協力金の一律支給、小さな飲み屋はコロナ太り?「儲かっちゃってどうしよう」

日刊SPA! / 2021年1月9日 8時52分

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※写真はイメージです

◆コロナ禍で悲鳴と思いきや

 新型コロナの第三派の勢いが止まらず、首都圏では二度目の緊急事態宣言が発令されるに至った。昨年の一度目とは違って、教育機関や映画館などの娯楽施設への要請は設けられず、制限の要請対象は専ら飲食店へと焦点が絞られるかたちとなった。年明けまでギリギリで持ちこたえてきた飲食店も数多く「今回はもうダメかもしれない」「生きていけない」と悲鳴ばかりが声高に聞こえてくる一方で、飲食店へ酒や食品を提供する卸売業からは非難の声が上がっているという。

 酒屋を営むHさんは、スナックや居酒屋などに酒を卸すことを生業としている。コロナ禍に陥ってからというもの、日々の注文は減少し苦しい状況に立たされてる。

 酒を配達する折、馴染みの店主たちとは軽く世間話をする。はじめの頃は「とんでもないことになりましたね」「何とか頑張ってやっていきましょう」と互いに励まし合っていたが、度重なる飲食店への時短要請と協力金の支給によって次第に見る目は変わっていった。

◆「儲かった」とほくそ笑む店主も

 昨年末に得意先の個人経営の居酒屋へと酒を卸しに行った際、店主はにこにこと笑みを浮かべながら言った。

「いやぁ。儲かっちゃってどうしようって感じですね。店はずっと開けてるけど協力金も貰っているから、収入は増えましたよ」

 聞くと、その居酒屋では、昨年から一度も時短要請にも休業要請にも従わずに店を開け続けているが、給付金の申請は都度行い、今のところ全額受け取っているという。

「今も表向きは22時に閉めるっていうことになっているんだけど、まぁ普通に営業してますよ。開けてればお客さんは来るわけだし、22時以降開けてれば逆にいつもよりお客さんが集中しますから」

 協力金の申請には、都のホームページからダウンロードする書類の他には、時短営業を告知するポスター等や感染防止徹底宣言のステッカーが貼られていると証明できる写真が必要となる。だが、時短営業の告知ポスターを作って一瞬だけ店舗の看板なり扉なりに貼り付けて、証明のための写真を取ったらすぐに剥がしてしまうことだってできるのだ。

◆正直、ずるいなって…

「ウチみたいに小さいところにはどうせ見回りなんて来ないから大丈夫ですよ」

 店内はカウンター8席のみ。家賃も十万円以下と都心では破格の安さであるため、協力金の100万円は光熱費なども含めた固定費を十分に補って余りある。

 Hさんは複雑な気持ちになった。真面目に時短営業に従っている店もたくさんある。苦境に立たされている店ももちろん見ている。広い箱で従業員を雇っている店は、協力金のみではとてもやっていけない。しかし、その傍らでこういう店もあるのだ。店の規模に関わらず協力金の額が一律であることに疑問を感じてしまう。そして何より、Hさんのような卸業にはどんなに売り上げが落ち込んでも協力金は出ない。

「わたしたちのような、夜の飲食店を支えている職業があることも忘れないでほしいです。お店のほうも、営業するのは自由ですけど、苦しいどころかむしろ協力金で儲かってるなんて話はあんまり聞きたくなかったですね。ずるいなって思っちゃいますよ…正直」

 対立構造を好むメディアでは連日経営に苦しむ飲食店が取り上げられるが、コロナ禍における様々な店を見てきたHさんは、最近ではテレビを目にするたびにやりきれない気持ちになるという。

 今回の緊急事態宣言で、営業時間午後8時までの時短要請に応じた飲食店には、都県から一日当たり最大6万円の「協力金」が支払われる。あの店主は、また味をしめてコロナ太りするのか…そう思うたびに、Hさんはやり場のない怒りに身を振るわせている。

【大谷雪菜】
(おおたにゆきな)福島県出身。第三回『幽』怪談実話コンテストにて優秀賞入選。実話怪談を中心にライターとして活動。お酒と夜の街を愛するスナック勤務。時々怖い話を語ったりもする。ツイッターアカウントは @yukina_otani

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