空室だらけの投資物件に2億円…“スルガ地獄”に堕ちた不動産投資家の生還劇
日刊SPA! / 2020年11月24日 8時50分

KENJI氏
◆身も心もボロボロだったリーマン生活
サラリーマン向けの副業として、人気のある不動産投資。月々数万円程度の副収入はもちろん、融資を使ってレバレッジをかけることで、より大きなキャッシュフローを得られる可能性がある。しかし、レバレッジによるリターンが期待できる一方で、リスクも大きくなることを自覚していないサラリーマン投資家も多い。
「サラリーマンを辞めるために不動産投資で成功するはずが、まったく逆のことをしてしまいました。失敗に自覚した時は、まるで悪夢を見ているよう。2億円もの借金の支払いを思うと、不安で夜も眠れなくなりました」
とは、KENJIさん。転職に成功して一部上場会社に勤めたものの、激務とパワハラで身も心もボロボロとなり、藁にもすがる思いではじめた不動産投資では、スルガ物件を購入してしまい窮地に立たされた。
「スルガ銀行といえば、新築シェアハウスかぼちゃの馬車での不正融資が有名ですが、地方の1棟物件に対しても、積極的な融資を行っていました。“スルガ融資=ダメ物件”とは限りませんが、私が購入した時期は、不動産相場が上昇しているタイミング。業者の利益がたっぷり乗った“買ってはいけない物件”を買ってしまいました」
◆利回り10%が魅力的に見えた
KENJIさんの購入物件は、利回り10%で金利は4.5%。当時は利回り8%程度のスルガ物件も多く出回っていたため、お買い得な物件を購入できたと喜んでいたそう。
「そもそも過去の私はバンドをしながらフリーターをしており、就職はしたものの転職を繰り返すダメリーマンでした。それが家庭を持ったことをきっかけに一念発起。なんとか某有名企業のグループ会社に潜り込めたのです」
ダメリーマンからエリートリーマンへと華麗な転身を遂げたものの、現実はそんなに甘くない。連日深夜までの激務とパワハラ上司の存在が彼を痛めつけ、ドクターストップがかかった。
「体調不良によって激務の日々から定時帰りの日々となり、その間にサラリーマンを辞めるにはどうすべきか研究。副業や投資について調べたところ、不動産投資が最適だと考え、貯金で中古戸建てを購入して不動産投資をスタートしたのです」
◆自分が“出口”であることに気づく
しかし、戸建て投資で得られる数万円の家賃では、サラリーマンを辞めるのは難しいことから、融資を受けて行う1棟投資にシフトチェンジ。その結果、1年後には30代前半にして3棟のアパートオーナーになった。
「当時はとにかく融資がジャブジャブ出ており、借りられて当然の認識でハイレバレッジ投資の怖さをわかっていませんでした。ただし2棟目・3棟目の物件をスルガ銀行の融資を受けて買った瞬間に4室の空室が出て、月20万円の利益を手にするはずが、1円も儲からない現実に気づいて愕然としました」
と、KENJIさんは当時の心境を語る。
「今思えばカーテンスキームという空室の物件を満室に見せかける手口に騙されていたのかもしれません。空室を埋めるためにリフォーム費をかければ赤字になるし、これ以上空室が増えても赤字になります。そこで大家の会に参加して空室対策を学ぼうとしたら、自分が先輩大家さんたちの“出口”であることを知ったのです」
物件価格が高騰しているということは、売却には有利なタイミングであり、安く買った物件をスルガ銀行を使って高く売るのが当時のトレンド。先輩大家たちが儲かる裏側には、自分のような業者のいいなりになって物件を買ってしまう情報弱者がいることに気付いたという。
◆投資の世界で情弱はカモにされる
「投資の世界では情弱はカモになります。まさしく私は情弱でカモでした。自分が誰かの出口だった事実に気づいて、最初は茫然としていましたが、それじゃダメだと考え直しました。売ったところで借金が残るだけ。なんとか空室を埋めて、さらに利益が出る物件を買うしかないと思いました」
しかし、すでに現金を使い果たし、融資も目一杯借りている状態。そこで1棟目に現金購入した戸建てを売却して軍資金をつくることにした。ところが、このなけなしの資金を別の投資で溶かしてしまう。
「戸建てを400万円で売却しましたが、利回り50%の怪しい投資に300万円を突っ込んだところ、これが1円にもなりませんでした。残りの資金は100万円です。今度こそ本当に後がなくなったところで、数十万円からできるレンタルスペース投資を知って、一気に勝負をかけました」
◆地獄から奇跡の生還
その結果、なんと1年間で9室、2年目で13室まで規模を拡大。さらにご近所情報サイト「ジモティー」を駆使した客付け術で、スルガアパートも満室に!
「アパートが満室になって経営状況が良くなったため金利交渉に成功。最初0円だったキャッシュフローが月25万円にまで増えました。同時に進めていたレンタルスペース投資から得た利益で戸建ても買い増やしました」
こうして、中古アパート3棟25室、戸建て(賃貸)7戸、戸建て(宿泊業)1戸、レンタルスぺース13室まで物件を増やすことができた。
「死に物狂いで2年間がんばった結果、月収300万円、手取り100万円を達成しました。投資家としてはまだまだ途上中ですが、家族笑って暮らせる生活に戻れたことに感謝しかありません。コロナ渦では一時期レンタルスペースが打撃を受けたものの、今はニーズが戻っており戸建て投資も順調です。最近は持て余した田舎の戸建てを無料でもらうことができました!」
自己資金も枯渇して、一発逆転できるような大きな融資も借りられないという逆境の中、小さい投資をコツコツと積み上げるしかなかったKENJIさん。いわゆる大成功とはいえないものの、失敗投資のリカバリーもできて、念願だった脱サラも実現。今は親子で仲良く暮らしている。
KENJI氏
名古屋在住の36歳、元サラリーマン。家族は妻と息子。大学時代にバンドでCDデビューを飾るも鳴かず飛ばず。大学卒業後はフリーター期間を経て、IT系ソフト会社に就職するが強烈なパワハラを受け退職。その後大手自動車メーカー系商社に転職。周囲のエリート社員との差にコンプレックスを抱えながらも奮闘したが、激務で倒れる。ある休日に、『金持ち父さん貧乏父さん』を読んだことから不動産投資に着目。2016年、中古戸建てを購入してサラリーマン大家デビューを果たす。しかし、2棟目以降、融資を使って購入したアパートでダメ物件をつかまされ、半年後には借金地獄寸前の状況に陥る。その後、残りの現金(貯金)を駆使したリカバリー中に更なる失敗投資をしてしまうが、2年かけて黒字化に成功して月収300万円を達成。著書に『借金地獄寸前のサラリーマン大家だった僕が、月収300万円になった「4つ」の投資術!』(ごま書房新社)がある。Twitter:@kenji_shi_inv
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