービス「築地の寺婚(てらこん)」を開始し、「お寺で婚活!?」と話題をさらった。実は、お寺での婚活イベントは以前より日本各地で行われている。北海道伊達市の紋鼈寺(もんべつじ)で住職を勤める奥田正弘さん(30歳)は、自坊を「婚活寺」と称し、婚活にとどまらず、何とお寺でのDJイベントも開いている。境内に流れるEDMやハウスミュージック。一見、奇想天外な活動にも思える。いったい、なぜ……?

 お寺とDJイベントや婚活パーティー、この特殊な組み合わせの背景には、「ムラ社会での若者たちの孤立」が深く関わっているという。

◆学生時代の経験を活かし「婚活イベント」をお寺で主催

「お寺を継ぐとなった時、今まで自坊ではやってこなかったことをやろうと決めました。それが婚活だったんです」

 そう語る奥田さんは、自身も婚活パーティーで結婚相手と出会ったひとりだ。地元を離れ京都にて仏教を学び、合間に婚活などのイベント運営にも関わっていた経歴を持つ。

「ノウハウというほどでもないですが、イベント運営に関わったり参加者として婚活パーティーに参加したりしていたので、良し悪しが分かるんですよね。こういう婚活いいよねとか、こういう風にしたら出会いやすいよねっていう雰囲気が分かるので。やっている内容は普通の婚活パーティーと同じでも、お寺でやるってだけで雰囲気が変わるじゃないですか。それでおもしろがってくれる人が多くて、いつも定員を超えて申込みがあります」

 奥田さんにとってお寺での婚活イベントは、若い人に向けたコミュニティ作りの提供も兼ねているそうだ。

「田舎には娯楽がなく、若い人たちが繋がれるコミュニティもありません。繋がれる場所、受け皿を増やしていく必要があると思っています」

 奥田さんが住む北海道伊達市は、人口約3万4千人の田舎町。函館まで車で2時間半、札幌までは2時間と、北海道の中では比較的アクセスが良い。

 しかし人口は右肩下がりの状態にあり、少子高齢化が進んでいる。

「コロナ以前から『若い人同士の繋がりの薄さ』は感じていました。田舎は遊ぶ場所や娯楽がなく、都心のように若い人が集まるコミュニティも少ないです。都会であれば夜遅くまでやっている飲食店があるから、そういうお店がコミュニティのひとつとして機能していますよね。

 でも田舎は閉店時間が早いし、そもそもお店の数も多くありません。ムラ社会特有の『人の目』もあるので、結婚適齢期の人が地元の飲み屋さんにひとりで行っていると『あの人どうしたんだろう』と怪しく思われてしまう。結果的に孤立し、孤独を深めている人たちが多かったところに、このコロナです」

◆コロナ禍だからこそ、田舎ではリアルイベントが必要

 コロナ以前は定期的に開催していた婚活イベントも、緊急事態宣言を機に中断せざるを得なくなった。

 世間でZoom飲みなどオンラインでの交流がピックアップされる中、奥田さんはより一層リアルでの「場作り」の必要性を感じたという。

「田舎では周辺環境的な問題からリモート化が遅れていて、そもそも世間で流行っているようなZoom飲みなどもあまり浸透していません。同年代の間で『こんな時期だしオンライン飲みしようよ』って声はあまりかからなくて、あっても『俺はちょっと馴染まないしいいかな』って人が多かったですね。

 このご時世ワガママかもしれないけど、馴染めないっていう感覚はどうしてもあると思います。そうやってオンライン化に馴染めず、リアルでの繋がりから孤立している人たちのためにも、お寺という場を提供できないかなと思ったんです」

◆お寺でDJイベントを開催。周りの反応は?

「オンライン化しきれない人への受け皿も必要」とイベント開催を決めた奥田さん。婚活という参加の縛りがあるイベントではなく、幅広い層が訪れられるビアガーデン式の音楽イベントを選んだ。

 コロナ禍でのイベント開催に世間の目が厳しくなっている中、それでも開催を決めたのには理由があった。

「この時期にイベントをやることに対して、批判は来るかもしれないと考えていました。批判的になる気持ちは分かるんです。でも、『じゃあコロナが落ち着くまで我慢しましょう』でやっていけるのかなと。人の命も大事だし、経済も大事。田舎の飲食店ほど経済的に厳しい状況で、他府県の人が助けてくれるわけでもない。

 不安はあるけど一歩ずつやっていって、できない中で新しいスタイルを確立していかないと、経済的にも精神的にも保たないんじゃないかと強く感じています。僕が動くことで他業種の人に『こういう風にやればいいのかな』って気付いてもらえないかと考えました」

「ミュージック寺ス」と名付けたイベントでは、奥田さん自身がDJを担当。入場は完全予約制とし、イベント開催を不安に思う高齢者への配慮として、告知はSNS上のみに留めた。

 当日は感染防止対策を徹底し、広い境内を利用してソーシャルディスタンスを確保。結果として、約50人の参加者が集まったという。

 参加者からは、「今はリアルのイベントが屋外といえど無く、やっぱり外で飲めるのは楽しい! もっと屋外でやったほうがいい!」といった声が寄せられた。

「久しぶりにイベントをやってみて、オンラインでは満足できない部分はやっぱり多くて、リアルに勝るものはないんだなと感じました。地元の大学生たちにアカペラ演奏をお願いしたんですが、『大学生も演奏の機会がなく、オンライン授業ばっかりで、こういう機会が欲しかった。まさかお寺でこんなことができるとは』と感想をいただきました」

 気がかりだった近隣住民からのクレームなどもなく、逆に「年に一度くらいは賑やかな時がないと寂しいですよね」と暖かく見守る声が多かったそうだ。

◆利益はゼロでもやる意義はある

 気になる収益部分での成功はどうだったのだろうか?

「お寺なので儲けは出しちゃいけないんですよ。婚活もDJイベントも赤字が出ないようにだけ気を付けて、実質の収益はゼロです。うちのお寺で出会ってできるコミュニティそのものが、お寺にとってのプラスであり、地域にとってのプラスにもなりますから」

「ミュージック寺ス」での手ごたえを機に、婚活イベントの再開も決めた奥田さん。コロナ禍での制限も踏まえながら、これからもお寺での「場作り」や「縁作り」を推し進めていくつもりだ。

「いろんな人がいる中で、疎外感を感じている人や、世間の流れに馴染めない人を取りこぼしたくないなって思っています。リアルイベントをやらないほうがいいって主流派がいるのも分かるんですが、そこからこぼれちゃう人もやっぱりいるので。

 仏教的に言うのであれば、阿弥陀さんの教えやお救いって、誰でも平等に受けられるもので、そのお救いから漏れることはないんです。でも、現実社会では取り残されてしまう人たちが絶対に出てくる。自分が全部救えるわけじゃないですが、孤独や繋がりの薄さを感じている人たちを拾い上げるような動きをしていきたいと考えています」

 お寺を中心とした次世代へのコミュニティ作り。コロナ禍で苦戦しているさまざまな業種・地域に向けたモデルケースになるかもしれない。<取材・文/倉本菜生>

【倉本菜生】
福岡県出身。フリーライター。龍谷大学大学院在籍中。キャバ嬢・ホステスとして11年勤務。コスプレやポールダンスなど、サブカル・アングラ文化にも精通。Twitter:@0ElectricSheep0

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