日本のアウトバーン!新東名・新名神全線6車線化、時速120km完成への道のり

日刊SPA! / 2020年12月29日 8時29分

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建設中の天竜川橋(19年前の写真)

―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―

 12月22日14時、新東名の御殿場JCT-浜松いなさJCT間(145km)の完全6車線化(片側3車線)が実現し、同時にこの区間の最高速度が時速120kmに引き上げられたため、翌23日に実走してまいりました。

◆赤字高速の建設反対時代、世論に逆らって建設続行を支持

 思えば19年前。私はまだ1mmも開通していなかった第二東名・第二名神(当時の呼称)の予定路線に沿って全線走り、工事の進捗状況を見聞したのでした。

 当時は「ムダな赤字高速の建設」を即座に中止セヨとの世論が沸騰しており、第二東名・名神はその象徴として袋叩きにあっていたのですが、実態をこの目で確かめようと考えたのです。

 結論は、「ここまで造ってしまっているなら、建設を続行するのが合理的」というものになり、当時『週刊SPA!』にそう書きました。

 その10年後の2012年4月。開通した新東名は、構造物を6車線で建設しながら、道路公団民営化の結論通り、それをわざわざ4車線に狭くしてありました。ただし、約4割の区間は、「付加車線」の名目で、6車線化されていたのです。

 なぜこんないびつな形になっていたかというと、民営化委員会の「6車線から4車線に縮減しコストダウンを図る」という結論が出る前に、すでに大半の工事契約が終了して着工していたから。つまり、とりあえず契約通り構造物を造り、最終的な仕上げ(本舗装など)だけ2車線分減らして、余った幅員はガードレールや樹脂ポールで狭くするという、マヌケなことになったのです。

「でも、これなら簡単な追加工事で完全6車線化できる!」

 私は小躍りしたい気分でしたが、それが今回実現したわけです。

◆ようやく計画当初の姿になった6車線区間の走り心地や効果は?

 費用は900億円。この区間の全体事業費は3兆8598億円なので、わずか2%の追加費用で、車線数を4⇒6に増やすことができたことになります。

 目的は、「1 トラックと一般車両との輻輳(ふくそう)を避けるため。また、車線の絞り込みに起因する追突事故リスクを低減するため」「2 高速道路でのダブル連結トラック、トラック隊列走行の実現のため」(国交省)。せっかく造ったのにもったいなから、とは書いてありません。

 で、実際走ってみてどうだったか。

 感動ですよ! 本当にスバラシイ! まさに日本のアウトバーンの出現だ! これまでの新東名は、そのポテンシャルにタガをはめられ、実力を出し切っていなかったけれど、ついに大器が目を覚ました!

 これまでも、全体の4割弱の区間は6車線だったけれど、一番左側の車線は頻繁に消滅するため、その度に合流しなければなりませんでした。大型トラックは機敏な動きが苦手なので、混んだ状態で隣の車線に何度も合流するのは避けたいと思うもの。よって、せっかくの6車線区間も、一番左側の車線はあまり使われず、大型トラックは中央車線に列をなしておりました。そして、スピードリミッター(時速90kmで効く「はず」の大型トラック用速度抑制装置)が効く速度が、車種によって微妙に異なるため、時速93kmの大型トラックを、時速95kmの大型トラックが追い越し車線に出て追い越すといった、残念な事態が頻発しておりました。

 よって、最高速度が試験的に時速120kmに引き上げられてからも、実際に時速120kmで巡行し続けるなんてほぼ不可能。大型車が急に車線変更して来るたびに、時速120kmから急減速せねばならず、大きなストレスでした。

 ところが、完全6車線化翌日の段階で、その状況がかなり劇的に変わっていた!

 一番左側の車線を走る大型車が飛躍的に増加し、大型車同士の追越しは、中央車線までで多くが完結。たまに追い越し車線に出てくる場合もあるけれど、体感的には、その頻度は数分の1に激減! 私は、御殿場―浜松いなさ間145kmを、ACC(前車追従機能)を時速120kmにセットして粛々と走行しましたが、トラックに行く手を阻まれた回数はわずか5回! なんという快適さだろう! 新型コロナウイルスの感染者数の増加で、新東名の交通量が前年比7%減だったが、大型車に関しては1%増(新静岡‐静岡SA間のトラフィックカウンターデータ)だったので、この快適さは本物だ! 当然、安全性も高まっている。

 一方、新東名から東名に移ると、相変わらずの状態で、速度は時速80km~100kmの間を行ったり来たり。カーブも多いし路面は不等沈下でうねりが大きいし、舗装の補修も多く、新東名に比べるとまさに鈍行だった。

 鉄道で言えば、従来の東名は在来線特急で、新東名は新幹線。実際、追い越し車線を走る乗用車の平均速度は、東名が時速85km、新東名は時速120km強と推測されるので、この区間の所要時間は、3割も違ってくる。東海道新幹線の開業から遅れること半世紀。ついに高速道路にも新幹線が誕生しました! 静岡県内だけだけど。

◆残りの区間の6車線化はどうなっている?

 では、残りの区間はどうなるのか。

 政府は、新東名・新名神の全線6車線化の調査を進めているが、既開通区間のうち、トンネルや橋梁など構造物をすべて6車線で造ったのは、今回の区間のみ。その他の区間を拡幅するには、時間も費用も段違いになる。唯一、新名神の亀山西JCT-草津JCT間は、トンネル等を3車線×2で造ってあり、現在すでに拡幅工事中で、2022年度から順次6車線化される。時速120kmへの最高速度引き上げも行われる見通しだ。

 また、民営化にともなう建設凍結により着工が遅れた、新名神の大津JCT-城陽JCT間および八幡京田辺JCT-高槻JCT間は、6車線に設計変更されたうえで、2023年度に開通の予定になっている。

取材・文/清水草一

【清水草一】
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中。清水草一.com

―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―

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