コロナ禍で心がすさんだら…蛭子能収の生き様を見習おう

日刊SPA! / 2021年1月17日 15時50分

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「芸能界 蛭子目線」( 竹書房)

文/椎名基樹
◆昨年、認知症を公表。その後は?

 サンデー毎日1月17日号の蛭子能収の連載「ニンゲン画報・新春スペシャル」を読んだら、なんだか妙に元気が出た。

 インタビュー冒頭に昨年公表した認知症のことを尋ねられると「元気です。仕事をセーブしているけど、なるべく楽して稼ぎたいです」といきなり蛭子節。続けて、連載用のイラストをその場で描くことになり、モチーフを「富士山」と「お金」に決定する。マネージャーに模写用に一万円札を出してもらうと、途端に笑顔になる蛭子さん。蛭子さんのイラストならお札なんて見なくても描けると思うけど(笑)。

 しかし、話が最近の認知症の具合についてに及ぶと、私が思っていたよりも重症で驚く。蛭子さんには、夜の徘徊もあって、奥さんは寝られない日々が続いたという。医者の勧めで1ヵ月の短期入所介護をして、だいぶ症状が改善したとのこと。

『<婦人公論の本 vol.17>明るく、強く 認知症とともに生きる』のインタビューでは、デパートの売り場に電車が走ってるのが見えて腰を抜かしそうになったり、家の本棚の本が燃えてるのを見て「大変だ!」って叫んでしまったり。籠の中に女房が倒れてる! と思ったら洗濯物だったなど「幻視」の症状もあったことを告白している。

◆歳をとっても、認知症でも“蛭子節”全開

 そんなこともあってか蛭子さんは、今回の新春スペシャルでは「僕の生活は女房ありき。泊まりがけのロケがあると、本当は嫌で。撮影が終わると逃げるように家に帰る。それぐらい女房に会いたい」などと、のろけてみせた。

 私は「蛭子さんって、こんなかわいいこと言う人だったかな?」と少し驚いた。昔は、お亡くなりになった前の奥さんに対して「鈴木ヒロミツに似ている」とか本当にひどいこと言っていたのに(笑)。歳を取ったことと、病気の影響もあってか、蛭子さん、なんだか可愛くなっちゃったみたいだ。写真うつりもなんだかやたらかわいい。

 そして将来について尋ねられると「僕はサラリーマンじゃないから、収入の事はいつまでも心配。政府が国民の収入に合わせて、お金を出してくれたらいいな。皆幸福になれるのになぁ。菅さんに何とかしてほしいです」。と、突然の「ベーシックインカム」論。いいぞ、蛭子さん! 私も大賛成だ!

 最後に今年の楽しみ方を尋ねられて「競艇で帯封を取りたい(大勝ちして100万円の帯封された状態で払い戻しを受けること)。コロナが落ち着いたら健康麻雀をやりたい。お金は賭けません。賭けてもいいです!」。と、伝説の「賭け麻雀逮捕事件」の無反省ぶりをアピールして、私を非常に脱力させてくれたのであった。最後の一言には、声出して笑っちゃったよ。

◆漫画家・根本敬が明かす蛭子さんの特異な人間性

 昨年は有名人の自死が連続した。しかもきらびやかな大スターばかりだった。私は理解に苦しんだ。それに対して俳優の木下ほうかが、2020年10月9日の「yomiDr.(ヨミドクター)」のインタビューで「僕たちの仕事は不確かですから、不安なんですよ、みんな。端から見ると、何が不足なんだって思えるような、うまくいっている人ほど絶望するんですよね。必ずしも、落ちぶれて死ぬんじゃない。いい時に死んでしまうというのは、すごくわかります」と答えていた。それで全てを納得できたわけではなかったが、スターたちの「自死」について、それが1番うなずけた説明だった。

 蛭子能収の徹底した「現実が神」という特異な人間性を世の中に知らしめたのは、蛭子さんの盟友、漫画家の根本敬だろう(あと、蛭子さんはお葬式に出ると必ず笑ってしまうこととか)。今や日本のサブカルの「教典」(笑)と言っていい、根本敬の著書「因果鉄道の旅」で、根本敬は蛭子能収をこう評している。

「我々人間は自我、自意識、理想、プライド、それから発生するところの見栄やうぬぼれや理念やら思想やら主義やらドグマやらてらい等々が手枷足枷となり、自分が本当に欲しているものが何なのか、わからなくなっちゃう事はよくある」しかし「自我も自意識も、理想もプライドも、蛭子さんが世の中を渡っていく上で、全然必要のない代物」であるから、蛭子さんは「本能が天の指示に基づいて絶妙の加減で解放されている」。

◆いつも心に「アマビエ様」と「蛭子さん」を

 スターたちの自死は、社会が停滞する現在の状況は、人が「考え事の流砂」に飲み込まれがちな状態にいることを示唆しているように思う。そんな時は蛭子さんを思い出したい。人生は楽しむためにある。蛭子さんを見るとそんな当たり前のことも思い出せる。何より、深刻になるのが馬鹿らしくなる。「アマビエ様」と共に「蛭子さん」を、コロナを乗り切るための守り神として、勝手に認定したいと思った。

【椎名基樹】
1968年生まれ。構成作家。『電気グルーヴのオールナイトニッポン』をはじめ『ピエール瀧のしょんないTV』などを担当。週刊SPA!にて読者投稿コーナー『バカはサイレンで泣く』、KAMINOGEにて『自己投影観戦記~できれば強くなりたかった~』を連載中

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